ほったらかしで調理できる自動調理鍋の性能がどんどん上がっている。発売から10年を迎えたシャープの「ヘルシオホットクック」と、今年発売されたティファールの「ラクラ・クッカー プロ」の2製品を、デジタル&家電ライターのコヤマタカヒロさんが比較検証した――。
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ティファールのラクラ・クッカー プロ。直販サイトではブラックも選べる - 筆者撮影

■かき混ぜ機能付きで3万円台の低価格を実現

近年、普及が進んでいる家電の1つが自動調理鍋だ。コンロの代わりに電源を使い、鍋に食材と調味料を入れるだけで自動で料理ができる。プログラム機能を搭載し、メニューを選ぶだけで調理が可能。火を使わないため安全で、吹きこぼれたりする心配もない。

また、一部のメニューではスケジュール調理ができ、朝セットしておけば、夕食の時間にあわせておかずが完成する。ほったらかしで調理できる便利さが人気のポイントで、象印マホービンやシロカ、アイリスオーヤマなど、多くのメーカーから製品が発売されている。

そんな中、今年7月、新たに注目の自動調理鍋が登場した。ティファールの「ラクラ・クッカー プロ 自動調理鍋 CY3811J0」(直販価格3万8000円)だ。自動で鍋底からのかき混ぜ調理ができる「自動かき混ぜパドル」を初めて搭載した。

ティファールではこれまで2万〜3万円前後の自動調理鍋としてラクラ・クッカーを販売。そして、より多くの自動メニューを搭載した上位モデルとして5万〜7万円前後の「クックフォーミー」シリーズを展開してきた。

今回、同社では初めてとなるかき混ぜ機能を上位シリーズではなく、エントリークラスのラクラ・クッカー プロに搭載したのだ。その狙いは何なのか。

■「ほったらかし」で毎日の料理をラクにする

メーカーによると、「『失敗しないおまかせ調理』がコンセプトのクックフォーミーに対して、ラクラ・クッカーは“毎日のお料理をラクにする”ことが製品コンセプト。好みで料理の仕上がりを調整するような感覚で使えるよう、マニュアル操作が多いラクラ・クッカーにかき混ぜパドルを搭載した」という。

通常の全自動調理鍋では、プログラムにあった加熱はできるが、かき混ぜることができず、鍋底の食材と上にある食材で味染みや加熱具合にムラが出ることがあった。しかし、かき混ぜ機能があればそれが大幅に低減でき、ほったらかしで調理できるのだ。

ラクラ・クッカー プロでは、調理中にかき混ぜパドルが回転することで、食材をひっくり返したり、調味料をかき混ぜたりすることができる。さらに、炒めモードではチャーハンや焼きそば、野菜炒めなどの調理もできるのだ。

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新たに搭載したかき混ぜパドル。鍋側面の突起とあわせて、食材が転がり、混ざりやすい構造となっている - 筆者撮影

■自動調理鍋の雄は累計65万台の「ホットクック」

自動調理鍋で最も有名なのが、シャープの「ヘルシオホットクック」だ。2015年に初代モデルを発売してから10年。ラインナップを拡充し、累計販売台数65万台(2024年6月末時点)を記録するヒット商品となっている。

写真提供=シャープ
シャープのホットクック proシリーズ。左が1.6LのKN-HW16H-W、右が2.4LのKN-HW24H-B(実勢価格7万1860円)。このほか、1Lサイズや、かき混ぜ機能を搭載しないwithシリーズを用意する - 写真提供=シャープ

ホットクックが画期的だったのは、フタ裏にまぜ技ユニットを搭載し、いちはやく自動でかき混ぜる機能を搭載したことだ。ホットクックの発売以前にも自動調理鍋はあったが、ただ加熱して、煮込むだけの製品が多かった。ホットクックはかき混ぜ機能や無水調理などの機能を備えることで、自動調理鍋をワンランク上の使い勝手にアップさせた。

そしてホットクック自身もIoT対応や、別売アクセサリーとして鍋底からヘラでかき混ぜられるまぜ技ユニット「もっとクック」を用意するなど、進化を続けており、その人気は不動のものとなっている。

■「圧力調理+かき混ぜ」の両立は珍しい

ホットクックに比べてラクラ・クッカー プロの魅力は3つある。約半額なこと、圧力調理ができるので、時短になること。そして、ホットクックでは別売アクセサリーを買わないとできない、鍋底での自動かき混ぜ機能を搭載していることだ。

圧力調理モードでは、圧力調理、蒸す、無水調理、マッシュ(つぶす)、ごはん、カレー、肉じゃがの7メニューを用意。そして、通常調理でも、炒め、煮る、ベイク、おみそ汁、めん類、煮つめ仕上げの6モードが利用できる。

基本的には食材と調味料を入れてメニューを選ぶだけでいい。圧力を掛けない通常調理の場合は、フタを開けたままでも調理できる。フタは、ヒンジ式ではなく、着脱式なので、完全に取り外して使えるのも便利だ。

