幸せに働くためにはどんなことに気を付ければいいか。著作家の勝木健太さんは「他者から良い評価を与えられてきた人ほどモヤモヤ悩んでしまうことがある。大事なのは人生の重心を他者ではなく自分に置くことだ」という――。

※本稿は、勝木健太『「いい会社」のはずなのに、今日もモヤモヤ働いてる』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/kazuma seki
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■あなたの身近にいる「ハイスペックキャリア迷子」

「いい高校」「いい大学」そして、「いい会社」。親が喜び、友人が羨む、華やかな肩書き――

だが、その完璧な経歴の裏側に、言葉にできない違和感を抱えている。それが、「ハイスペックキャリア迷子」だ。

「ハイスペックキャリア迷子」と聞くと、東大卒や外資系企業のエリートのような、いわゆる“ハイスペック”を想像するだろう。

しかし実際は、それだけに限らない。優秀で、「正解を選び続けてきた」人すべてが、将来、「ハイスペックキャリア迷子」になる可能性を秘めている。その3つの特徴を紹介していこう。

特徴1 「いい会社」にいるのに、「自分らしさ」がない気がする

収入もポジションも、人が羨む水準にある。お祝いの言葉も届くし、SNSの“いいね”も多い。

それなのに――自分の内側だけが、妙に冷えている。

「こんなの、贅沢な悩みだ」と思ってしまうこともあるだろう。しかし、そのようなことは一切ない。むしろ、「正解」とされるルートを忠実に走り抜けた者が、必ずたどり着く地点である。

履歴書だけ見れば、成功者だ。でも、自分のままでいられる場所が、どこにも見つからない。

■「すごいね」と言われると悲しくなる

特徴2 「優秀」なのに「ゆるやかな不幸」を感じてしまう

「すごいね」「うまくいってるね」

ハイスペックキャリア迷子の迷いは、皮肉にも「他者から良い評価を与えられた瞬間」に生じることが多い。

偏差値競争、大企業信仰、肩書き主義――

「正解のルート」を踏むことが、長らく「優秀さ」の証とされてきた。だからこそ、問いが生まれるのだ。「これは、本当に自分の人生なのか?」と。

真面目に、誠実に、期待に応えてきた人ほど、この構造に深くからめとられていく。

「このまま進んで、本当に幸せになれるのか?」

そんな疑問がよぎった瞬間、気づけば迷子になっている。地図どおりに歩いてきたはずなのに。

これは決して、あなたが脆いからではない。社会構造の副作用に巻き込まれているにすぎないのだ。

特徴3 今得ている評価が「縛り」になって動き出せない

選択肢はある。「あなたなら何でもできる」と、ずっと言われてきた。

なのに、なぜか動けない。頭では「これだ」と思えても、足がすくむ。

可能性に囲まれているのに、どこにも進めない。

選べる自由があるからこそ、選ぶのが怖くなる。

「いい会社」にいることが足かせとなる。

空気のように漂う期待と評価が、選択の幅を目に見えない形で狭めていく。

■自分の人生を取り戻す方法

筆者はこの3つの特徴に当てはまる人々を「ハイスペックキャリア迷子」と名づけ、代表的な7つのタイプに分類した。

出典=『「いい会社」のはずなのに、今日もモヤモヤ働いてる』(ダイヤモンド社)

この「タイプ」というレンズを通して見えてくるのは、自分がどこで立ち止まり、何に過剰適応しているのか――その混乱の構造である。

混乱の正体に名前がついたとき、私たちはようやく、自分の人生を再び選び直すことができる。

「あなたは今、どの迷路に立ちすくんでいるのか?」。その現在地を見つけ出すことが、本稿の目的である。この7つの迷子のどこかに、きっとあなた自身の現在地が見つかるはずだ。

これは、あなたに答えを押しつけるものではない。ましてや、あなたの人生に終止符を打つつもりも、全くない。

熱湯の入った鍋の中にカエルを入れると、カエルはすぐに熱さを感じて飛び出すという。しかし、カエルを冷水に入れ、徐々に熱していくと……カエルは温度の変化に対応できず、かわいそうなことに、そのまま茹でられてしまう。有名な「茹でガエル」の話だ。

本稿を読み、どこかに自分の現在地を見つけざるを得なくなったとしても、落ち込む必要は一切ない。それはまだ、あなたが茹でガエルになっていないことの、揺るぎない証拠だからだ。

むしろ、あなたの中にある「問い」に光を当てることで、「ハイスペックキャリア迷子」予備軍の未来は、大きく変わっていく。

本稿は、未来の解像度を上げていくためのコンパスなのだ。

あなたが「今どこにいるのか」、その現在地を見つけたとき、あなたの人生の“主語”を取り戻すための道順が、自然と浮かび上がってくる。

著者注:たとえ、あなたに当てはまらないタイプがあったとしても、ぜひ、無理のない範囲で読み進めてみてほしい。あなたの「唯一無二性」を育むために、他のタイプの切実な悩みも知っておいたほうがいいからだ。

