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経営危機の脱出へ貢献したラゴンダ

1976年10月に発表されたアストン マーティン・ラゴンダ・シリーズ2は、ロンドン・モーターショーで注目の1台になった。閉幕までに、80台の注文を集めたという。大胆なスタイリングは異論も呼んだが、経営危機の脱出へ貢献したことは間違いない。

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1986年のシリーズ3では、メーターは見やすいブラウン管式へ変更。5.3L V8エンジンはインジェクション化され、約300馬力まで強化された。


アストン マーティン・ラゴンダ・シリーズ2(英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

1987年にシリーズ4へ進化し、見た目はリフレッシュされ、16インチ・ホイールを獲得。リトラクタブルヘッド・ライトは、固定式の3灯へ改められた。

パーソナライゼーションにも、力が入れられた。コーチビルダーのティックフォード社を介し、全長を125mmほど伸ばした例も作られている。

接触不良など些細なことにしか思えない

2026年でも鮮烈な佇まいにあるラゴンダは、約500台が残存すると考えられている。今回筆者がステアリングホイールを握った、初期のモデルも含めて。現在の管理者は、アルビオン・クラシック・カーズ社。ラゴンダを専門的に扱う、貴重なガレージだ。

ラゴンダ・シリーズ2は特に、信頼性の低さが悩みだった。代表のディミトリ・ラビス氏によれば、電気系統のコネクターが湿気で腐食することが原因だったという。


アストン マーティン・ラゴンダ・シリーズ2(英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

比較的乾燥した、アメリカ東海岸や中東の国々では、実際故障は少なかったようだ。他方、雨が多い英国や冬が厳しい北欧では、ブランドの評判を下げることになった。

このスタイリングを目の当たりにすれば、接触不良など些細なことにしか思えない。角ばったドアを開き、クッションの効いたシートへ腰を下ろし、ふかふかなカーペットを足で踏む。キーをひねると、ブラックのパネルへレッドのLEDが灯る。

目からウロコに正確なステアリング

ステアリングホイールは、体格へ不釣り合いなほど小径。リムが、コダワリのメーターパネルの一部を隠す。モニターだらけの現代のダッシュボードより、好感が持てる。

ドア側には、14個のボタン。シートの角度調整も、そこでできる。シフトセレクターを倒しDを選ぶと、V8エンジンの排気音を微かに響かせながら、ラゴンダは静かに発進する。扁平率70のエイボン・タイヤで、路面のザラつきを均しながら。


アストン マーティン・ラゴンダ・シリーズ2(英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

想像以上にクイックで正確なステアリングは、目からウロコ。パワーアシストは過剰ではなく、切り始めから適度な感触を伴う。全幅へ慣れれば、半世紀前に設計されたビッグサルーンとは思えないほど扱いやすい。グリップ力に優れ、ボディロールは小さい。

3速ATがダイレクト感を削ぐものの、右足を倒せば、豊かなトルクが急激な速度上昇を誘う。デジタル・タコメーターの表示が、追いつかないほど。古さをまったく感じないといえば嘘になるが、印象はかなりイイ。

EVの時代にこそ合致する特徴

弱点と呼べそうなのは、大きな凹凸でのマナー。リアサスペンションはド・ディオン式だが、入力を吸収しきれず明確な揺れがボディへ伝わる。それでも、同時期のサルーンでは、優れた競争力を備えていたことは明白だろう。後継へも、期待したくなる。

「近い将来にラゴンダを復活させる計画はありません。絶対にないともいえませんが」。と述べるのは、現アストン マーティン代表のローレンス・ストロール氏だ。


アストン マーティン・ラゴンダ・シリーズ2(英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

他方、前CEOのアンディ・パーマー氏は、ラゴンダがブランドを補完できると考えていた。「アストン マーティンの中で、ラゴンダは常に少し異なる存在でした。ゆとりある洗練された空間を備え、物静かな自信のようなものを象徴していました」

「その特徴こそ、EVの時代に驚くほど合致すると感じます。ラゴンダが体現してきた流暢さや静寂性、余裕のある動力性能といったものは、EVと一致するといえます」。壮観なこのサルーンの後を継ぐ1台が誕生する日は、来るのだろうか。

番外編:何度か提案されたラゴンダ

2009年には、ラゴンダ LUVというコンセプトカーが提案されている。LUVとは、ラグジュアリー・ユーティリティ・ビークルの略で、今でいう高級SUV。V12エンジンの四輪駆動が想定され、アストン マーティンの量産車提供100周年を記念したものだった。

2014年に発表されたのが、アストン マーティン・ラピードのプラットフォームを流用した、ラゴンダ・タラフ。5.9L V12エンジンを搭載し、0-100km/h加速4.4秒、最高速度313km/hが主張された。ご記憶の方は少ないと思うが、120台が生産されている。


ラゴンダ・タラフ(2014年/海外仕様)

2018年には、ロールス・ロイスに対抗するサルーン、ラゴンダ・ビジョンが提案されている。バッテリーEVブランドとしてラゴンダを復活させるという、パーマーが掲げた次期戦略の一環として。SUVのオールテレーン・コンセプトも、翌年に提案された。

アストン マーティン・ラゴンダ・シリーズ2(英国仕様)のスペック

英国価格:4万9933ポンド(新車時)/10万ポンド(約2100万円)以下(現在)
生産数:620台
全長:5281mm
全幅:1791mm
全高:1302mm
最高速度:225km/h
0-97km/h加速:7.0秒
燃費:2.8-3.5km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1981kg
パワートレイン:V型8気筒5340cc 自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:284ps/5000rpm
最大トルク:49.6kg-m/3000rpm
ギアボックス:3速オートマティック/後輪駆動


アストン マーティン・ラゴンダ・シリーズ2(英国仕様)