「捕まってないだけの詐欺師」「口車金もらい」キンコン西野が芸人たちからイジり倒される理由
千鳥・大悟が言いたい放題
キングコングの2人がゲスト出演した3月10日放送の「火曜は全力!華大さんと千鳥くん」(関西テレビ)が話題を呼んでいる。キングコングの西野亮廣が、千鳥を中心とする芸人たちから容赦ないイジリの集中砲火を浴びていたからだ。【ラリー遠田/お笑い評論家】
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【写真】「イケオジ?」「またモテようとしてる」…“シミ取り”姿の西野
中でも千鳥の大悟の攻撃は強烈だった。過去にも西野に対して「捕まってないだけの詐欺師」と言い放っていた彼は、この日も「口車金もらい」「えんとつ町のナダル」などと言いたい放題だった。ビジネスの分野で結果を出している西野が、バラエティに出るたびに先輩芸人からこのような“愛あるイジリ”を受けるのはなぜなのか。

西野は、芸人の中でもいち早くお笑い以外の活動に力を入れてきた先駆者のような存在である。絵本制作を皮切りに、オンラインサロン、クラウドファンディング、ビジネス書の執筆、映画制作、ミュージカル制作など、活動領域をお笑い業界の外側に広げてきた。活動の軸足が芸人以外のところに移っている状態なのだ。
彼は、芸人でありながらお笑い界の本流とは外れた場所でビジネス上の成果を出してきた人間である。そこに芸人たちが素直に「すごい」と言い切れない微妙なねじれがある。結果を出していることは認めざるを得ない気持ちがある一方で、具体的に何をやっているのか実態が見えづらくて怪しい部分もある。人々が西野に抱いている複雑な感情を的確に表した言葉が「捕まってないだけの詐欺師」なのだ。
このイジリが成立する理由は、西野が本当に怪しいからではなく、「怪しく見える構図」を自分から作っているようなところがあるからだ。クラウドファンディングやオンラインサロンや投資といった仕組みは、ビジネスやITの世界では珍しいものではないが、長くテレビバラエティの世界にいた芸人たちの感覚からすれば、どうしても「得体が知れない」「話が上手すぎる」と感じられる。
しかし、テレビに出るときの西野は、その説明を照れずにまっすぐにやる。理屈を組み立てて、未来を語り、共感と参加を呼びかける。その姿は、従来の芸人に多かった「笑いのために自分を下げる人」ではなく、「言葉で人を動かす人」に近い。
「うさんくさい」「口が達者」
西野がそういう態度を貫いているからこそ、ほかの芸人たちは、内心では彼の才能を認めていたとしても、それを素直に表現しようとはしない。テレビタレントという立場上、西野の言葉を「怪しい」と感じる視聴者の気持ちにも寄り添う必要があるからだ。「うさんくさい」「口が達者」「丸め込まれそう」などという形で笑いに変換する。そうすることで場を盛り上げ、笑いを起こし、西野を芸人として“おいしい”状態にしているのだ。
そもそも西野がイジり倒される最大の理由は、イジられたときの受け身が上手すぎるからだ。彼は生来の明るくポジティブな人間であるため、きつい言葉でイジられても、笑いながら反論したりツッコミを返したりして、その場の雰囲気を良好なものにしてしまう。決して気まずい空気になることはないので、芸人たちも安心して西野を攻め立てることができる。
視聴者側から見ると、単に笑えるだけではなく、イジリによって西野のビジネスのうさんくささが軽減されて、西野に対するイメージが良くなる。「捕まってないだけの詐欺師」などと揶揄されることで、むしろ西野の信頼度は上がっているのだ。
さらに言うと、西野がビジネスの分野で結果を出すほど、イジられて突き落とされるときの振り幅が大きくなり、そこで生まれる笑いも大きくなる。ここには一種の好循環がある。
西野亮廣は、お笑いの外で大きな成果を上げながら、テレビの中ではきちんと笑われることができる、きわめて稀有な人物なのだ。だからこそ彼は、嫉妬や警戒や賞賛が入り混じった複雑な感情を引き受けながら、芸人たちから何度でもイジられる。そのたびに、自分の特異性を笑いに変え、芸人としての居場所を更新している。
西野がイジられ続けるのは、嫌われているからでもなければ、怪しいからでもない。周りの芸人たちがその才能と存在感を認めていることの証しなのだ。
ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。
デイリー新潮編集部
