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ボディロールで感じるグリップの限界

サーブ96へ載る、2ストローク・エンジンは即座に始動し、パリパリっと音色は活発。アクセルペダルを傾ければ、滑らかさに頬が緩む。勢い良く回転は上昇するが、速度上昇とは一致しない。発進時に排気ガスが青白く煙るものの、すぐに透明へ戻る。

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運転席には、2スポークの大径ステアリングホイール。速度と燃料、水温のメーター、ヒーターのスライダーがダッシュボードで整列する。ペダルは少しオフセットしているが、運転姿勢は快適。左ハンドルで、コラムシフト・レバーは筆者の記憶と逆の右側だ。


サーブ96(1960〜1967年/2ストローク/欧州仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

細いマフラーから、少し場違いなほどの排気音。パワーバンドは特にないが、しっかり回せば充分速い。ステアリングはハイギアで、手のひらには路面の状態が良く伝わる。カーブが続く道を、100km/h前後で飛ばすことも難しくない。

現代的なラジアルタイヤへ交換されているが、路面の凹凸へ滑らかに追従し、身のこなしは軽快。増大するボディロールで、グリップの限界を感じさせるタイプといえる。ブレーキにサーボがなく、望んだ制動力を得るには、相応に力を込める必要がある。

4ストロークに未来を感じたサーブ

自転車のようにフリーホイール構造が組まれ、エンジンブレーキはまったく効かない。回転数を調整しながら、速度維持するのが難しい。豪快な2スト・サウンドで、スピード感は実際の2倍といえる。

2026年には羨ましく聞こえるが、1960年代初頭、サーブは静かな4ストローク・エンジンこそ未来だと考えていた。技術者のトリグヴェ・ホルム氏は上層部の反対をよそに、96のエンジンルームへ収まる、ランチアやボルボなど複数のユニットで検証を進めた。


サーブ96 V4(1967〜1980年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

最終的に採用が決まったのは、フォード由来のV型4気筒。バンク角60度で小さく、トルクが太く、すんなりボンネットの下に収まった。最高出力は65psへ一躍上昇。トルクも8.2kg-m/3000rpmから11.8kg-m/2500rpmへ増え、扱いやすさも改善していた。

0-100km/h加速は24.1秒から16.5秒へ短縮し、燃費は7.8km/Lから10.4km/Lへ改善。最高速度は122km/hから148km/hへ伸び、給油時に混合オイルを足す必要もなくなった。1968年に、96の2ストロークは廃止されている。

面白いほど対照的なエンジンの印象

同時に、デザインチームは見た目を刷新。シルエットはそのままに、新たなフロントグリルと長方形のヘッドライト、大きなガラスエリアを与えている。

ダッシュボードを中心に、インテリアにも手は加えられた。ステアリングホイールにはソフトパッドが張られ、運転席にはシートヒーターも備わった。ブレーキは、フロントにディスクを採用。エンジンブレーキも利用可能になっている。


サーブ96 V4(1967〜1980年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

今回の、グレー・グリーンの1台は、デイビッド・パーミター氏が所有する1972年。フロントマスクが精悍になった見た目は、新車時には間違いなく最新版に映ったはず。インテリアも明らかに進化し、各部がソフトタッチ加工されているのがわかる。

エンジンを始動させると、印象は面白いほど対照的。フォードのV4らしい、気怠い響きがフロントから放たれるが、2ストロークより遥かに落ち着いている。バランサーシャフトで振動を抑えつつも、目立ってスムーズな訳ではない。

運転はより楽しく、音響体験は刺激的

ステアリングにアシストはなく、80kg近く増えた車重を実感させるように、予想以上に腕力がいる。V4エンジンの96は、4速MTが標準。速度調整しやすく、ギア比は高く、100km/h前後での巡航は遥かに安楽といえる。

鋳鉄製エンジンがフロントノーズにぶら下がり、シャシーバランスは2ストローク版に及ばず。直進時の安定性は大幅に向上していても、カーブへ積極的に飛び込むとアンダーステアを抑えきれない。軽快感では、幾分後退したといわざるを得ない。


グレー・グリーンのサーブ96 V4と、ブルー・グレーの96    マックス・エドレストン(Max Edleston)

それでも、長距離ドライブとの親和性は高い。エンジンの違いで、これほど激変したモデルは他に例がないように思う。2ストロークの直3から、4ストロークのV4へ置き換えた96は、1980年まで生産が続いた。

その2種を所有していた経験も加味すると、どちらかを選ぶなら、筆者なら2ストローク版にするだろう。運転がより楽しいだけでなく、音響体験が刺激的だから。

協力:サーブ・オーナーズクラブGB

2ストと4スト サーブ96 2台のスペック

サーブ96(1960〜1967年/2ストローク/欧州仕様)

英国価格:729ポンド(1966年時)/1万2500ポンド(約263万円)以下(現在)
生産数:54万7221台(96合計)
全長:4166mm
全幅:1575mm
全高:1473mm
最高速度:122km/h
0-97km/h加速:24.1秒
燃費:7.8km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:813kg
パワートレイン:直列3気筒841cc 自然吸気 2ストローク
使用燃料:ガソリン
最高出力:42ps/4500rpm
最大トルク:8.2kg-m/3000rpm
ギアボックス:4速マニュアル/前輪駆動

サーブ96 V4(1967〜1980年/英国仕様)

英国価格:1302ポンド(1973年時)/9500ポンド(約200万円)以下(現在)
最高速度:148km/h
0-97km/h加速:16.5秒
燃費:10.4km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:891kg
パワートレイン:V型4気筒1498cc 自然吸気 OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:65ps/4700rpm
最大トルク:11.8kg-m/2500rpm
ギアボックス:4速マニュアル/前輪駆動
※ボディサイズは同値


サーブ96 V4(1967〜1980年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)