「 AI はもはや実験ではない」 ロレアルが描くマーケティング変革の全貌

記事のポイント
ロレアルは生成AIをマーケ施策に活用し、制作の高速化と自動化を進めている。
広告運用や商品開発にもAIを統合し、効果的な支出と業務効率を実現している。
組織体制の再編や育成を通じ、AI活用によるブランド体験の深化を図っている。
ロレアルは生成AIをマーケ施策に活用し、制作の高速化と自動化を進めている。
広告運用や商品開発にもAIを統合し、効果的な支出と業務効率を実現している。
組織体制の再編や育成を通じ、AI活用によるブランド体験の深化を図っている。
高級化粧品ブランドのロレアル(L'Oréal)で西ヨーロッパ担当CMOを務めるマーク・ラレマンド氏は、ショップトークヨーロッパ(ShopTalk Europe)の場で、同社のAIおよびデジタル戦略の次のフェーズについて語った。
ラレマンド氏はイベントで「これはもはや実験ではない。これはマーケティングの変革だ。我々はAIを中核に据えてブランドインタラクションを構築していく」と語った。
その理由のひとつは、スピードだという。「以前はキャンペーンの実施に数週間かかっていたが、今は数時間で可能になった」。この迅速化を支えているのが、同社のクリエイテックラボ(CREAITECH lab)だ。
生成AIで変わるクリエイティブ制作とメッセージのローカライズ
ロレアルは、Googleのイマジェン 3(Imagen 3)やジェミニ(Gemini)などの生成AIモデルを活用し、テキストプロンプトからローカライズされたビジュアルやキャンペーンアセットを自動生成している。これにより、EMEA地域の20市場でTikTokやインスタグラム向けに、各市場に適したメッセージとクリエイティブを展開できるようになった。
ロレアルのグループデータおよびAIエンタープライズアーキテクト、アントワーヌ・カステックス氏は2025年4月、Googleとのインタビューで、「日本庭園でも、にぎやかなパリのストリートでも、あらゆる場所に同じ商品写真をシームレスに配置できる」と語っている。
また、生成AI担当グローバルコンテンツディレクターのトーマス・アルベス・マチャド氏によれば、こうした機能はコスト削減に加え、ストーリーボードの作成、コンセプト立案、ビジュアルテストのスピードアップにも寄与しているという。
動画活用とメディア運用にも広がるAIの役割
今後は動画にも対応予定で、Googleのヴェオ 2(Veo 2)を用い、ブランド固有のスタイルで訓練された動画・音声要素を活用し、静的なビジュアルを8秒間のアニメーションクリップへと変換する。
ロレアルはメディア運用にもAIを導入している。現在は「タイダル(Tidal)」というAIツールを活用し、複数のプラットフォームにまたがる有料メディアを自動運用している。2023年に北欧で実施された展開では、メディア効率が22%、キャンペーン効果が14%向上したという。
ラレマンド氏は、これらの取り組みがコスト削減目的ではなく、「より効果的な支出」を実現するためのものであると強調している。
パーソナライズと組織変革を支える「One L’Oréal」
同氏は「商品のインスピレーションを与えてから購入までの距離を縮めることが目標」と語り、「我々は大規模なパーソナライゼーションの限界を押し広げている」として、ダイナミック広告ターゲティングやリアルタイムでのクリエイティブ最適化といった具体例を挙げた。
これらの取り組みは、2022年にはじまり2024年に拡張されたロレアルの変革計画「ワンロレアル(One L'Oréal)」に基づいており、IT、データ、クリエイティブインフラの集中化をめざしている。2025年4月の決算発表によると、この新システムは最近中国で導入され、2025年末までに英国とオーストラリアでも展開される予定だ。
ラレマンド氏は「共通のシステムで市場を強化したい」と語った。
ソーシャルプラットフォームへの投資とプロダクト開発に広がるAI活用
2023年、ロレアルはデジタルメディア予算の60%以上をソーシャルプラットフォームに投資した。この傾向は2024年も続いているが、具体的な割合は明らかにされていない。
ラレマンド氏は「支出を増やすのではなく、より効果的に支出する」と語っている。
さらに、AIの活用はマーケティングにとどまらず、製品イノベーションにも変革をもたらしている。
ロレアルは2025年1月、IBMとの提携を発表し、カスタム生成AIによる処方基盤モデルの開発に取り組んでいる。このモデルは、成分データを分析することでエネルギーと材料の無駄を減らし、ブランドのサステナビリティ目標を支援することを目的としている。
AIで実現するグローバルスケールの流通と認知管理
ロレアルリサーチアンドイノベーションのイノベーションメティエおよび製品開発責任者であるステファン・オルティス氏は、「このパートナーシップにより、当社のイノベーションと処方変更パイプラインのスピードと規模が拡大する」とプレスリリースで述べた。
このAIシステムにより、世界中にいる4000人以上の研究者が、より迅速に製品の開発と改良に取り組めるようになることが期待されている。
一方で、エージェント型AIツールもロレアルの戦略において重要な位置を占めており、複数の小売プラットフォーム上での認知度管理や統制に活用されている。
2025年4月17日の第1四半期決算発表でCEOのニコラス・ヒエロニムス氏は、レッドケン(Redken)やケラスターゼ(Kerastase)といったブランドがAmazonとセフォラドットコム(Sephora.com)で公式に販売されるようになったことを明かした。これにより、不正販売の排除と価格の標準化に役立っているという。
ロレアルがデジタルストアフロントでの販売を拡大するなかで、このエージェント型AIは、コンテンツの自動更新、商品リスティングの品質監視、そして国や地域をまたぐ一貫性の確保といった業務をリアルタイムで実行できる。従来は人手による監視が必要だったが、現在はAIがその役割を担っている。
ラレマンド氏は、「ロレアルは現在、有効なものを拡大している」と述べた。さらに、同社ではクリエイティブ、パフォーマンス、データ運用を横断する新たなチームを編成し、AIワークフローに関する採用や教育も進めているという。
「我々は組織内マーケターの役割を変えつつある。新しいツールを活用し、新しいプロセスで新しいチームを構築している」と、ラレマンド氏は語っている。
[原文:L’Oréal is putting AI at the center of its global marketing strategy]
Zofia Zwieglinska(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:藏西隆介)
