「限界まで追い込む」はもう古い? 最新科学が証明する筋肥大に最適なトレーニング方法【鍛え方の最適解がわかる 10万論文筋トレ】

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筋肥大に「完全追い込み」は不要

「あと2回だけできそう」が筋肥大の最適強度

 「筋肉は、限界まで追い込むことで大きくなる」という人がいます。体力の限界までトレーニングすることが正解なのか否かを知るために、まずは2024年にフロリダ・アトランティック大学から発表された、限界まで追い込むトレーニングが筋力、筋肥大に及ぼす影響を調査したメタ分析から見ていきましょう。

 この研究は、「RIR」という筋トレの強度を決定する指標を使用し、RIRが限界まで近づくことで筋力や筋肥大率がどう変化するのかを分析したものです。RIRというのは、Repetitions in Reserve の略で、「残りの反復回数」を表しています。要は、あと何回できそうなのかを数値化した、トレーニング強度設定の指標のひとつです。

 例えば、あと1回も上がらない限界と感じたらRIRは0、あと2回できそうならRIR2とし、限界までどれくらい近づいたのかを感覚的に評価します。

 研究の結果、筋力増強率に関しては、RIRの違いによる影響の上昇は確認されず、一方で筋肥大率に関しては、RIRが0に近づけば近づくほど筋肥大効果は大きくなり、限界までトレーニングを行うことで筋肥大率は向上しやすくなることが明らかになりました。限界まで追い込むことですべての線維が活性化しやすく、筋タンパク質の合成率も上がりやすくなるので、筋肥大を目的としたトレーニングでは追い込む必要があるのです。

RIR(残りの反復回数)=あと何回できそうかを数値化。
RIR0 = もう1回も上がらない、RIR2(5)=あと2回(5回)ならできそう。

 では、完全に追い込むオールアウト状態と若干の余力を残す追い込みでは、どれくらい筋肥大率に違いが生じるのかを検証したのが、2025年、ニューヨーク市立大学のリーマンカレッジから発表されたデータです。筋トレ歴のある42名を対象に、週2回のトレーニングを8週間、合計9種目を各1セットずつ実行する条件下で、「RIR0まで追い込むグループ」と「RIR2まで追い込むグループ」に分けて、筋肥大率や筋力増強率、パワー、筋持久率の変化について分析が行われました。その結果、筋力増強率に関しては先ほどの研究と同様、追い込みによる有意差は確認されませんでしたが、筋肥大率に関しては、両群ともに有意な筋肥大が確認されました。

 効果量は測定部位によっても異なり、もっとも効果量の大きかった部位ではRIR0まで追い込むことで+9.5%、RIR2の余力を残すことで+4.6%という結果でしたが、測定部位を考慮せずに全体的な筋肉量の増加で分析すると、両群ともにほとんど差はないという結果でした。つまり、完全に追い込むことで若干筋肥大率は上がりましたが、その差はごくわずかで、RIR2くらいの余力を残してやめてしまっても、ほぼ同様の筋肥大は確認されるというわけです。パワーと筋持久力についても同様で、筋トレでは追い込むトレーニングが有効ですが、完全に追い込む必要はないというのが現状の科学の結論です。

 ただし、この追い込むトレーニングには大きな注意点がひとつあります。それは、トレーナーつまり監視者の存在です。毎回、しっかり追い込むトレーニングができていることを第三者の目でチェックすることが重要なのです。

 実際、2020年のイギリス、ソレント大学の研究では、自己判断でRIR0の限界までトレーニングを行ったところ、実際には残り2回の余力を残して限界だと認識をしていたというデータがあり、ひとりでRIRの強度設定をすると平均で2回分、限界を過小評価することが明らかになっています。つまり、トレーナーをつけずにトレーニングを行うと、ひとりでは正しい判断ができにくくなり、自分が思っているよりも弱い強度になってしまうのです。そのため、トレーナーをつけない場合は、この後に紹介する正しい筋トレ強度の設定を行った後にRIR2のトレーニングを行う必要があります。

正しい強度設定について

 筋トレで効率的に成果を得るためには、正しい強度を設定すること、つまり、客観的な数値化された強度を決めていく必要があります。代表的な指標には「RM」と「RPE」というふたつの指標があり、このふたつを併用することで自分に適切な強度がわかります。

 RMとは、Repetition Maximum の略で、「最大反復回数」を意味します。ある重量に対して最大何回持ち上げることができるかで、自分の運動強度を判断する方法です。

 例えば、ギリギリ1回だけ持ち上げられる重さを1RMと表し、10回なら10RMとなります。まずRMが頻繁に用いられる理由としては、表のように1RMに対する挙上回数の目安が決まっていて、1RM100%の場合は1回、1RM90%の場合は3~4回、1RM80%の場合は7~8回というように、1RMのパーセンテージによって目安の挙上回数が決められていて、わかりやすいことがあげられます。筋肥大、筋力増強を効率化させる10回が限界という強度は1RM75%と表現されます。

RM(最大反復回数)=ある重量を何回持ち上げられるかで自分の運動強度を判断。
全力で1回だけ挙げられる重量を「1RM」とし、この重量を最大筋力とする。

 ただし、このRMには筋線維タイプによる個人差という問題があります。遅筋線維であるタイプⅠ線維の筋肉が多い人や反対に速筋線維であるタイプⅡ線維の筋肉が多い人の場合は、強度設定をしても個人差が大きく、人によって実際の回数に乖離が出てしまうのです。そのため、強度設定にはRMだけでは不十分で、RPEの概念も必要になってきます。

 RPEとは、Rating of Perceived Exertionの略で、今扱っている強度が自分にとってどれくらいのキツさかを数値化する「自覚的運動強度」のことです。RPEには最大が10のものと20のものがありますが、筋トレでは一般的に前者が使われます。RPE10は、あと1回も持ち上げられず重量も増やせないという感覚、RPE9があと1回、RPE8ならあと2回くらいはなんとかなりそうという感じです。

 例えば、1RM75%の10回が限界という重量でセットをこなし、10回が終わった後にRPEが8以上であれば、中等度の最適な負荷ということになります。

 つまり、ジムで自分の最適な強度に設定するときは、一度1回が限界の1RMを試し、そこに0・75をかけて1RM75%の重量を算出します。そして1RM75%の強度で10回行ってRPEを評価し、RPEが8以上であれば適切な強度ということになりますし、RPEが7以下であれば、重量を重くする、あるいは1セット11回にして強度を上げることで最適な強度をつくり出すことができます。

RPE(自覚的運動強度)=自分の主観が基準なので、同じRPEで回数や重量が増えるといった成長がわかりやすく、体調に合わせて回数を調節できる。

結論

✓ 肥大においては、RIR2でも、RIR0とほぼ同じ効果が得られる
✓ 1RM75%の重量を算出し、その強度で10回行い、RPE8以上であれば最適な強度となる

【出典】『鍛え方の最適解がわかる 10万論文筋トレ』著:理学療法士・パーソナルトレーナー 論文男・