「いい大学→いい会社」なのに不幸と感じる…若者にじわじわ増えている「ハイスペックキャリア迷子」の処方箋
※本稿は、勝木健太『「いい会社」のはずなのに、今日もモヤモヤ働いてる』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。

■あなたの身近にいる「ハイスペックキャリア迷子」
「いい高校」「いい大学」そして、「いい会社」。親が喜び、友人が羨む、華やかな肩書き――
だが、その完璧な経歴の裏側に、言葉にできない違和感を抱えている。それが、「ハイスペックキャリア迷子」だ。
「ハイスペックキャリア迷子」と聞くと、東大卒や外資系企業のエリートのような、いわゆる“ハイスペック”を想像するだろう。
しかし実際は、それだけに限らない。優秀で、「正解を選び続けてきた」人すべてが、将来、「ハイスペックキャリア迷子」になる可能性を秘めている。その3つの特徴を紹介していこう。
特徴1 「いい会社」にいるのに、「自分らしさ」がない気がする
収入もポジションも、人が羨む水準にある。お祝いの言葉も届くし、SNSの“いいね”も多い。
それなのに――自分の内側だけが、妙に冷えている。
「こんなの、贅沢な悩みだ」と思ってしまうこともあるだろう。しかし、そのようなことは一切ない。むしろ、「正解」とされるルートを忠実に走り抜けた者が、必ずたどり着く地点である。
履歴書だけ見れば、成功者だ。でも、自分のままでいられる場所が、どこにも見つからない。
■「すごいね」と言われると悲しくなる
特徴2 「優秀」なのに「ゆるやかな不幸」を感じてしまう
「すごいね」「うまくいってるね」
ハイスペックキャリア迷子の迷いは、皮肉にも「他者から良い評価を与えられた瞬間」に生じることが多い。
偏差値競争、大企業信仰、肩書き主義――
「正解のルート」を踏むことが、長らく「優秀さ」の証とされてきた。だからこそ、問いが生まれるのだ。「これは、本当に自分の人生なのか?」と。
真面目に、誠実に、期待に応えてきた人ほど、この構造に深くからめとられていく。
「このまま進んで、本当に幸せになれるのか?」
そんな疑問がよぎった瞬間、気づけば迷子になっている。地図どおりに歩いてきたはずなのに。
これは決して、あなたが脆いからではない。社会構造の副作用に巻き込まれているにすぎないのだ。
特徴3 今得ている評価が「縛り」になって動き出せない
選択肢はある。「あなたなら何でもできる」と、ずっと言われてきた。
なのに、なぜか動けない。頭では「これだ」と思えても、足がすくむ。
可能性に囲まれているのに、どこにも進めない。
選べる自由があるからこそ、選ぶのが怖くなる。
「いい会社」にいることが足かせとなる。
空気のように漂う期待と評価が、選択の幅を目に見えない形で狭めていく。
■自分の人生を取り戻す方法
筆者はこの3つの特徴に当てはまる人々を「ハイスペックキャリア迷子」と名づけ、代表的な7つのタイプに分類した。

