《猫だけが残った》千葉県「有名ゴースト団地」の入居者がついにゼロに…!住民たちの「その後」と憧れの住宅が「心霊スポット」に成り果てるまで

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茂原市は3月までに全員退去を求めていたが…

目の前に広がるのは、等間隔に立ち並ぶ木造建ての集合住宅。その数およそ60棟はあるだろうか。窓はベニヤ板で閉ざされ、中を確認することはできない。

もう長い間、手入れされていないのだろう。ドアは朽ち果て、外壁は黒ずみ、蔦に覆われている。

3月31日。ポツポツと雨が降りしきるなか、記者は千葉県茂原市の市営真名(まんな)住宅、通称「真名団地」を歩いていた。団地を南北に貫くメイン通りには商店の痕跡があり、使われなくなった公衆電話や、ガラス面が割れた自動販売機が残る。

かつて団地の子どもたちが遊んでいたであろう公園は雑草が生い茂り、鉄棒やブランコなどの遊具は錆びて光沢を失っている。そんな光景とは対照的に、木造住宅のすぐそばには、今年も春の訪れを告げるかのように桜が咲いていたーー。

市の中心部から5キロほど離れた場所に位置する真名団地は、1970年代の高度経済成長期に建てられた。全299戸の巨大団地で、敷地面積は東京ドームを超える約5万6000平方メートルを有する。最盛期には1300人を超える住民がいた。

だが、2000年代以降は過疎化の一途をたどり、2021年には建物の老朽化にともない廃止の方針が決定した。

昨年1月に記者が訪れた時点で、メゾネットタイプの2階建ての区画には誰も住んでおらず、長屋造りの平屋に住んでいる住民もわずか8世帯のみ。団地を管理する茂原市は、3月までに入居者全員が転居することを求めていた。

その約束の日、団地はどうなったのか。過去に取材した住民宅を訪ねるが、人が住んでいる気配はない。ポストの上に設置されていた玄関チャイムは外されている。別の住民宅も、勝手に立ち入らないように入口はベニヤ板で閉ざされ、平屋の窓ガラスは何者かによって割られていた。

3月中旬で居住者ゼロに

真名団地の敷地内にある一軒家に住む、70代の男性はこう明かす。

「今は誰も住んでいないよ。去年の3月に5組が出て、ちょうど2週間くらい前に2組が出ていって(居住者は)いなくなった。最後まで残っていたAさんは80代くらいのおばあさんだな。

いつも外の階段に座っていたから何度か話したこともあるけど、『娘の家で面倒を見てもらう』と言ってたな。ほかの人はみんな別の市営住宅に行ったんだと思うよ」

だが、市の計画どおりに居住者がゼロになった現在も、たびたび”元住民”が真名団地に顔を出しにくるという。

「やはり皆さん、長年住んでいたからここに愛着があるんだろう。去年の3月に別の市営住宅に移ったBさん(80代・男性)も定期的に戻ってきて、畑の作業をしてるよ。あの人は気さくだから今でも野菜もんを収穫したら『これ食べるなら持っていっていいよ』と声をかけてくれるし、昨日も会って『また5月ごろにキュウリとか色々やってみたい』と話していました。

それと付き合いはないけど、ここに住んでいたころに野良猫にエサやりしてる男の人がいて、その人は今でも朝と夕方にエサやりにきています。猫は3匹くらいかな。私が近づくと警戒して逃げちゃうのに、その人がくるとミャーミャー集まるんです。そんなに猫のことが大事なら、ここを出ていくときに一緒に引き取ればよかったのにね」

真名団地の最盛期は、1970〜80年代にさかのぼる。当時、茂原市には日立製作所や東芝などの大手企業のほか、三井東圧化学などの天然ガスの関連会社が進出。県内外から多くの働き手が集まり、工業都市として賑わいを見せていた。この日、取材を進めるなかでも当時を懐かしむ声が多く聞こえた。

真名団地の近所に住む農家の女性は、「あそこは市内の団地の中でも一番人気でした。当時は全世帯埋まっていたし、抽選待ちの状況だったんです」と回想する。

「若い家族連れが多く住んでいて、平日の夕方や土日になると小さな子どもたちが楽しそうに走り回ってましたよ。私は農家だから採れたての大根やトマトをそこら辺に積んでおくと、『おばさんこれもらってもいい?』と子どもたちが話しかけてくるんです。

それで後日、お母さんが『息子がお世話になりました』なんてお礼に菓子折りを持ってきてくれましたよ。夏も団地で花火大会があって、子どもたちが目を輝かせていたのを覚えています」

憧れの団地は、いつしか心霊スポットに

だが、そんな時代は長くは続かなかった。2000年代に入ると、工場の撤退や縮小が相次ぎ、居住者も次々と転居していったという。別の近隣住民は「ファミリー層は出ていき、高齢者だけが残った」と語る。

いつしか真名団地は、YouTubeなどで「ゴースト団地」あるいは「廃墟団地」として取り上げられたことで心霊スポットになったという。団地の敷地に約30年前から仕事のトラックを駐車している電気工事士の男性は言う。

「最近もユーチューバーは来てるよ。つい昨日も一人でスマホ片手に歩いている若者がいたし、肝試ししてるところに居合わせたこともある。仕事が終わってここ(真名団地)にトラックを止めてタバコを吸っていたら、そこら辺を大学生っぽい男女グループが懐中電灯を持ってワーキャー楽しそうに歩いてた。

俺自身は、ここが怖いとか不気味とか思ったことはない。だけど実際に孤独死で亡くなったのは何人かいてさ、そういう現場を見たことはある。孤独死は朝だね、新聞配達の人が気づいたみたいで、いつもポストから新聞が取られているのに、3日分が溜まってる。

外からのぞくと部屋の電気やテレビもついているからおかしいと思って通報したら、やっぱり亡くなっていた。そういう団地の衰退っぷりも見てきたから、ここがなくなるのも時代だなって」

後編記事『【フォトルポルタージュ】千葉県茂原市のゴースト団地「最後の日」…元関係者が明かす「最盛期の驚愕年収」と地権者たちの「今後の不安」』に続く。

【つづきを読む】【フォトルポルタージュ】千葉県茂原市のゴースト団地「最後の日」…元関係者が明かす「最盛期の驚愕年収」と地権者たちの「今後の不安」