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火星で農業といえば映画『オデッセイ』が浮かぶところですが、フィクションから現実へ、一歩ずつ進化しています。

ドイツ・ブレーメン大学の研究チームが、火星の砂に似た物質と微生物だけで食用植物を育てたと発表しました。

研究は学術誌『Chemical Engineering Journal』に掲載されています。

「火星の砂」で草が育つ仕組み

まず、そもそも火星の土だと、農業的に何が問題なのかを整理しましょう。

火星の地表には岩石由来のミネラルは存在しますが、地球の土と決定的に違う点があります。それは植物が育つために必要な「有機物」がほぼゼロということです。

地球の土には、落ち葉や微生物など、分解されて栄養になる有機物がたっぷり含まれています。でも、火星にはそれがない。だから種を蒔いても養分がなくて育たないわけです。

そこで研究チームが注目したのが「シアノバクテリア(藍藻類)」という微生物。これは池や岩の表面に生える青緑色の生き物で、光合成をすることで知られています。

すごいのは、火星の大気に豊富に含まれる二酸化炭素(CO2)を栄養源として成長できる点。つまり、栄養源を現地調達できる微生物なのです。

研究では火星の砂を模した「火星模擬レゴリス(MGS-1)」という人工素材を使用。シアノバクテリアを火星の砂に模した素材と一緒に培養し、育った微生物の固まりを今度は別の微生物に分解させるという2段階のプロセスを踏んでいます。

分解が生み出す「一石三鳥の産物」

この2段階目の工程が面白いところです。育てたシアノバクテリアを酸素のない環境で分解する「嫌気性発酵」という方法を使います。これはざっくりいうと、"酸素なしの漬物作り"のようなイメージ。微生物が有機物をじわじわ分解して、植物が吸収できる栄養素を作り出します。

研究チームは複数の条件を検証した結果、バイオマスをあらかじめ加熱処理してから発酵させることと、温度を35度に保つことが最も効果的だとわかりました。

この発酵プロセスから得られるものは3つです。まず植物の肥料。発酵液はアンモニア態窒素(植物が吸収しやすい形の窒素)を含む液肥になります。次に食べられる植物。この肥料を使って「レムナ」というウキクサ科の小さな水草を育てることに成功。そして3つ目がメタンガスです。発酵の副産物としてメタンが発生し、これはエネルギー源として活用できる可能性があります。

実験では、乾燥させたシアノバクテリア1グラムから作った肥料によって、27gの生のレムナ(食用ウキクサ)を育てることができました。ざっと27倍の収量です!

レムナは成長が早く、栄養価が高く、丸ごと食べられます。すでに食品として承認されている地域もあって、地球でも宇宙でも「スーパーフード」の候補として注目されています。火星みたいな環境では、人間が栄養を摂るのに向いた作物と言えそうですよね。

ただし、今回の実験はすべて地球上の制御された環境で行なわれたものです。実際の火星では放射線、低重力、極端な温度変化といった過酷な条件が存在しており、それらがシステムに与える影響はまだ確認されていません。

また、完全に火星の砂だけで同じ成果が得られるかどうかも課題です。今回の成果だけで「火星で農業!」とは言えないのも現実ですが、どうやら「現地調達の素材から食品が作れる」という試みとしては、期待が持てると思います。

そのうち「火星名物レムナスムージー」みたいな名産品が生まれたりするんでしょうか。そこまでいくと牧歌的で、だいぶ未来っぽいですが。

Source: Interesting Engineering, Chemical Engineering Journal via HDblog

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