首脳会談の行方は

写真拡大

 ドナルド・トランプ大統領が激しく怒っている──。あるいは「逆ギレ」と言うべきか。トランプ大統領は3月17日、自身のSNSに投稿し、対イラン軍事作戦は「我々はイラン軍を壊滅させた」と成功を誇示。さらに「NATO諸国の大半から軍事作戦に関与したくない」との通知が来たと続け、「もはや我々はNATO諸国の支援は必要ないし、望んでもいない──そもそも最初から必要などなかったのだ! 同様に、日本、オーストラリア、韓国についても同じである」と噛みついた。

***

【写真を見る】「激ヤセ」が心配される高市首相 現在と比較すると「まるで別人」

 そもそもトランプ大統領は3月14日、ホルムズ海峡を通過する船舶を護衛するため、「中国、フランス、日本、韓国、英国などが艦船を派遣することを願っている」とSNSに投稿していた。

首脳会談の行方は

 だが現時点で「艦艇を派遣する」と明言した国はない。そのため、とうとうトランプ大統領はキレてしまったようなのだ。

 こんなタイミングで高市首相は訪米する。最悪のタイミングであることは言うまでもないが、そもそもトランプ大統領が激怒する前から「日米首脳会談は高市首相にとって最大のピンチ」と指摘されていた。

 どれくらいの苦境なのかと言えば、これまで折に触れて高市首相に苦言を呈してきた石破茂・元首相が心から同情するレベルなのだ。政治部デスクが言う。

「石破さんは3月16日に国会で講演を行い、多くのメディアが発言内容を伝えました。中には『高市さんの政権運営に注文を付けた』と報じた社もあります。とはいえ、石破さんは高市さんに深く“同情”しているのも事実です。『最悪のタイミングで訪米することになり、本当に大変だろう』、『首相の辛さや孤独は首相経験者でなければ分からない。今の高市さんが、まさにそうだろう』と語っています」

トランプ大統領の認知能力

 3月19日に高市首相はアメリカ・ワシントンでトランプ大統領と会談する予定だ。17日に参議院の予算委員会で高市首相は「高市内閣はしたたかな外交を、そして国益第一の外交を展開してまいります」と大見得を切った。

 だが、果たしてトランプ大統領を相手に「したたか」な交渉など可能なのだろうか? 政治担当記者は「毎度のことですが、トランプ大統領は“前言撤回”が当たり前です。そのため世界各国が振り回されてしまうのです」と言う。

「実はアメリカに精通する専門家や、政府関係者からでさえ、『トランプ大統領の健康状態は大丈夫なのか?』と不安の声が上がっています。前言撤回や、支離滅裂な発言があまりにも目立つからです。認知や決断の能力という観点から、1946年生まれの79歳という年齢に懸念を示す専門家も少なくありません。確かにトランプ大統領は『日本の支援はいらない』という趣旨の投稿をSNSで発表しましたが、それを額面通りに受け止めると高市首相は大火傷する可能性があります」

 政治部デスクは「トランプ氏ではない、“普通”のアメリカ大統領が日本の首相と首脳会談を開く場合、まずは事務方に事前協議を行わせます」と言う。

事前協議は不可能

「アメリカの大統領スタッフが『海上自衛隊の護衛艦をホルムズ海峡に派遣してくれないか』と要請すれば、日本の官僚が『憲法や法律上、それは無理だ』と答えるという具合です。協議は続き、ならば日本は代わりに何ができるのか詰める。事前協議の結果が報告されれば、大統領と首相は政治のトップとして何をすべきか考えることになります。ところがトランプ大統領は事前協議を嫌います。つまり今回の訪米で高市首相は激怒しているトランプ大統領と1対1によるディール(取引)を迫られる可能性が高いのです」

 日本は太平洋戦争の敗戦以来、国家の最優先事項として日米関係の強固に腐心してきた。ところがトランプ大統領が日米交渉の“ラスボス”として登場すると、日本外交は「トランプ氏という王様のご機嫌を損ねないために何をすべきか」に変質してしまった。

「もし日本が海上自衛隊の護衛艦をホルムズ海峡の船舶を護衛するために派遣した場合、イランに宣戦布告したのと同じ状態になります。護衛艦が攻撃されても仕方ありません。1対1のディールで、高市首相としてはイランへの軍事作戦の正当性を問う手はあります。つまりトランプ大統領に『イランに対する攻撃は、国際法違反なのでは?』と問うカードを切るのです」(同・政治部デスク)

結局はお土産

「ただ、日本側も必死で情報収集をしています。その結果、トランプ大統領が理路整然と反論してくる可能性は高いと判断しています。つまり大統領は『イランの核開発で“差し迫った危機”を把握したため、軍事作戦に踏み切った』と主張、返す刀で『核不拡散は極めて重要であり、拡散の危機を取り除くためイランを空爆している。被爆国である日本は不拡散の重要性をどの国よりも理解してくれるはずだ』と日本に同意を求めてくるかもしれません。核開発を阻止し、核兵器が拡散しないよう手を打ったというトランプ大統領の主張に対し、高市首相が『したたか』に反論するのは難しいのではないでしょうか」(同・政治部デスク)

 トランプ大統領が何を言っても、高市首相は「とにかく憲法と法律で護衛は無理です」と必死に理解を求めたとする。だが、それに大統領が耳を貸すかは不透明だ。

「トランプ大統領が『それならアメリカは日本に原油を運ぶタンカーについては守らない。自分のタンカーは自国の軍備力で守ったらいい』と突き放すと、もう取りつく島がありません。結局、高市さんは『したたかな外交』というよりは、トランプさんのご機嫌を損ねないように“お土産”を差し出すしか他に方法はないと思います。護衛艦は派遣できないが、給油や補給などの後方支援を行う、もしくは戦後、機雷の掃海艇を派遣する、軍事協力は無理だとしても、対米投資はさらに増額する、アメリカから原油を大量に購入する、という具合です」(同・政治部デスク)

オイルショックの不安

 トランプ大統領は「その場の感覚」で動く。高市首相のお土産を高く評価し、「契約成立だ。日本を許してやる!」と叫ぶかもしれない。だが、別のリアクションが飛び出す可能性も充分にある。

「ある意味で最大の懸念はトランプ大統領がお土産を喜び、日本を許したとしても、アメリカがイランへの攻撃を継続する可能性があるという点です。停戦が成立する見通しは立っていません。もしアメリカとイランの戦争が長期化すると、オイルショックの再来が懸念されます。もともと高市政権は円安と中国によるレアアースの実質的な輸出制限により日本経済が悪化するリスクを抱え、国民生活に悪影響が出ることが“政権のアキレス腱”と捉えられてきました。ところが、もしこれに原油高が加われば、経済的な悪影響は比較になりません。今以上に国民生活が悪化するようなことがあれば、高市政権の支持率が一気に減少したとしても不思議はないのです」(同・政治部デスク)

デイリー新潮編集部