ただの冗談だったのに…年収560万円・55歳会社員が妻から三行半、家族にぎやかに暮らした家に“1人ぽつん”。原因は悪意なき「見た目いじり」
子どもが独立し、夫婦ふたりの生活が始まった50代。静かな日常が続くと思っていた矢先、妻から突然告げられた「離婚したい」のひと言。発端は、あくまで冗談のつもりの「言葉」だった――。見ていきましょう。
冗談だったのに…悪気のない「見た目いじり」の果て
息子2人が独立し、夫婦ふたりの生活が始まったのは、50代に入ってからでした。夫の亮太さん(55)は地方出身、妻の美和さん(53)は結婚を機に夫の地元へ移り住み、家庭を支えてきました。
話題の中心はいつも息子たち。学校や進路、友人関係の話でにぎやかでしたが、夫婦だけで向き合う時間はほとんどなかったと言っても過言ではありません。子どもが家を出ると、途端に家は静かになりました。
それでも、夫婦2人の生活がずっと続く――亮太さんはそう思っていました。しかし、そんな日常は数ヵ月後に終焉を迎えたのです。
土曜日の昼下がり、リビングでテレビを見ていた亮太さんに向かって、美和さんが静かに切り出しました。
「子育ても終わったし、離婚したいの」
亮太さんは耳を疑いました。冗談だろう、と一瞬笑いかけましたが、美和さんの表情は真剣そのものでした。理由を尋ねると、返ってきた言葉は思わぬものでした。
「ずっとあなたに言われていたこと。もう、うんざり」
美和さんが妊娠を機に体重が増えた頃から、亮太さんはこんなことを言うようになっていました。
「でぶだな〜」
「詐欺だよ、結婚前と全然違うじゃん」
こんな「見た目いじり」を繰り返す夫。夫にとっては夫婦だから言える軽いコミュニケーションのつもりでした。しかし、美和さんは元々見た目にコンプレックスを抱えていたこともあり、「冗談でも笑えないからやめて」と言っていたといいます。
しかし亮太さんは「ノリ悪いな」と受け流し、そのうち息子たちもそのマネをするようになりました。それだけではありません。夫は「女は感情的やから困る」「 これ、ちょっとお前には難しいと思う」など、“女は下”と思っていることが透けて見える言葉を連発。
一方、美和さんが“冗談”で夫の見た目や発言に何か言おうものなら、何倍も言い返してききます。美和さんは口を閉ざすようになりました。
夫が知らない間に広がっていた「亀裂」
夫の年収は約560万円、美和さんは420万円。美和さんは、子育てに追われながらパートで働き、徐々に仕事の幅を広げていき、正社員になっていました。家計を支えながら着々と「1人で生きる道」を作っていたのです。
亮太さんは慌てて謝罪。「悪気はなかった」と繰り返しました。しかし美和さんは静かに首を横に振ります。
「もう遅いわ」
数日後、美和さんは家を出ました。最低限の荷物を持って別居が始まったのです。妻の収入を失えば、住宅ローンの返済が滞ることも予想できます。洗濯や掃除が滞り、みるみる汚くなる部屋に、お総菜やお弁当で済ます食事。
かつては家族4人でにぎやかに暮らした家でしたが、今は1人。たとえ離婚を拒否しても、もう妻が戻ることはないかもしれない。「帰ってきてくれ……」静まり返った家で呟くしかありませんでした。
子育てが終わった後、定年前後…夫婦のすれ違いが一気に顕在化
令和5年「司法統計年報」の婚姻関係事件数(申立ての動機別)をみると、離婚理由のトップは男女ともに「性格が合わない」であり、日常の価値観や会話のズレが積み重なって離婚につながるケースが非常に多いとされています 。
また、子育てが終わった後や夫の定年前後の離婚、いわゆる「熟年離婚」も増加傾向にあり、20年以上の結婚生活の後に離婚する割合が過去最高となっているというデータ(厚生労働省・人口動態統計)もあります 。
亮太さんのケースで壊れていったのは、外見への言葉もそうでしたが、「嫌だ」と伝えても改められなかった日常でした。子どもが去ったあとに残るのは、夫婦2人の関係だけです。その時に「まさかの事態」に陥らないために、お互いに日常の言葉や態度をときどき振り返ることが必要なのかもしれません。

