各社が販売している経口補水液(4月21日 都内/弁護士JPニュース編集部)

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公益財団法人日本健康・栄養食品協会が4月21日午後、都内で会見。

会見には同協会の矢島鉄也理事長(医学博士)と、日本医科大学付属病院高度救命救急センター部長の横堀將司(しょうじ)教授が登壇し、4月22日から環境省・気象庁による熱中症警戒アラートの運用が始まるタイミングに合わせ、経口補水液の適切な使用方法をまとめたリーフレットを公表した。

昨年の搬送者数は過去最多の10万510人

背景にあるのは、深刻化する熱中症被害だ。総務省消防庁が2025年10月29日に公表した確定値によると、2025年5~9月の熱中症による救急搬送人員は累計10万510人。2008年の調査開始以降、初めて10万人を超えた。

年齢区分別では高齢者(65歳以上)が5万7433人で全体の57.1%を占める。入院が必要な中等症・重症は約36%に達し、発生場所は住居が38.1%で最多だった。

矢島理事長は「2024年には熱中症による死亡者数が5~9月で2000人を超え、昨年も概数で1500人台。国は死亡者数の半減を目標に掲げているが、まだ1000人を切る水準には至っていない」と述べた。

「スポーツドリンクとの違いが伝わっていない」

リーフレット作成の直接的な契機は、消費者庁が2024年12月10日に出した通知だ。「経口補水液」と表示するには、特別用途食品(個別評価型病者用食品)として消費者庁の許可を得る必要があると明確化された。2025年6月1日から適用されている。

しかし矢島理事長によれば、「経口補水液という言葉自体がまだ現場に十分伝わっておらず、スポーツドリンクと何が違うのか理解されていない」のが実情だという。消費者からは「いつ、どのように飲めばよいのか分からない」「使用を控えたほうがよいのか迷う」といった声が多く寄せられていた。

今回のリーフレットは、同協会が主催する特別用途食品制度の活用に関する研究会(参加企業29社)が業界連携で作成。同協会のHP上で公開されており、大塚製薬工場、日本コカ・コーラ、味の素、赤穂化成、明治、サントリービバレッジ&フードの6社の許可品が掲載されている。

「予防的に飲むものではない」──飲むべきタイミングは?

横堀教授は、経口補水液の適切な使用タイミングについて医学的見地から解説した。

「経口補水液はナトリウム、カリウム、糖分(グルコース)を適度に含み、小腸で素早く吸収できる組成になっている。塩分だけでは水分の吸収効率が落ち、糖分が高すぎると利尿作用で逆効果になる。この"いい塩梅"の組成が経口補水液の特徴だ」と横堀教授は説明する。

飲むべきタイミングは、日本救急医学会の「熱中症診療ガイドライン2024」が定めるI度の症状が出た時点。めまい、立ちくらみ、生あくび、大量の発汗、こむら返りなどがサインとなる。

「I度の症状が出たら素早く500ml(1本)を摂取し、その後もう1本をゆっくり飲む。症状が改善しなければ医療機関を受診してほしい」(横堀教授)

一方、II度以上(集中力・判断力の低下、意識障害など)では医療機関の受診が必須となる。意識が悪い状態で無理に飲ませると誤嚥性肺炎のリスクがあるため、自力で水分を取れない場合は点滴による対応が必要だと横堀教授は強調した。

「個別評価型」の許可マークが目印

「予防目的で飲んでもよいのか」との質問に対し、横堀教授は「予防的に飲むものとしての許可は出ていない。あくまでI度の熱中症になったときに有効な食品だ」回答。

経口補水液のカリウム含有量はバナナ約1本分(370~400mg)であることなどから、脱水のない状態で過度に飲むと影響が出る可能性があるとして、「高血圧でナトリウムを制限している人、糖尿病の患者、透析中の人などは、暑くなる前のこの時期にかかりつけ医へ相談し、適切な摂取量を確認しておくべきだ」と述べた。

また、矢島理事長は「普段はスポーツドリンクや水、お茶などで水分をとってもらいつつ、熱中症の初期症状が見られた場合には経口補水液を活用してほしい」とコメントした。

なお、消費者庁許可の経口補水液には「許可基準型」と「個別評価型」の2種類があるが、熱中症による脱水への有効性を表示できるのは、人を対象とした臨床試験でその効果が確認された「個別評価型病者用食品」のみのため注意が必要だ。パッケージに記載された「個別評価型」の文言と許可マークが選択の目印となる。