【フレイル予防座談会】元厚生労働事務次官・辻哲夫 × イオン責任者・久木邦彦 × キューピー執行役員・加納優子 ×マルタマフーズ社長・服部太郎
加納 そのイオンさんと当社も連携し、しっかり食べるという行動変容を狙った取り組みを行っています。店頭でのフレイル予防につながる食の提案をし、実証実験という形で行っているのですが、実際にフレイル予防に対する意識が上がったという検証結果も出ています。
服部 学びを提供するという点で言えば、当社は食育にも力を入れています。食育というと子どもたちを対象に学校や保育園で行うケースが多いのですが、当社は高齢者施設でも高齢者の方々に向けて食育を行っています。
高齢者の方々も食育を学ぶことによって、自らの食べ物に興味関心を持ち、フレイル予防という学びにもつながります。
─ 各社の取り組みを聞いた上で、辻さんが考えるキーワードとは何になりますか。
辻 はい。「日常生活圏」というキーワードを大切にしたいと思います。イオンさんはより良く暮らせる地域づくりを目指し、「イオン生活圏」という概念を掲げておられます。
そして、イオンの店舗で開催される顔と顔の見える関係性の下でのイベントを通して同じ価値観を共有すると。そういう生活圏を取り戻すという考え方ですね。
実は高齢社会における国の社会保障政策の基本コンセプトというのは「地域包括ケア」で表されているように、老いていく高齢者を含む多世代が共生し、できる限り元気で、たとえ弱っても安心できる生活を共有できる自己完結した日常生活圏単位のまちづくりが必要です。
これができなければ高齢者は施設や病院に移り、空き家が増え、地価も下がり、多くの地方の地域や首都圏郊外の団地は消滅しかねない。したがって、自己完結した日常生活圏とそのネットワークという概念をしっかり持った国をつくること、これが新しい日本の価値を生み出す1つの道だと私は考えています。
モールが地域活動の拠点に
─ 小売業の役割は非常に重くなってきたと思います。
久木 そうですね。我々は地域の生活拠点になっていこうということで、モノを売るだけではなく、例えばイオンモールであれば、モール内をウォーキングする場などに活用していただいています。
モール内であれば暑くても寒くても冷暖房完備ですから、安全・安心なウォーキングが可能です。こういった場所の提供ができると考えています。
他にも朝のラジオ体操をして朝食を皆で摂る場にもしていただいています。地域活動の中で私どものモールや店舗に集まっていただくことで、社会参加も実現できます。地域によってはアカデミアと連携して、データの分析もしています。
駐車場で盆踊りや映画鑑賞なども行うなど、地域の要望に合わせた取り組みができると思っています。
辻 これは本質的な話です。かつて「向こう三軒両隣」といった濃密な地域の関係がありましたが、今はもっと多様化した様々なネットワークで成り立っています。大切なのはお互いが望めば直接に顔を合わせられるような日常性の担保されたネットワークです。
これを新しいコミュニティ空間としてつくっていかなければなりません。
そこで私が強調したいことはGDP(国内総生産)ありきではないのではないかという投げかけです。私は決してGDPの意義を否定しているわけではなく、市場主義の発展なくして世界の発展はないと思っています。
ただ、たとえGDPが低くなっても国民がニコニコ笑って楽しそうに過ごしていることも大事な価値ではないかと。だからこそ、インバウンドも増えているのです。
