NASAが「ローマン宇宙望遠鏡」の打ち上げ時期を2026年9月上旬に前倒し
NASA(アメリカ航空宇宙局)は日本時間2026年4月22日、次世代の宇宙望遠鏡「Nancy Grace Roman(ナンシー・グレース・ローマン)」に関する記者会見を開催し、2026年9月上旬の打ち上げを予定していることを発表しました。

開発順調で打ち上げ予定を前倒し
NASAによると、Roman宇宙望遠鏡は当初2027年5月の打ち上げを目指していましたが、開発が順調に進んだことで予定よりも約8か月早く完成し、音響や振動といった打ち上げ前の主要な環境試験も2026年3月までにクリアしています。
Roman宇宙望遠鏡は早ければ初夏にもメリーランド州のゴダード宇宙飛行センターからフロリダ州のケネディ宇宙センターへ輸送され、アメリカ企業SpaceX(スペースX)の「Falcon Heavy(ファルコンヘビー)」ロケットによる打ち上げに向けた最終準備に入る予定です。

ダークエネルギーの解明や標準宇宙モデルの検証に挑む
Roman宇宙望遠鏡の主な目標は、宇宙の加速膨張の要因とされる「ダークエネルギー(暗黒エネルギー)」や、質量比で通常の物質の5倍以上も存在するのに電磁波では観測できないとされる「ダークマター(暗黒物質)」の解明です。
NASAのシニアプロジェクトサイエンティストであるJulie McEnery氏によると、Roman宇宙望遠鏡は現在の標準宇宙モデルに見られる矛盾を過去の10倍の精度で調査し、モデルの修正が必要かどうかを検証します。
また、1日あたり約1.4テラバイト、5年間のミッションでは合計約2500テラバイトに上るという膨大な観測データはクラウド上にアーカイブされ、世界中の研究者が同時にアクセスできる環境が整えられるとしています。
観測ペースはハッブル宇宙望遠鏡の1000倍

計画段階では「Wide Field Infrared Survey Telescope(広視野赤外線サーベイ望遠鏡)」の頭文字から「WFIRST」と呼ばれていたRoman宇宙望遠鏡の名前は、「Hubble(ハッブル)宇宙望遠鏡の母」と称されるNASAの初代主任天文学者Nancy Grace Roman氏にちなんで名付けられました。
主鏡の直径はHubble宇宙望遠鏡と同じ2.4mですが、2つ搭載されている観測装置のひとつ「WFI(広視野観測装置)」は、その名の通り広視野を一度に捉えられることを特徴としています。
その広さはHubble宇宙望遠鏡に搭載されている「ACS(掃天観測用高性能カメラ)」の約100倍、「WFC3(広視野カメラ3)」の約200倍。観測ペースはHubble宇宙望遠鏡の約1000倍に達する見込みです。

太陽系外惑星の直接観測にも挑戦
もうひとつの重要な観測装置は「CGI(コロナグラフ)」です。これは、明るい恒星の光を打ち消し、そのすぐ近くを公転する暗い太陽系外惑星を直接撮影するための技術実証として開発されました。単純に恒星を隠すのではなく、レンズやプリズム、鏡面をリアルタイムに変形できるデフォーマブルミラーなどを組み合わせた複雑な装置です。
【▲ Roman宇宙望遠鏡に搭載されたコロナグラフの動作を解説した動画(英語)(Credit: NASA's Goddard Space Flight Center)】
NASA科学ミッション総局のNicola Fox副局長によれば、この高性能なコロナグラフの宇宙空間での実証は、太陽系外惑星で生命の兆候を探る将来のミッションに向けて計画が進められている大型宇宙望遠鏡「Habitable Worlds Observatory(ハビタブル・ワールド・オブザーバトリー、居住可能惑星観測所)」の実現に向けた、極めて重要なステップとなります。
数十億の銀河や数万の新たな太陽系外惑星を観測し、宇宙の謎へさらに迫ることができると期待されるRoman宇宙望遠鏡。その旅立ちが、いよいよ数か月後に迫っています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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