■「正しそうな選択」が正しいとは限らない

Type 1 モラトリアム型
つぶしが効くキャリアに、つぶされる若者たち

「少なくとも間違いではない道」――そんな選択を続けてきた。

だが、気がつけば――どれも自分の気持ちを置き去りにしていた。

履歴書に書けることは増えた。スキルもある。将来性もある。

けれど、そんな最適化の果てに手に入れたのは――どこか他人事のような場所だった。

キャリアは立派だ。けれど、気づけなかった。

――道の先に待っていたのは、自由ではなく、行き止まりだったことに。

将来を決めきれず、消極的に“正しそうな選択“を重ねていく――それが、モラトリアム型である。

「とりあえず大手」「とりあえずコンサル」「とりあえずMBA」

どれも理にかなっているし、他人が口を挟む余地などない。

「安定している」「つぶしが効く」「選択肢が広がる」

どれも正論であり、説明もつく。周囲の評価も高い。

だが、それゆえに――その選択は、やがて“目的なき最適化”となり、自分の輪郭を、少しずつ削り取っていく。

今の会社を選んだ理由を問われたとき、ふと、言葉に詰まる。

「なぜ選んだか」は覚えている。

それなのに――「今もここにいる理由」が見つからない。

人生の最短ルートには落とし穴がある

戦略コンサル、MBA、外資、メガベンチャー――

本来、肩書きは「自由に生きるため」のカードになる。

けれど、それが「自分を説明する手段」になった瞬間、キャリアは“広げるもの”ではなく、“枠にはめるもの”へと変わっていく。

職歴や学歴は、何かを実現するためにあるものだ。しかし「何者かであり続けるため」に肩書きを求めると、自分の内面は、じわじわ空洞化していく。強力な武器だったはずの肩書きが、いつしか、自分を内側から閉じ込める“殻”に変わってしまう。

社会的評価が安定しているほど、「今さら方向転換なんて」と、自分自身を縛りつけてしまう。「自分はどこに行けるのか」ばかりをモヤモヤ考えて、「自分は、どこにいたいのか?」という問いが、いつの間にか遠ざかっている。

注意 保守性は、人生から“余白”を奪う毒になる

優秀な人ほど、リスクが見える。だからこそ、失敗の可能性を潰すことに知性を使ってしまう。その優秀がゆえの慎重さで積み上げた「最も合理的な道」が、人生から“遊び”や“寄り道”を削ぎ落としているのだ。

「期待される道」を歩くことは、決して間違いではない。けれど――“その道を続ける理由”が自分の中にないまま走り続けていると、いつか足が止まる瞬間がやってくる。

朝の電車、窓に映る自分と目が合った瞬間。飲み会のあと、ひとりになった帰り道。そんな時にふとよぎる「なぜこの道を選んだのか?」という問いに、自分の言葉で答えられなくなったとき――自分の手でもう一度、人生を始め直さねばならないのだ。

そんな、簡単に答えの出ない問に向き合いながら、明日の朝に向けて、今日もきちんと、早く眠りにつこうとする――

そんな優秀さを抱えているのが、「モラトリアム型」だ。

写真=iStock.com/AH86
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■「自分の人生」を生きるために

対策 人生を「保険」ではなく「物語」に

しかし、積み重ねた道のすべてが、無意味なわけではない。けれど「やめられないから続けている」状態のままでは、キャリアは、惰性で続くものへと変わっていく。人生保険をかけ続けてばかりでは、あなたの“物語”の始まりを阻害してしまう。

――これは、自分が選びたかった人生なのか?

勝木健太『「いい会社」のはずなのに、今日もモヤモヤ働いてる』(ダイヤモンド社)

そう問い直す瞬間こそが、あなたの内側で、新たな物語の始点となる。

スペックは揃っている。履歴書に、非の打ちどころはない。けれど――どこかに、言葉にしがたい空虚さがある。この感覚に気づけたなら、あなたの人生の地図は、いつでも書き換えられる。

まずは、そのモヤモヤに名前を与えること。その瞬間から、人生の重心が「他者」から「自分」へと移動し始める。

それは、「何者かになる」ための旅ではない。ただ、「自分として」生きるための序章なのだ。

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勝木 健太(かつき・けんた)
作家
1986年生まれ。幼少期7年間をシンガポールで過ごす。京都大学工学部電気電子工学科を卒業後、新卒で三菱UFJ銀行に入行。4年間の勤務後、PwCコンサルティング、有限責任監査法人トーマツを経て、フリーランスの経営コンサルタントとして独立。約1年間にわたり、大手消費財メーカー向けの新規事業/デジタルマーケティング関連のプロジェクトに参画した後、大手企業のデジタル変革に向けた事業戦略の策定・実行支援に取り組むべく、And Technologiesを創業。執筆協力として、『未来市場 2019-2028』(日経BP社)、『ブロックチェーン・レボリューション』(ダイヤモンド社)などがある。人生100年時代のキャリア形成を考えるメディア「FIND CAREERS」を運営。Twitterアカウントはこちら。
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(著作家 勝木 健太)