医学部生が分析「投手はいつ代えるべきか」 北大野球部、唯一のアナリストが選手を諦めみつけた道
北大から来たアナリスト、野球データ分析競技会で優秀賞
日本でも野球の現場に様々な計測機器が導入され、データを用いた技術向上やチーム強化を図るのが当たり前になってきている。アマチュア野球を統括する全日本野球協会が学生を対象に毎年開催している「野球データ分析競技会」は2月23日、第4回の決勝を都内で行った。日本全国から参加したのは6チーム12人。野球の分析に潜む魅力とは。
札幌学生野球連盟、通称“札六”を戦う北大野球部から参加した上田拓郎(1年)は現在、チームたった1人のアナリストだ。小学校4年で野球を始めて以来、札幌西高までは捕手や一塁手としてプレーした。ただ大学入学と同時に、選手の道を諦めたのだという。
理由は、自分の中でははっきりしていた。「センスがなかったというか……。でも、野球のデータを見るのはずっと好きでした。やるより見て、アドバイスを送るほうが向いているんじゃないかと思ったんです」。さらにこの1年間を振り返り「もし選手だったら、これ以上の貢献はできていないと思うんです」とまで言い切る。入学から4年生の先輩と2人で分析活動をしてきたが、秋からは1人。それでも言葉から、充実した日々がうかがえる。
大会では3人で分析結果を発表するチームが多い中、上田は1人で準備しなければならない。発表前日に東京六大学野球で収集した実際のデータが渡され、これをもとに分析。データ抽出から発表用のパワーポイント作成までをたった1日でこなす。「1人でやっていたので、結局睡眠時間が取れませんでした」と苦笑いするが、投手交代のタイミングというテーマが高く評価され、優秀賞に輝いた。
テーマ選定は、普段の試合がきっかけだった。試合後の監督やコーチから、継投について「あの時、本当はどうすればよかったのか」という問題提起があったのが頭に残っていた。投手交代にふさわしいタイミングを、一度の継投あたりの失点数や、交代した投手が初球に何を投げ、どの程度ストライクを取れたのかという視点から分析していった。
解剖学も野球に活かす…仲間を増やし「もっと広めたい」
さらに継投を、単打や四死球、犠打のあとに交代させたケースと、長打を浴びた後に交代させたケースに分類。傷を広げないうちに継投に踏み切ったほうが、結果的に失点も抑えられるという結論にたどりついた。
他のリーグでのデータが元になった研究だが、自チームでも生かさない手はない。「持ち帰って、コーチと今後どうするか話してみます」。現場での疑問に、アナリストが分析を加えてより良い方向へ持っていくサイクルができている。
野球の現場で、データによる分析や改善を導入する際には、選手や指導者の経験則とぶつかるケースもある。ただ学生が自主的に活動方針を決めていく北大野球部ではむしろ、積極的にデータを求めてくる場合が多いという。投球のデータを測るラプソードはすでに導入ずみ。「データにひと言加えて、選手が結果を出してくれるとうれしいですね」と、やりがい十分の現場だ。
医学部保健学科で学ぶ上田は将来、検査技師になるという目標を持つ。今後進む専門課程には解剖学もあり、それも野球の動作解析などにつなげたいという。学びをすぐ野球部にも還元するのは、大きな夢があるからだ。
「北大野球部が強くなる活動をしていきたい。あとは札六の魅力をもっと広めたいんです」
そのためにも、ともに活動する仲間を求めている。もうすぐ新歓シーズンだ。「メンバー、増えてほしいですね。何とかこの流れが、チームに残るようにしていきたい」。リーグ戦が行われる札幌円山球場のネット裏には、各校のデータ部隊が陣取るようになった。グラウンドの外でも切磋琢磨することで、リーグ全体の力が伸びていく。
(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)

