ワールドカップが開幕しても、組み合わせ抽選には恵まれたものの、フラストレーションを溜める展開が続いた。ジャケ監督が重用したステファン・ギーバルシュは大会を通して無得点に終わり、ダビド・トレセゲやティエリ・アンリも成熟途上でFWの軸が定まらなかった。

 さらに2戦目のサウジアラビアとの試合では、ジダンが退場になり2試合の出場停止処分を受ける。だが反面、層の厚さは重要な武器になり、GL3戦で登録22人中18人がピッチに立ち、エマヌエル・プティ、フランク・ルブーフ、クリスチャン・カランブーらが後半戦にかけて重要な戦力として浮上していった。

 ジダンが不在だったラウンド(R)16のパラグアイ戦は、守護神ホセ・チラベルトを中心とする守備を崩し切れず、0−0のまま延長戦に突入。辛うじてローラン・ブランの史上初めてのゴールデンゴールで振り切るが、準々決勝のイタリア戦も120分間を戦い0−0。PK戦の末に薄氷の勝利を掴んだが、得点力不足がクローズアップされた。

 それに対し連覇を狙うブラジルは、21歳になったロナウドが、フェノメノ(怪物)の名を世界に轟かせていた。前回のアメリカ大会では17歳でメンバー入りを果たし、ペレの「使うべきだ」との推奨にもかかわらず1度も出番がなかった。だが4年間で立場は一変していた。PSVでエールディビジ、バルセロナでリーガ・エスパニョーラと異なるリーグで連続して得点王になり、インテルに移籍後もセリエAでは得点ランク2位。大会前年には、当時まだ統一されていなかった欧州最優秀選手とFIFA最優秀選手を独占していた。

 突出した得点源を持つブラジルはGLを首位通過すると、R16ではロナウドと横浜フリューゲルスでプレーしていたセサール・サンパイオが2ゴールずつを挙げてチリに4−1で快勝。準々決勝ではオープンな点の取り合いになるが、最後はリバウドがこの試合2つ目のゴールを決めて、食い下がるデンマークを3−2で突き放した。
 
 なおフランス大会は、各国代表として現役Jリーガーの出場が目立った。ブラジルではドゥンガ(磐田)とサンパイオがボランチでコンビを組み、ユーゴスラビアでもドラガン・ストイコビッチ(名古屋)とゼリコ・ペトロビッチ(浦和)が主力として活躍し、R16に進出。カメルーンではパトリック・エンボマがGL3戦全てにスタメン出場し、韓国にも3選手が名を連ねた。ボスマン判決が出て3年間が経過していたが、Jリーグの助っ人選手の水準が最も高い時期だった。

 GL2戦目で日本に辛勝したクロアチアは、ノックアウトステージに入るとギアを入れ替えてきた。R16でルーマニアを1−0で下すと、準々決勝では2年前の欧州王者ドイツと対戦。ドイツが前半でクリスチャン・べアンスを退場で失ったので数的優位を保つことが出来たが、ロベルト・ヤルニ、ゴラン・ブラオビッチ、さらにシューケルが立て続けにゴールを陥れ3−0で快勝する。ドイツは2年前にEURO(欧州選手権)を制した直後に、DFB(ドイツ連盟)内では「質的にはイタリアやロシアに劣った」と猛省したそうだが、奇しくも検証の正しさが証明された。

 また、クロアチアとともにGLで日本を下したアルゼンチンは、R16でイングランドとの因縁の対決を迎えた。アルゼンチンが先制した試合で、イングランドは18歳のマイケル・オーウェンが輝いた。10分に自らが受けたファウルでPKを獲得し、アラン・シアラーの同点ゴールを呼び込むと、16分にはスピードに乗ったドリブルから鋭角に鮮烈な逆転弾を突き刺す。

 だがアルゼンチンもFKからハビエル・サネッティが決めて、そこからは両国ともに譲らず延長戦突入が濃厚になった。ところが終盤、ディエゴ・シメオネにファウルを受けたデヴィッド・ベッカムが報復に出て退場。試合はPK戦の末にアルゼンチンに凱歌が上がるのだが、以後しばらくベッカムは自国でもブーイングを浴びることになった。