世界を覆い始めた「終末ファシズム」。斎藤幸平が見据える「フェーズ2」の処方箋
デジタル化やAIの使用にも同様のリスクがあります。国際エネルギー機関(IEA)は、2022年から2026年にかけてデータセンターの年間電力消費量が倍増し、最大で約1000テラワット時に達すると指摘しています。これはドイツ一国の全電力使用量とほぼ同量が加わる計算です。
より根本的な制約は、いくら技術革新が進んだところで、土や水、レアメタルといった自然由来のモノを資本はつくり出すことはできないということです。結局、資本主義体制のもとでは、気候崩壊に適応しようとしても、新しい技術は自然や資源の奪い合いを激化させ、社会の不安定さをもたらしてしまうのです。
状況が悪くなっていく中で、新しい技術が活用されるのは、人々を効率的、科学的に管理し、社会の不安定さを無理やり抑え込む監視社会のためでしょう。これが「テクノ・ファシズム」です。
テクノ・ファシズムの危険性を象徴しているのが、イーロン・マスク、あるいはマスクの盟友であるピーター・ティールら、テクノ・リバタリアンたちですね。彼らは国家による規制や再分配だけでなく、人権や民主主義さえもイノベーションの足枷だとして否定しています。新しい未来は天才たちが自由に技術革新を加速させていくことでのみ切り拓けると考えているからです。
マスクがトランプ政権に参加したのも、テクノ・ファシズムを実現するためでしょう。マスクはDOGE(米政府効率化省)を中心に、ITやテクノロジーなどを駆使するテック業界のCEOと官僚・国家権力が結びつき、エンジニアを頂点とする権威主義体制が誕生することを狙っていました。
また、ティールが創設したパランティア・テクノロジーズ社は、イスラエルにパレスチナ人を監視するための技術などを提供し、ガザの大量虐殺やイランの攻撃に技術的支援を与えています。ICE(関税・移民執行局)による市民殺害事件の背景にもこの技術が関係していると言われています。これだけで彼の信奉する技術がいかに危険であるかがわかるでしょう。
◆日本にも接近する「テクノ・ファシズム」
これは決して対岸の火事ではありません。そのティールが3月上旬に来日し、高市首相と総理官邸で面談したこともあり、日本政府との契約も間近であるという噂もあります。スパイ防止法に合わせてパランティアの技術が導入されれば、日本も一気に監視社会に変貌します。ちなみに欧州各国はティールに懐疑的で、個人の情報を集約し、レッテルを貼っていくパランティアの技術の使用をドイツは「違憲」としました。
なぜ、テクノ・リバタリアンが人を監視し、選別することに躍起になるのかと言えば、それは、彼らも地球の未来が危ういことに気づいているからでしょう。マスクは火星に移住するプロジェクトを進めていますし、ティールはニュージーランド近くの人工島に新国家を建設しようとしています。気候変動や核戦争によって資源が枯渇し、困窮者や難民が溢れ、金持ちに憎悪が向かう世界がやってくるかもしれないという恐れをテクノ・リバタリアンたちが抱いているからです。つまり、終末を前にして、自分たちが生き延びるための適応策なのです。
特にティールははっきりと選民的な「黙示録」の解釈を掲げており、エリート層のテクノロジーが生み出す富を、来たるべき終末的危機から人類を守る最後の砦とみなし、神聖視しています。そして、エリート支配に批判的な言説を「反キリスト」と非難しています。ティールが敵視している代表格がグレタ・トゥーンベリです。それは、彼女が、テクノ楽観主義を批判し、地球を救うために、資本主義からの抜本的なシステムの転換を求めているからです。
このように気候ファシズムとテクノ・ファシズムは自ずと融合し、反キリストや大衆を切り捨て、一部のエリートだけが生き残ればよいとする選民思想的な終末論をもたらします。これを「終末ファシズム」と呼んでもいいでしょう。いま世界各国が不安定性や不確実性がもたらす不安にさいなまれているので、終末ファシズムが世界を覆うのは時間の問題です。
より根本的な制約は、いくら技術革新が進んだところで、土や水、レアメタルといった自然由来のモノを資本はつくり出すことはできないということです。結局、資本主義体制のもとでは、気候崩壊に適応しようとしても、新しい技術は自然や資源の奪い合いを激化させ、社会の不安定さをもたらしてしまうのです。
状況が悪くなっていく中で、新しい技術が活用されるのは、人々を効率的、科学的に管理し、社会の不安定さを無理やり抑え込む監視社会のためでしょう。これが「テクノ・ファシズム」です。
テクノ・ファシズムの危険性を象徴しているのが、イーロン・マスク、あるいはマスクの盟友であるピーター・ティールら、テクノ・リバタリアンたちですね。彼らは国家による規制や再分配だけでなく、人権や民主主義さえもイノベーションの足枷だとして否定しています。新しい未来は天才たちが自由に技術革新を加速させていくことでのみ切り拓けると考えているからです。
マスクがトランプ政権に参加したのも、テクノ・ファシズムを実現するためでしょう。マスクはDOGE(米政府効率化省)を中心に、ITやテクノロジーなどを駆使するテック業界のCEOと官僚・国家権力が結びつき、エンジニアを頂点とする権威主義体制が誕生することを狙っていました。
また、ティールが創設したパランティア・テクノロジーズ社は、イスラエルにパレスチナ人を監視するための技術などを提供し、ガザの大量虐殺やイランの攻撃に技術的支援を与えています。ICE(関税・移民執行局)による市民殺害事件の背景にもこの技術が関係していると言われています。これだけで彼の信奉する技術がいかに危険であるかがわかるでしょう。
これは決して対岸の火事ではありません。そのティールが3月上旬に来日し、高市首相と総理官邸で面談したこともあり、日本政府との契約も間近であるという噂もあります。スパイ防止法に合わせてパランティアの技術が導入されれば、日本も一気に監視社会に変貌します。ちなみに欧州各国はティールに懐疑的で、個人の情報を集約し、レッテルを貼っていくパランティアの技術の使用をドイツは「違憲」としました。
なぜ、テクノ・リバタリアンが人を監視し、選別することに躍起になるのかと言えば、それは、彼らも地球の未来が危ういことに気づいているからでしょう。マスクは火星に移住するプロジェクトを進めていますし、ティールはニュージーランド近くの人工島に新国家を建設しようとしています。気候変動や核戦争によって資源が枯渇し、困窮者や難民が溢れ、金持ちに憎悪が向かう世界がやってくるかもしれないという恐れをテクノ・リバタリアンたちが抱いているからです。つまり、終末を前にして、自分たちが生き延びるための適応策なのです。
特にティールははっきりと選民的な「黙示録」の解釈を掲げており、エリート層のテクノロジーが生み出す富を、来たるべき終末的危機から人類を守る最後の砦とみなし、神聖視しています。そして、エリート支配に批判的な言説を「反キリスト」と非難しています。ティールが敵視している代表格がグレタ・トゥーンベリです。それは、彼女が、テクノ楽観主義を批判し、地球を救うために、資本主義からの抜本的なシステムの転換を求めているからです。
このように気候ファシズムとテクノ・ファシズムは自ずと融合し、反キリストや大衆を切り捨て、一部のエリートだけが生き残ればよいとする選民思想的な終末論をもたらします。これを「終末ファシズム」と呼んでもいいでしょう。いま世界各国が不安定性や不確実性がもたらす不安にさいなまれているので、終末ファシズムが世界を覆うのは時間の問題です。
