3人に1人が使う TikTok 、平均年齢39.2歳へ上昇。ブランド活用のチャンス拡大──博報堂2025年調査

記事のポイント TikTokユーザーは3人に1人に達し平均年齢39.2歳、学び直しや世代間交流を促進するコンテンツも増加している。 TikTokユーザーの年間支出は約11.6万円と他SNSと比べて高く、リアルイベントや音楽ジャンルの支出増を後押ししている。 「おすすめ」フィードが偶然の発見と衝動買いを促し、コミュニティ感あるコンテンツが「TikTok売れ」を生む要因になっている。
物価高や国際情勢の不安が重なり、先行きの見通しが難しい2025年のいま、人々はどんなことに興味を持ち、何にいくら支出しているのか。博報堂DYホールディングスと博報堂の共同研究プロジェクトであるコンテンツビジネスラボは、全国15〜69歳の男女約1万人を対象に、「コンテンツファン消費行動調査2025」を実施した。コンテンツファンの行動を、「興味」「利用」「支出」「ファン」の4行動に分類し、「誰が」「何に」「いくら」支出しているかを探った同調査では、主要プラットフォームにおけるユーザー動向も分析。そこでは、いまや3人に1人がTikTokユーザーで、その平均年齢も39.2歳に上昇したことが明らかになった。年々利用者が増え、年齢層も広がっていくTikTokユーザーの実像やコンテンツ消費の実態について、コンテンツビジネスラボでエンタメ領域のコンテンツ消費行動を研究しつつ、マーケティングプランナーとしても活躍する谷口由貴氏に、データから導き出される最新状況を聞いた。コミュニケーションツールとして「世代間交流」も促進
2017年のローンチ以来、毎年ユーザー数を増やしているTikTok。学生のみならず20代の社会人層にも浸透し、若年層に人気のプラットフォームとして地位を確立した2019年と比較すると、2025年の週1以上の利用者は約10倍、月1以上は約7倍に増え、3人に1人がTikTokユーザーであることが調査データからわかった。
TikTokユーザーは、10〜20代比率の存在感は引き続き強いものの、中高年層にも広がりを見せ、平均年齢は39.2歳にまで上昇。それに伴い、歴史や投資など専門家による学び系コンテンツも増えているという。プラットフォームの平均年齢が上がると、懸念されるのが「若者離れ」。ところが、TikTokはもっとも若年層比率が高いプラットフォームであり続け、今なお若者から支持されている。その理由を谷口氏は、「強力なパーソナライズ機能にある」と指摘する。たとえ中高年のユーザーが増えても、「おすすめ」フィードに表示されるのは、変わらず自分の興味に合ったコンテンツが中心だ。そのコンテンツも常にリフレッシュされ、飽きさせない仕組みになっている。平均年齢層が上昇したところで、TikTokで見られるコンテンツが変わってしまうわけではないのだ。
一方、ユーザーの年齢層が広がったことで、家族間のコミュニケーションツールとしても使われているようだ。子どもから親へ「このレシピでご飯作って!」と動画をシェアしたり、親が子どもの好みそうなコンテンツを見つけて送ったりすることで「世代間交流」を促進する。「そうした交流が新たなジャンルを発見することにつながり、それがまたユーザーを増やす一因となっている」と谷口氏は語る。TikTokは「リアルイベントとの親和性」が高い
次に興味深いのは、コンテンツに対する支出金額。今年の全体年間平均は、2011年の調査開始以来、過去最高の1人あたり約8.5万円で、特にリアルイベント市場と音楽ジャンルへの支出が伸びた。前述のようにTikTokユーザーは比較的若年層比率が高いことから、可処分所得は少ない傾向にある。にもかかわらず、TikTokユーザーのコンテンツに対する支出金額は約11.6万円と、ほかのプラットフォームと比較してもっとも高い。その要因を問うと、谷口氏はまず、エンタメ要素の強いTikTokは、リアルイベントとの親和性が高いことに触れ、「おすすめ」フィードに流れてきたことが参加のきっかけになり、リアルイベント市場と音楽ジャンルの顕著な伸びをTikTokが後押ししている可能性についても言及した。「暇つぶしツール」から「日常使いのプラットフォーム」へ
加えて、TikTokはユーザーによる1日あたりの利用時間が約1時間と、ほかのプラットフォームより長いことも注目に値する。常に興味あるコンテンツが「おすすめ」フィードに表示されるレコメンド精度の高さに加え、シームレスなUXが没入感をもたらす。見ているコンテンツには自分と感性の似たユーザーが集まることから、コメント欄がコミュニティのような一体感を生み出し、「自分の居場所」と感じるユーザーも多いようだ。また、飲食店や旅行先のホテルなどで「何が体験できるか」を、TikTokならリアルなユーザー視点の動画でわかりやすく短時間に知ることができる。タイパのいい「体験を調べられる検索エンジン」として使う人が増えていることも、利用時間の長さにつながっているだろう。さらに、利用時間を押し上げている理由として、LIVE配信も考えられる。長尺のLIVE配信と短尺のコンテンツを併せ持つ点もTikTokの強みである。「空き時間に利用する『暇つぶしツール』から『日常使いのプラットフォーム』へ変化している」と谷口氏は感じているようだ。「自分界隈のバズ」を手っ取り早く知ることができる
最後に、「TikTok売れ」を裏づけるデータにも触れておこう。今年の調査によると、TikTok利用層のうち、SNSなどの動画コンテンツを見て「ふと欲しくなったものを購入したことがある」と回答したのは39.2%(全体差分+10.6ポイント)で、「今まで興味がなかったものを、急に欲しいと思うようになることがある」は36.4%(同+9.2ポイント)だった。TikTokが購入意欲を刺激し、認知から購入までのファネルを一気に進める役割を果たしていることがこの結果からも見てとれる。こうしたTikTok売れが起こる理由について、谷口氏は「一般的なSNSや動画プラットフォームだとインフルエンサーへの信頼に基づく購買が多いのに対し、TikTokでは「おすすめ」フィードが『偶然商品と出会う場』として機能している」ことを挙げ、「自分と感性の似たユーザーコメントを通して、大衆的なバズではなく『自分界隈のバズ』を手っ取り早く知ることが衝動的な購入につながりやすい」と分析する。人為的な広告ではなく自然なコミュニティ感のあるコンテンツが好まれることや、クリエイター起用が効果的であることなど、ブランドがTikTokでプロモーションする際に留意すべきポイントは、従来と変わらない。だが、ユーザーの平均年齢が上がり、学び系コンテンツを提供する専門家などクリエイターの選択肢が増えたことで、若年層をターゲットとするブランド以外にも、TikTokをマーケティングに活用するチャンスは広がってきた。
谷口 由貴/CXクリエイティブ局 コンテンツビジネスラボ 2017年博報堂入社。同年より研究開発局にて研究員として若者研究やARクラウドを用いたサービス開発に従事。また、コンテンツビジネスラボのメンバーとしてエンタメ領域のコンテンツ消費行動研究を行い、音楽分野担当として音楽ヒット分析等を行っている。2020年よりマーケティングプランナーとしてサービス開発の戦略立案を行う。2025年よりCXクリエイティブ局所属。
