『DREAM STAGE』©TBS

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「でっかい夢、見せられちゃったな。次は俺の番か」

参考:『DREAM STAGE』中村倫也ら笑顔と涙のクランクアップ 「家族のような現場になるとは」

 ついに最終回を迎えた、金曜ドラマ『DREAM STAGE』(TBS系)。NAZEはついに国立競技場の客席を満員にする。国内最大級のスタジアムでライブを行う、それ自体が“夢の舞台”と言えるだろう。だがNAZEにとって国立のライブは、それだけではない。吾妻を呼び戻すというもう一つの“夢”を叶えるための舞台でもあった。

褒めない吾妻の本音、あの日の約束が導いた“国立の舞台”

 「お前らが国立を満員にできたら、何でも言うことを聞いてやるよ」と、彼らに発破をかけた吾妻の言葉をNAZEは忘れていなかった。それは、本気で彼についていこうと思っていたからこそ。すべてを捨ててでもNAZEを守ろうとしてくれた吾妻。そんな自分たちの未来を信じてくれたプロデューサーとともに、大きな目標に向かって走り続ける。その毎日こそが、夢のように幸せな日々だったのだと気づいた。だからこそ、吾妻とともにもっと大きな夢を見たい。そのためにたどり着かなければならないステージだったのだ。

 かつてステージ演出用に撮られていたビデオ。改めて見返してみると、吾妻の本音が収められていた。ユウヤには「生真面目に見えるが芯が強い」と成長を期待し、アトには「このチームの柱」と信頼を寄せながらも「もっと自分を出してほしいけど」と気に掛ける。ユンギは「周りをよく見て、アトのカバーをしている」と細かな動きもしっかりと見守っていた。ターンのダンスは「いずれ世界トップレベルになる才能」と確信。「カイセイは……」と言葉を詰まらせてみせたところも、「緊張がふっと和らぐ貴重な才能」と彼のいじられキャラへの安心感があってこそ。そして、ドヒョクは「末っ子ながら不思議な色気がある」、ゴンは「暑苦しいほどのハングリーさと真っ直ぐさでNAZEをひっぱる存在になる」と、それぞれの将来を楽しみにしていた。

 ビデオ内で「なんで面と向かって言ってあげないの?」とナム(ハ・ヨンス)にツッコまれると、吾妻は「苦手なんだよ」と言いながら、その理由を明かす。「好きなことを続けるっていうのは楽しいことばかりじゃない。でも意味のないことなんかひとつもない。壁にぶつかって結果が出なくて無意味に思える繰り返しのなかで、少しずつ確実に積み上がっていくものがある。そして、その積み上げこそが、そいつにしかない武器を作る。だから、俺は簡単に褒めたりしない」と自分にも言い聞かせるように語る。

 なんとも不器用で、くすぐったい吾妻の親心。だが、その愛は言葉少なでも、NAZEには伝わっていた。だから、彼らは吾妻があえて嫌われるようなことをして出ていったのだと、すぐに見抜き、その覚悟に応えられるようにならなければと自らを奮い立たせたのだ。「夢を見てもいいんだって僕らに教えてくれたのは吾妻さんです」「次は俺たちが吾妻さんに夢を見せる番だよな」と。

ダンスリレー動画から見えてきた仲間の絆と国立への道

 彼らが国立を目指して取り組んだのは、「#8万人ダンスリレー」とタグ付けした「Isn't She Lovely?」のダンス動画チャレンジだ。窮地に陥ったTORINNERを救うべくNAZEと立ち上がった子どもたちや、晴れの舞台を病床から待ち望むゴンの母(斉藤由貴)、ずっと彼らを見続けてきた古参ファン……と、これまで登場してきた人たちが踊り繋いでいく。

 実はこのダンスチャレンジ動画、番組の公式Instagramでリアルに投稿されている。NAZEのメンバーに囲まれて全く踊れていない中村倫也や、ユンギの父を演じたチェ・ジノが必死についていこうとする姿には、思わず頬が緩む。一方で、NAZEを叱咤し続けてきたダンストレーナー役のNOSUKEや、第5話のキーマンとして登場した警察官役の竹原ピストルがアイドルスマイル全開でダンスを披露してくれるギャップも楽しい。

