一部の人は「寒さ」でアレルギーが起きてしまう、その症状や治療法は?

特定の食品や花粉に対してアレルギーを起こす人がいることはよく知られていますが、一部の人々が「寒さ」にアレルギー反応を示すことはあまり知られていません。「寒冷蕁麻疹(じんましん)」とも呼ばれる寒さアレルギーについて、イギリスのランカスター大学で解剖学教授を務めるアダム・テイラー氏が解説しました。
Allergic to the cold? It’s a real thing and it can even kill

寒冷蕁麻疹を患う一部の人々は、皮膚が寒さにさらされると免疫システムが誤作動を起こし、蕁麻疹・腫れ・痛みといった症状を示します。中には倦怠(けんたい)感・発熱・関節痛といった症状を訴える人もいて、場合によっては生命を脅かすアナフィラキシーショックを起こす場合もあるとのこと。
1792年に始めて寒冷蕁麻疹の存在が報告され、現代ではおよそ1万人に6人というかなり低い割合で発症すると推定されています。女性は男性より2倍も発症しやすく、平均発症年齢は20代前半であるとわかっていますが、中には2歳の子どもが発症するケースも報告されています。幸いなことに寒冷蕁麻疹を患う人の24〜50%は数年かけて症状の改善、あるいは完全な回復が見込めるとされています。
寒冷蕁麻疹を発症するトリガーとなるのは皮膚が冷やされることですが、原因は寒い天候だけでなく、水泳や冷たい物体への接触、アイスや冷たい飲み物の経口摂取などでも症状が出ます。テイラー氏は、寒冷蕁麻疹は麻酔薬によって体温が下がり、意図的に室内が冷やされる外科手術を受ける患者にとってリスクになると指摘しました。

寒冷蕁麻疹には主に2つの種類があります。最も多く見られるのは症例の約95%を占める「原発性寒冷蕁麻疹」で、ごくまれに遺伝的要因が関連しているほかは、ほとんどの症例で原因が不明です。もう1つが残り5%を占める「二次性寒冷蕁麻疹」で、これはエプスタイン・バール・ウイルスやエイズウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルスなどへの感染やリンパ腫と関連しています。
原発性寒冷蕁麻疹を発症する理由は不明ですが、そのメカニズムに肥満細胞が関わっていることがわかっています。肥満細胞は皮膚を含む体組織において、最初に外的刺激に反応して免疫系に危険信号を伝達する見張りとしての役割を持っています。
一説によると、寒冷蕁麻疹の患者は寒さにさらされることで、自分の体組織に免疫反応を引き起こすautoallergens(自己アレルゲン)が賛成されると考えられています。これによって肥満細胞が活性化すると、免疫細胞への警告として機能するヒスタミンという物質が放出されるとのこと。
ヒスタミンが放出されると、その部位の血管が拡張して血漿(けっしょう)成分が漏れやすくなり、結果として腫れやかゆみなどを引き起こします。通常、この反応によって免疫細胞が血液から押し出され、周囲の組織に入り込んで病原体などと戦うことができますが、寒冷蕁麻疹の場合は単なる誤報なので意味がありません。

医師は寒冷蕁麻疹が疑われる患者の前腕に氷を当てて、氷を取り除いた後の反応を観察することで寒冷蕁麻疹かどうかを診断します。約20%の症例ではアナフィラキシーが引き起こされるため、この検査は医療専門家によって行われる必要があるとのこと。なお、すべての患者が顕著な反応を示すわけではなく、温暖な地域に住む人はそもそも気温が低くならないため、本当の患者は診断されているよりも多い可能性があります。
患者が寒冷蕁麻疹であるとわかった場合、医師は測定機器の可用性に応じて「皮膚が冷気に反応して症状が現れるまでの速さ」や、「症状が引き起こされる可能性が高い温度」などを測定します。こうした情報は、患者が寒冷蕁麻疹の発症を防ぐ上で役立ちます。
寒冷蕁麻疹の対策としては、その他のアレルギーと同様に抗ヒスタミン薬を飲むことが挙げられますが、多くの寒冷蕁麻疹患者には標準的な抗ヒスタミン薬の容量では不十分です。場合によっては標準容量の最大4倍が必要になるそうですが、一部の抗ヒスタミン薬には鎮静作用があるため服用には注意が必要です。副腎皮質ホルモン(コルチコステロイド)の投与が有効な場合もありますが、長期間の使用には体重増加や消化不良、気分の変化といった副作用が伴うとテイラー氏は指摘しました。
寒冷蕁麻疹の治療には、肥満細胞の活性化に関与する免疫グロブリンEを標的とするオマリズマブが効果を発揮します。また、数時間あるいは数日間かけて皮膚を徐々に低温にさらし、アレルギー反応とヒスタミン放出を抑制する脱感作療法が有効だとする研究結果もありますが、ほとんどの研究は小規模なものだとのこと。
テイラー氏は、「一部の人々にとって寒さが単に不快なだけではなく、真に危険なものであることを忘れてはいけません。寒冷蕁麻疹を理解し、認識することが命運を分けることになるかもしれません」と述べました。
