“外国人ドライバー”の運転は危険?レンタカー事故率は「日本人の3倍以上」…原因は?
2022年の間に国内で発生した交通事故は、30万件以上に上ります。死亡者数は2,610人と、年々減少傾向にあるものの、それでもなお1日あたり7人もの命が奪われている現状があります。
重大な被害が生じた交通事故のうちでも、全国ニュースなどで大きく取り上げられるものはごく一部です。飲酒運転やあおり運転など、悪質な違反が事故を引き起こしたケースのほか、話題になりやすいのが「外国人ドライバーによる事故」でしょう。
一体なぜ、外国人ドライバーによる事故はことさらに取り上げられることが多いのでしょうか。外国人ドライバーの事故件数などのデータを参照しつつ、考察していきます。
「外国人が起こした事故」は社会的な問題として扱われる?
まず考えられるのは、外国人ドライバーによる交通事故が、メディアにおいて一種の国際問題として扱われている、という点です。
事故の背景として「交通ルールやマナーの違い」などが見て取れるケースのほか、そもそも入国管理や在留資格をめぐる制度上の問題としても捉えられるケースはとくに、社会的に重要性の高いニュースとして報道される傾向にあります。
しかし一面において、外国人ドライバーによる交通事故を優先的に取り上げることにより、外国人一般に対する偏見を助長してしまう可能性も否定できません。ニュースの際にドライバーが「外国人」であることが言及されると、SNSや掲示板などには多くの反応が寄せられ、なかには特定の国や民族に対する差別的な表現が散見されることもあります。
このような「ヘイトスピーチ」まではいかなくとも、ことさらに「外国人」という属性に焦点をあてることで、外国人に対する心理的な距離感や、ある種のステレオタイプを助長するリスクは少なからず考えられるでしょう。
外国人ドライバーの事故リスクは高いのか
そもそも、「外国人ドライバーに事故が多い」というイメージはどの程度妥当するのでしょうか。まずは、運転免許保有者数と交通事故件数の比率から検証してみます。
警察庁の運転免許統計(*1)によれば、国内の運転免許保有者数は2021年の段階でおよそ8,200万人。同年の交通事故発生件数は約30.5万件であり、免許保有者1,000人あたり4件弱の事故が起きていることがわかります。ちなみにコロナ禍以前の2018年や2019年においては、免許保有者1,000人あたり5件ほどの事故が発生していました。
対して、内閣府の交通安全白書(*2)によると、2018年の段階で外国籍の運転免許保有者数は約90.7万人。同年において外国籍ドライバーが第1当事者となった交通事故件数は6,710人であり、免許保有者1,000人あたり約7件の事故が起きています。
統計的な割合で見ると、外国籍ドライバーの方がやや高い数字となりますが、「1000分の4」と「1000分の7」を比べて、後者をことさらに「危険」と断じるのは性急かもしれません。
■レンタカー利用時に事故率が高くなる傾向
一方で、レンタカー利用者に限って比較すると、外国人ドライバーは日本人に比べて事故率が高くなるというデータがあります。
総務省の近畿管区行政評価局が、外国人による利用実績のデータをもつ3事務所から、2018年の4月~6月の事故発生状況(物損を含む)を集計したところ、日本人利用者の事故率は1.0%だったのに対し、外国人ドライバーの事故率は3.4%という数字が示されました(*3)。
これは3ヶ月間のデータであり、スモールサンプルにすぎないという見方もできますが、観光利用の多いレンタカーにおいて、訪日外国人の事故率が高くなる傾向は理解しうるものでしょう。左側通行などの交通ルールに不慣れであることや、標識や看板に不案内であることなどが一因として考えられます。
とはいえ、これは海外旅行者全般に当てはまる傾向ですので、こうした数字を根拠に「外国人ドライバーは危険」と断じることは正確性に欠けるとも言えます。
外国人ドライバーの保険加入率はどれくらい?
その他、事故後に賠償責任が履行されない「泣き寝入り」のケースに注目が集まることで、外国人ドライバーに対するイメージが悪化しているという可能性も考えられます。
任意保険未加入者が運転する車と事故に遭い、大きな被害を受けたにもかかわらず、それに見合う賠償がなされないというニュースは、見る側に強いインパクトを与え、加害者に対する大きな憤りをもたらします。
一般に、任意保険の契約内容を理解するには一定の日本語能力が必要であることから、「外国籍のドライバーはあまり保険に入っていないのではないか」というイメージがあるかもしれません。そこから、「外国人と事故を起こすと厄介だ」と考える人もいるでしょう。
しかし一方で、在留外国人の任意保険加入率は決して低くないことを窺わせる調査結果もあります。株式会社サーベイリサーチセンターが2020年に実施した「在留外国人の自動車所有について」という調査によれば、外国籍の自動車保有者のうち、任意保険に加入している割合は93.2%と、きわめて高い数字が残されました(*4)。
同調査の有効回答数は1,037件であり、総体的な状況がどの程度反映されているのかについては議論の余地もあるでしょう。とはいえ、上の数字は損害保険料率算出機構が発表する日本全国の任意保険加入率「88.4%」(2021年度)を上回る水準であり(*5)、やはり「外国人ドライバーは保険に入らない」という傾向は見て取れません。
「外国人」と「交通事故リスク」に直接の関係はない
上に挙げた数字から見て取れるのは、以下の2つの傾向です。
1つは、「在留外国人の多くは日本の交通ルールに適応し、交通事故率や保険加入率において顕著な差は生じていない」という点です。すなわち、外国人という属性そのものが、事故のリスクと直接的に相関しているとは考えにくいでしょう。
もう1つは、「訪日外国人は日本の交通ルールに不慣れであることから、交通事故率が高くなる」という傾向です。直感的にも、「慣れない土地での運転」においてはリスクが生じやすいことは頷けるでしょう。これは外国人に特有の性質というよりも、「国や地域間にある常識やルールのギャップ」が原因であると考えられます。
■問題は「外国人」ではなく「ルールの外にいる存在」
もちろん、不法滞在者が起こした事故によって被害を受けたにもかかわらず、金銭的な補償を受けられなかったケースなど、「外国人=日本のルールが通じない」といったイメージを抱かせるようなニュースがあることも事実です。
その他、外国籍の自動車窃盗グループの存在など、社会のルールの外側にいる存在に対し、不安や恐れを抱いてしまうことは自然な心情でしょう。
とはいえ、特定の属性を備えた個人がルールの外側にいるからといって、同じ属性をもつ人たちが同様に無法者だというわけではありません。
おそらく、今回取り上げた外国人ドライバーをめぐる問題においては、「外国人」という属性と、「ルールの外にいる者の無保険・無免許運転」といった事実的な問題を、ある程度切り離して考えることが必要なのかもしれません。
国籍以前に、なぜ無保険・無免許運転の問題が生じてしまうのか、ルールの抜け穴はどこにあるのかなど、構造的な問題について議論することが求められます。こうした問題が、外国人の受け入れ体制やサポート体制の問題に由来しているのであれば、これを解決できる方策を探っていくことが重要だと考えられます。