 NAZEと関わったすべての人たちが、いつの間にか彼らを応援する仲間になっていた。国立は、NAZEだけの夢の舞台ではなく、彼らに関わった人々の思いが集まる場所になっていったのだ。それは、最大のライバルとして立ちはだかってきたTORINNERも同じ。どうしても吾妻に勝ちたいチェ代表(イ・イギョン)は、NAZEの国立ライブに、TORINNERの東京ドームライブをぶつけてくる。2グループを一緒に応援してきたファンにとっては、苦しい選択を迫られる場面に。だが、この国立のライブが、吾妻を呼び戻すものだと気付いたTORINNERは自分たちのライブを中止してでも、国立に駆けつけることを決断する。それは、チェ代表のやり方に対してハッキリとNOを突きつけた覚悟の表れでもあった。

 TORINNERだけではない。「人生は自分のものだから」と自分の足で歩むことを決めたパク・ジスPD(キム・ジェギョン)も。そして、チェ代表に従ってきた秘書たちも、名前とともに自分の人生を取り戻すべく会社を去っていく。そんな秘書のなかには、元SEVEN SEASのジフンがいたことも明らかに。ジフンは、吾妻も知らなかったその後のSEVEN SEASに何があったのかについてすべてを明かした。吾妻のスキャンダルはチェ代表による捏造だったこと。メンバーの間に起こった悲しいすれ違いの末に、リク(大倉空人)が命を落としたことも……。

夢を叶える姿は、誰かの夢をも動かしていく

 理想の自分になり、他者から認められたい。そう強く願うほどに、人は周囲が見えなくなることがある。チェ代表が吾妻に勝つことだけに執着し、NAZEの国立ライブにTORINNERの東京ドーム公演をぶつけたのも、その一例だろう。夢の大きさが、人を孤独にしてしまう瞬間でもあった。チェ代表も、もしその悔しさややるせなさを素直に言葉にしていたら……。吾妻やジスPDとタッグを組んで、もっといい仕事をしていたかもしれない。ジスPDが伝えてくれたように、最後までTORINNERをトップアーティストに育て上げようとしたチェ代表の手腕は本物だったのだから。

 鬼の目にも涙。初めてその実力を真正面から認めてもらえた嬉しさと、どうしてこうなってからじゃないと近くにいた同志に気づけなかったのかという後悔。その両方が混ざった涙だったのではないか。だが、その涙を流すことができたのなら、きっとまたチェ代表も新たな一歩を踏み出せる。そんな希望も感じさせるシーンだった。どんなに大きな夢を叶えた人も、最初はみんな何もないところからスタートしたのだから。

 〈あの頃はなにもなくて それだって楽しくやったよ〉国立の舞台で、NAZEが歌った「メロディー」は第1話でも披露されていたもの。そのときはゴンの母、たったひとりのためのステージだった。だが、いまは8万人を前に堂々とパフォーマンスしている。でも、その歌に込められた思いは同じ。夢を追いかけている途中は、まだ手のひらには何もない。でも、それでも楽しいと思えるのが、夢を持つことができる人生の喜びなのだ。

 夢を叶えるNAZEの姿を見て、「次は俺の番か」と勇気づけられた吾妻。『DREAM STAGE』は、夢を叶える瞬間だけでなく、その夢が次の誰かを動かしていく連鎖までを丁寧に描いたドラマだった。頑張ればすべてがうまくいくなんて綺麗事は言わない。厳しい現実も、たしかにある。けれど、夢を持つことそのものが確実に人生を豊かにする。それは、まだ自分には何も力がないと思っている若者も、大きな挫折を経験した大人も同じだ。そして、誰かの夢を応援することも、また自分の夢になる。

 ドラマが幕を閉じても、それぞれの人生は続いていく。この国立のライブを目の当たりにした私たちの人生にも新生活のタイミングが訪れる。そして、NAZEは5月に世界デビューを果たすことが決定している。この国立のライブをきっかけに、それぞれが新たな夢に向かって走り出す。その姿がまた、誰かの夢を動かしていく。そんな連鎖を実感し、胸が熱くなるエンディングだった。(文=佐藤結衣)