国民の意識や行動変容には、私たちが単独企業として取り組むには限界がありますので、やはり他の製造企業、流通企業や行政との連動が不可欠であると思っています。

 ─ 食の提供方法としては、高齢者向け給食もあります。この領域の老舗でもあるマルタマフーズ社長の服部太郎さんの課題認識を聞かせてください。

 服部 まず当社は1961年に大阪で創業し、企業向け弁当給食の製造・配食をスタートさせました。現在では要介護老人福祉施設や学校、保育園などで給食サービスなどの総合的なフードサービスを展開しています。

 当社のフレイル予防にかかわる価値としては栄養があります。これは我々の仕事の基です。加えて、高齢者の方々に能動的なコミュニケーション習慣を身につけていただけるように、社会参加にも注力しています。

 ─ 栄養だけでなく社会参加にも取り組んでいるのですね。

 服部 はい。例えば、当社は2017年から先ほどの東京大学高齢社会総合研究機構での学びを通じて、地元の神社や社会福祉協議会、NPO法人と共に子どもから高齢者にわたる多世代が交流する「共に参加しながら楽しく食べる共食サービス」の場を企画し、実践しています。

 また、以前から取り組んでいるのが地域防災です。実は地域防災はフレイル予防との親和性が高いのです。

 本振興会加盟各社と共同でローリングストック(普段の食品を少し多めに買い置きした上で賞味期限を考えて古いものから消費し、消費した分を買い足すことで、常に一定量の食品が家庭で備蓄されている状態を保つための方法)を活用して日常の食生活の栄養バランスを見直したり、隣近所の方々と日頃から一緒に避難所までお散歩しながら交流する身体活動と社会参加の習慣化を提案させていただいています。


 高齢者が元気になる仁淀川町

 ─ 防災拠点もあらかじめ知ることができますね。

 服部 そうです。歩きながら場所も把握することができます。今はこれを大阪で行っているのですが、参加者の方々には非常に喜んでいただいており、皆さん、生き生きとされています。

 ─ 地域というキーワードが出ました。都市部では人と人とのつながりが薄れています。

 辻 大きな問題です。農業社会の残っている地方でさえ、自治会が弱くなってきているとも聞いています。そこで重要になってくる人のつながりを生み出すきっかけづくりに、今やどの地域でも共通の課題であるフレイル予防を持ち込めないかと考えています。

 ─ どこかモデルとなるような事例はありますか。

 辻 高知県の仁淀川町が素晴らしいモデルです。高齢化率が6割近いこの町で住民が自らフレイル度をチェックし、フレイルを勉強して危機感を抱く一方、老いは遅らせることができると気づき、高齢者同士がお互いに頑張って弱らないようにしようと運動を始めたのです。

 現に多くの高齢者が元気になり、フレイル予防を通したまちづくりに向かっています。

 ─ 成功事例が出てきているのですね。イオンも自治体との連携を進めていますね。

 久木 千葉県柏市で行政と連動し、当社の「イオンモール柏」で、フレイル予防に関するイベントや自分がどの程度フレイルの状態になっているかどうかを測定して学ぶ機会を提供しています。

 柏市にはフレイルチェックの運営を行うボランティア「フレイルサポーター」が養成されていて、彼らの活躍がとても大きいです。

 ─ そういった店頭を通じた取り組みができるわけですね。