この「タイプ」というレンズを通して見えてくるのは、自分がどこで立ち止まり、何に過剰適応しているのか――その混乱の構造である。
混乱の正体に名前がついたとき、私たちはようやく、自分の人生を再び選び直すことができる。
「あなたは今、どの迷路に立ちすくんでいるのか?」。その現在地を見つけ出すことが、本稿の目的である。この7つの迷子のどこかに、きっとあなた自身の現在地が見つかるはずだ。
これは、あなたに答えを押しつけるものではない。ましてや、あなたの人生に終止符を打つつもりも、全くない。
熱湯の入った鍋の中にカエルを入れると、カエルはすぐに熱さを感じて飛び出すという。しかし、カエルを冷水に入れ、徐々に熱していくと……カエルは温度の変化に対応できず、かわいそうなことに、そのまま茹でられてしまう。有名な「茹でガエル」の話だ。
本稿を読み、どこかに自分の現在地を見つけざるを得なくなったとしても、落ち込む必要は一切ない。それはまだ、あなたが茹でガエルになっていないことの、揺るぎない証拠だからだ。
むしろ、あなたの中にある「問い」に光を当てることで、「ハイスペックキャリア迷子」予備軍の未来は、大きく変わっていく。
本稿は、未来の解像度を上げていくためのコンパスなのだ。
あなたが「今どこにいるのか」、その現在地を見つけたとき、あなたの人生の“主語”を取り戻すための道順が、自然と浮かび上がってくる。
著者注:たとえ、あなたに当てはまらないタイプがあったとしても、ぜひ、無理のない範囲で読み進めてみてほしい。あなたの「唯一無二性」を育むために、他のタイプの切実な悩みも知っておいたほうがいいからだ。
■「正しそうな選択」が正しいとは限らない
Type 1 モラトリアム型
つぶしが効くキャリアに、つぶされる若者たち
「少なくとも間違いではない道」――そんな選択を続けてきた。
だが、気がつけば――どれも自分の気持ちを置き去りにしていた。
履歴書に書けることは増えた。スキルもある。将来性もある。
けれど、そんな最適化の果てに手に入れたのは――どこか他人事のような場所だった。
キャリアは立派だ。けれど、気づけなかった。
――道の先に待っていたのは、自由ではなく、行き止まりだったことに。
将来を決めきれず、消極的に“正しそうな選択“を重ねていく――それが、モラトリアム型である。
「とりあえず大手」「とりあえずコンサル」「とりあえずMBA」
どれも理にかなっているし、他人が口を挟む余地などない。
「安定している」「つぶしが効く」「選択肢が広がる」
どれも正論であり、説明もつく。周囲の評価も高い。
だが、それゆえに――その選択は、やがて“目的なき最適化”となり、自分の輪郭を、少しずつ削り取っていく。
今の会社を選んだ理由を問われたとき、ふと、言葉に詰まる。
「なぜ選んだか」は覚えている。
それなのに――「今もここにいる理由」が見つからない。
■人生の最短ルートには落とし穴がある
戦略コンサル、MBA、外資、メガベンチャー――
本来、肩書きは「自由に生きるため」のカードになる。
けれど、それが「自分を説明する手段」になった瞬間、キャリアは“広げるもの”ではなく、“枠にはめるもの”へと変わっていく。
職歴や学歴は、何かを実現するためにあるものだ。しかし「何者かであり続けるため」に肩書きを求めると、自分の内面は、じわじわ空洞化していく。強力な武器だったはずの肩書きが、いつしか、自分を内側から閉じ込める“殻”に変わってしまう。
社会的評価が安定しているほど、「今さら方向転換なんて」と、自分自身を縛りつけてしまう。「自分はどこに行けるのか」ばかりをモヤモヤ考えて、「自分は、どこにいたいのか?」という問いが、いつの間にか遠ざかっている。
注意 保守性は、人生から“余白”を奪う毒になる
優秀な人ほど、リスクが見える。だからこそ、失敗の可能性を潰すことに知性を使ってしまう。その優秀がゆえの慎重さで積み上げた「最も合理的な道」が、人生から“遊び”や“寄り道”を削ぎ落としているのだ。
「期待される道」を歩くことは、決して間違いではない。けれど――“その道を続ける理由”が自分の中にないまま走り続けていると、いつか足が止まる瞬間がやってくる。
朝の電車、窓に映る自分と目が合った瞬間。飲み会のあと、ひとりになった帰り道。そんな時にふとよぎる「なぜこの道を選んだのか?」という問いに、自分の言葉で答えられなくなったとき――自分の手でもう一度、人生を始め直さねばならないのだ。
そんな、簡単に答えの出ない問に向き合いながら、明日の朝に向けて、今日もきちんと、早く眠りにつこうとする――
そんな優秀さを抱えているのが、「モラトリアム型」だ。

■「自分の人生」を生きるために
対策 人生を「保険」ではなく「物語」に
しかし、積み重ねた道のすべてが、無意味なわけではない。けれど「やめられないから続けている」状態のままでは、キャリアは、惰性で続くものへと変わっていく。人生に保険をかけ続けてばかりでは、あなたの“物語”の始まりを阻害してしまう。
――これは、自分が選びたかった人生なのか?

そう問い直す瞬間こそが、あなたの内側で、新たな物語の始点となる。
スペックは揃っている。履歴書に、非の打ちどころはない。けれど――どこかに、言葉にしがたい空虚さがある。この感覚に気づけたなら、あなたの人生の地図は、いつでも書き換えられる。
まずは、そのモヤモヤに名前を与えること。その瞬間から、人生の重心が「他者」から「自分」へと移動し始める。
それは、「何者かになる」ための旅ではない。ただ、「自分として」生きるための序章なのだ。
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勝木 健太(かつき・けんた)
著作家
1986年生まれ。幼少期7年間をシンガポールで過ごす。京都大学工学部電気電子工学科を卒業後、新卒で三菱UFJ銀行に入行。4年間の勤務後、PwCコンサルティング、有限責任監査法人トーマツを経て、フリーランスの経営コンサルタントとして独立。約1年間にわたり、大手消費財メーカー向けの新規事業/デジタルマーケティング関連のプロジェクトに参画した後、大手企業のデジタル変革に向けた事業戦略の策定・実行支援に取り組むべく、And Technologiesを創業。執筆協力として、『未来市場 2019-2028』(日経BP社)、『ブロックチェーン・レボリューション』(ダイヤモンド社)などがある。人生100年時代のキャリア形成を考えるメディア「FIND CAREERS」を運営。Twitterアカウントはこちら。
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(著作家 勝木 健太)
