半導体不足に負けない。物置小屋でメモリを自作する強者ユーチューバー
なければ、作る。
「必要は発明の母」と言いますが、RAM不足が危機的状況の今、高額なメモリ増設費用を避けるため、かなり独創的な道に走る人も出てきています。
先日は、RAMなしでパソコンを動かそうとする勇敢な男性について紹介する記事もありましたが(結果は失敗)、今度は“Dr. Semiconductor(ドクター半導体)”と名乗るユーチューバーが、なんと庭の物置小屋でメモリを自作するという大胆な試みに挑戦しました。
物置小屋でメモリを製造
正直、タイトルだけ見たときは「冗談でしょ」と思っていたので、実際の映像を見たときはびっくりして言葉を失いました。これは単に、ロジックゲートをはんだ付けするだけの動画じゃないのです。
こちらの男性、錆びた芝刈り機や使いかけのペンキ缶、パンクした手押し車が置いてありそうな物置小屋の中に半導体製造設備を構築。先月公開された動画で、彼は自作のクリーンルームの建設過程を、続く動画では実際に動作するRAMセルの組み立てプロセスを解説しています。
この動画を見ると、現代のチップがどのように製造されているのか、そのプロセスが非常によくわかります。動画では、シリコンウェハーへの初期酸化膜の成膜にはじまり、フォトリソグラフィー、エッチング、薄膜成膜、そしてテストに至るまで、各工程が丁寧に説明されています。
一連のプロセスでは、チップを洗浄し、不要な物質を除去するために、かなり強力な化学薬品が使われています。半導体製造に詳しい方なら「フッ化水素酸やピラニア溶液も使っているの?」と思われるかもしれませんが、答えは「もちろん使っています」です。
ただし、三フッ化塩素のような危険な物質は出てきません。これを入手しようすると、あらゆるブラックリストに載ってしまいますから…。
この動画では、RAMセルが実際にどのように機能するかも非常に分かりやすく解説されています。ご存じない方も多いかもしれませんが(私もつい最近まで知りませんでした)、RAMセルからは常に電流が流れているため、絶えず再充電が必要です。Dr. Semiconductorのセルは数ミリ秒ごとに充電が必要ですが、市販のDRAMでも約64ミリ秒ごとに再充電が必要なんだとか。
これが、RAMが電源を切った時にデータが消える、いわゆる「揮発性」である理由です。ちなみに、コンピュータサイエンス系ユーチューバーのローリー・ワイヤード氏は先日、RAMの仕組みに関するすばらしい動画を公開しています。
最終目標は「PCに接続すること」
そんなわけで、動画の最後にはDr. Semiconductorが複数のRAMセルを完成させています。もちろん、それぞれ数ミクロンというサイズで、機能もしっかり。本当に、これは驚きです。
YouTubeには、自宅で半導体製造に必要なフォトリソグラフィ装置を構築する様子を紹介したチャンネルがほかにもありますが、実際にミクロンサイズのセルで動作するRAMを製造するというのは、また別次元の話。
この動画はあくまでもコンセプト実証(PoC)であり、制作者自身もそれを認めています。しかし、彼はまだここで終わるつもりはないようで、動画の最後には「これらのセルをつなぎ合わせて……PCに接続する」という計画を語っています。
この動画に出会う前は、そんなこと実現できるわけがないと鼻で笑っていたはず。でも今は? 彼ならやり遂げるかもしれません。

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