2025年のマーケティングおよびメディア業界は、急速な技術進化と市場構造の変化が重なり、これまで当たり前とされてきた前提が揺らぎ始めた1年だった。とりわけAIの進化は、ツールの域を越え、マーケティングにおける生産性と創造性の前提を書き換えつつある。加えて、検索、ソーシャル、コマース、生成AIといった接点が絡み合い、顧客体験の「入り口」そのものも分散・再編されはじめた。Digiday Japan恒例の年末年始企画「IN/OUT 2026」では、当メディアとゆかりの深いブランド・パブリッシャーのエグゼクティブたちにアンケートを実施。2025年をどのように総括し、そして2026年に向けてどのような挑戦とビジョンを描いているのか。その声を紹介する。アイティメディアで、BtoBメディア事業本部 専務執行役員を務める多田頼正氏の回答は以下のとおりだ。

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――2025年のもっとも大きなトピック・成果は何ですか。

2025年は、AIが生成したRFPによる案件相談が具体化するなど、マーケティングプロセスのAI化が現実のものとして急速に進展した1年でした。メディア環境では、検索トレンドの変化により過去記事への流入減に直面した一方、膨大なコンテンツ資産がAIの学習データとなり、AI回答上で「信頼できる情報源」として推奨されるというプラスの側面も顕在化しました。事業面では、データ戦略「Campaign Central構想」を具現化し、10月にクライアントの皆さまに向けて中核機能「パイプラインダッシュボード」の提供を開始しました。約190万人の会員ログを活用してリードの動向や関心のスパイクを可視化し、リードの価値を「点」から「線」へ変革する体制を整えました。

――2026年に向けて見えてきた課題は何ですか。

AI検索やLLMの台頭により、クライアントの皆さまの「自社サイトへの検索流入減」が深刻化しており、メディアとしてこれを補う「高品質なトラフィック」の提供が問われています。AIによる情報収集や投資行動の変容に対し、我々自身が技術トレンドを捉え、スピーディーにソリューションを展開することが不可欠です。さらに、メディアも転換点にあります。従来の検索流入に依存したモデルからの脱却と、AI時代に即した新成長モデルの確立が急務です。エンゲージメントやロイヤリティといった「質」へ軸足を移すため、編集体制やKPIのあり方を抜本的に刷新することが、2026年の大きな課題です。

――2026年にチャレンジしたいことを教えてください。

2026年は、「Campaign Central」を中心としたデータ活用を推進し、AI環境下での課題解決を強力に支援します。同時に、メディア運営の観点では、表面的な数値ではなく「定着読者」を基盤とした持続可能な成長モデルの確立に挑みます。スポット的な接点ではなく、メディア自体への信頼と体験価値を醸成し、定期的に訪れるファンを増やすことが重要です。我々はAIを脅威ではなく「パートナー」と捉えています。「メディアの革新を通じて情報革命を実現し、社会に貢献する」という企業理念の実現に向け、オープンなスタンスで発信力を高めていきます。AIが進化しても「編集力」と「オーディエンスデータ」の価値は不変です。高品質なコンテンツを基盤に、データ、動画、クリエイティブなどの新しい武器を駆使し、読者の信頼獲得とクライアントの成果にコミットしていきます。