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全13種類のメニューを用意しており、前面の操作パネルから簡単に選択できる。操作のシンプルさも魅力の1つだ - 写真提供=ティファール

現在、圧力調理機能とかき混ぜ機能を両立している自動調理鍋は、ラクラ・クッカー プロを除くとパナソニックの「オートクッカー ビストロ NF-AC1000」(実勢価格7万4250円)しかない。性能に差はあるが、その代わりラクラ・クッカー プロは、ビストロの半額近い価格で購入できる。

写真提供=パナソニック
パナソニック「オートクッカー Bistro NF-AC1000」実勢価格7万4250円 - 写真提供=パナソニック

■無水カレーなら約7分で調理できる

実際にラクラ・クッカー プロを使ってさまざまな調理をしてみた。カレーやビーフシチュー、角煮といったメニューは圧力機能があるため、より短時間で食材をやわらかく調理できる。

圧力調理後は通常、圧力が抜けるまで待つ必要があるが、ラクラ・クッカー プロでは、加圧調理後、ワンプッシュで簡単操作の「圧力排出ボタン」を搭載しているため、急いでいるときは急速減圧ができるのが便利だ。このため、無水カレーなら約7分で調理可能。仕込みなど前後の時間をあわせても30分もかからない。

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ラクラ・クッカー プロで作った無水カレー。トマトの酸味とカレー粉の辛みが絶品だった。15分の予熱後、7分の加圧で完成した - 筆者撮影

■炒めながら調味料を足すことも可能

対してホットクックの「チキンとトマトの無水カレー」は65分かけてゆっくり調理する。レシピがまったく異なるため、横並びの単純な評価はできないが、帰宅後に急いで調理したいといったニーズにはラクラ・クッカー プロのほうが使いやすい。また、ラクラ・クッカー プロでも圧力を掛けずゆっくり加熱調理でき、その場合はカレールーが使える。

さらにチャーハンや野菜炒めは、フタを開けたまま調理が可能。フタの裏にかき混ぜユニットを搭載するホットクックでは、フタを開けたままでの自動かき混ぜはできないが、ラクラ・クッカー プロなら、食材を炒めながら、タイミングを見て調味料を入れることができる。

この場合は全自動にはならないが、好みの味付けにできるのがポイントだ。もちろん、煮込み料理のように最初に全部入れて全自動で調理することも可能。シーンによって使い分けることができるのだ。

■最高性能を目指すより、必要な機能を厳選

ラクラ・クッカー プロの最大の魅力はかき混ぜ機能を搭載しながら3万円台と安いこと。かさばらないコンパクトサイズなので、少人数世帯や初めて使う人にもおすすめしやすい。また、3Lサイズなので最大4人分の調理ができ、ファミリーでも活用できる。圧力調理機能を搭載しているので、ほったらかしだけでなく、時短調理ができるのもポイントだ。

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朝、セットして夜に完成させるスマート予約機能も用意。最大12時間の予約ができ、圧力調理した後に食材が傷みやすい温度帯にならないよう保温しながら調理する - 写真提供=ティファール

もちろん、先行する競合各社にも優位な点は多い。例えば、ホットクックの場合、10年間の歴史があり、メーカーだけでなく、ユーザーが生み出したノウハウやレシピ、使い方などが共有されているのが強み。ホットクックならではのコミュニティの存在が大きい。

パナソニックのビストロの場合、1285Wの高火力で200℃(ラクラ・クッカー プロは700Wで、最大150℃)で炒め調理ができるなど、基本性能が高い。また、両シリーズともにスマホアプリからコントロールできるIoT機能を備えている。ラクラ・クッカー プロにはない機能だ。

写真提供=パナソニック
パナソニックのオートクッカーBistroは鍋底かき混ぜ機能や圧力調理などの機能を搭載。高価だがその分、高性能だ - 写真提供=パナソニック

しかし、ラクラ・クッカー プロはそれらの機能を省くことで、3万円台を実現している。ホットクックやビストロが最新のiPhoneだとするなら、ラクラ・クッカー プロはiPhone SEシリーズだ。最高性能ではないが、使い勝手がいい。必要な機能を厳選して搭載したお買い得なモデルに仕上げているのが、ティファールのすごさなのだ。

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コヤマ タカヒロ(こやま・たかひろ)
デジタル&家電ライター
1973年生まれのデジタル&家電ライター。家電総合研究所「カデスタ」を主宰。大学在学中にファッション誌でライターデビューしてから約30年以上、パソコンやデジタルガジェット、生活家電を専門分野として情報を発信。家電のテストと撮影のための空間「コヤマキッチン」も構える。企業の製品開発やPR戦略、人材育成に関するコンサルティング業務も務める。
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(デジタル&家電ライター コヤマ タカヒロ)