日本とフィンランドでこんなに違う「暮らし方」。手抜き料理は悪いことじゃない
フィンランド人の暮らし方には、日本と異なる価値観があります。「フィンランドでは家事に手抜きという概念がなく、ワンプレートごはんも立派な夜ごはんです」と語るのは、フィンランドで生まれ育ち、現在は日本で暮らしているというラウラ・コピロウさん。無理をせず自分らしく暮らすコツを伺いました。
※ この記事は『フィンランド発 幸せが見つかるライフスタイル』(WAVE出版刊)に掲載された内容を一部抜粋・再編集して作成しています

フィンランドでは「手抜き」はマイナスな意味じゃない
季節が変わればインテリアの衣替えを楽しみ、フィンランドデザインを生活のいたるところに取り入れて、衣食住のなかでもとくに「住」に投資しているフィンランド人。
「丁寧な暮らし」の代表例にも聞こえますが、じつはフィンランドの暮らしは日本で聞く「丁寧な暮らし」とはほど遠いものです。
「丁寧な暮らし」は、家事や生活などに手間と時間をかけて向き合うというイメージですが、自分を含めたほとんどのフィンランド人はあまり家事に時間をかけることはありません。皆さんが思うより、ずっと時短で「手抜き」の暮らしです。
食器を手洗いするのは電気が通っていないサマーコテージでやるぐらいで、普段はすべて食器洗い機におまかせ。テーブルウェアは食器洗い機と、いつでも電子レンジにも入れられるようなもののみを使っています。
それは食事の考え方にも表れています。もちろん、子どもに連日同じごはんを食べさせる保護者は悪くないし、ワンプレートにジャガイモとサーモンとトマトのみでも立派な夜ごはん。冷凍しておいたものを解凍するのも手づくりでも、料理に3分かかっても30分かかっても1時間かかっても、すべてごちそうです。
その例として挙げたいのがワンプレートごはんです。「ワンプレートごはんでもいいよね」と聞かれても、「ワンプレート」や「でも」の少しネガティブなニュアンス、手を抜いても悪くないよね、と確かめているような言い回しはフィンランド人には通じないと思います。日本で長く暮らしている私もその感覚はまったくもち合わせていません。
たとえば冷凍食品より手づくりの料理にこだわるとか、お花のある生活がゆとりを感じさせるとか、インテリア雑誌のなかに広がる理想的な生活を送るためには、少しがんばらないといけない暮らしに感じることもあります。
解釈や捉え方にもよるかもしれませんが、「丁寧」という言葉には、どこかでだれかが設定した暗黙の基準や様式があるのでは、と感じることがあります。
「丁寧さ」よりも「時短」と「ちょうどよさ」
先日東京の家でホームパーティを開催したときに、食材をキッチンバサミ(フィンランド人がみんな使っているフィスカルス)で切っていたら日本人の友達に、「ラウラがハサミで食材を切っているのを見て安心した。私もハサミで切っているから」と言われたことがあります。
このときなぜ友人は安心したのだろうと一瞬思ったのですが、なるほど! 時短で便利なことは手抜きに見えるのか、ということに気づきました。
私自身は時短できるものは絶対に時短した方がいいし、むしろ早くできることに時間をかけるのは時間の無駄だと考えるように育ってきたので、この発想は新鮮でした。
このときは「時短で料理をすることで、ほかにやりたいことに時間が使えるし、自分を大切にすることにもつながると思うよ」と、あまり考えずに答えました。
このようにフィンランドでは家事において「手抜き」という概念が存在しないのです。そして「丁寧」というより「ちょうどいい」、自分が気持ちいいと感じている暮らしを大切にしています。
自分もイッタラの食器を集めたり、フィンランドの天然素材のタオルを使ったり、ゆっくりコーヒーを淹(い)れて飲むのが大好き。このような小さな幸せを大切にしながら、毎日暮らしています。
家事は「好きだからやる」のが心地いい
フィンランドでももちろん「普通の暮らし」の基準があって、日本と違う基準のハードルが高いと感じるときもあります。
たとえば、家の広さは何平米が理想だとか(東京の家の面積をみんなに教えると、「大変だね」と毎回言われます笑)、インテリア大国なので、ほかの人がもっている高価ですてきなインテリアをインスタグラムや雑誌で見ると比べてしまうこともあります。
ただ、ほかの人が設定した「丁寧」に自分を合わせるよりも、自分が「これがいい」と思うことを実践し、そのとおりに暮らせばいいだけ。
実家では父がアイロンがけ担当で、家族のTシャツやワンピースだけではなく、シーツや
靴下までアイロンがけをしています。また、パンづくりも好きで、大切にしているパン種でつくったパンをサウナの中で発酵させて焼いて、とても「丁寧な暮らし」を送っているなと思います。
でも、なぜアイロンがけをやっているかというと、丁寧に暮らしたいという気持ちよりも、自分に向いている、自分が好きだからやっているだけです。そしてこれらの「やりたい」家事のために父がつくるごはんはとにかくシンプル。
だれが家事をやるか、それにどのくらいの時間をかけるか、どこで時間を節約できて、本当にやりたいことを実現するためにどうやって時間を捻出するか、自分にとってなにが大切かを考えて行動に移すことが、フィンランド流の「自分に丁寧な暮らし」かもしれません。
