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W杯で優勝を掴んだ8か国のクルマ

2022年のサッカー・ワールドカップでは、アルゼンチンが優勝した。日本でも盛り上がりを見せた世界的スポーツ・イベントといえるが、過去22回の開催を通じて頂点に登り詰めたのは8か国しか存在しない。非常に狭き門といえる。

【画像】英国編集部が選出したサッカー・ワールドカップ歴代優勝国のクルマ 8台 全126枚

そこでAUTOCARとして気になるのは、各国のクルマ。過去の優勝国はどんなモデルを生産してきたのか。それぞれに独自の歴史を持ち、一部の国は他より世界的なプレゼンスが遥かに大きい。スポーツの世界とは、また違った強弱関係がある。


英国編集部が選出したサッカー・ワールドカップ歴代優勝国のクルマ 8台

今回は歴代のワールドカップ優勝国の代表として、スーパーカーを除く一般的なモデルを英国編集部のクラシックカー部門が選出。比較してみることにした。候補とした年式は、可能な限り力関係が均衡するように、1960年代から1970年代へ絞った。

もっとも、後進国は少々不利。南米のウルグアイで製造されたクルマは非常に少ないし、ノックダウン生産モデルも含まれている。英国としては有利な条件ともいえる。選出基準も私見によるが。

とはいえ、2か国ずつ代表モデルを乗り比べ、総合優勝となる1台をAUTOCAR的に選び出してみた。ちょっと無理がある?年始企画として、ご一笑いただければ幸いだ。

フランス:ルノー8 ゴルディーニ

W杯優勝:1998年、2018年

レ・ブルーという愛称を持つフランス代表チーム。意欲的なプレーで冬の寒さを吹き飛ばす勢いを持つ。個々の才能が団結すると真の強さを発揮し、過去には2度、サッカー・ワールドカップでの優勝経験がある。

ミシェル・プラティニ氏やジネディーヌ・ジダン氏など有名選手は数多いが、1960年代の自動車業界には鬼才ドライバーのアメデ・ゴルディーニ氏がいた。F1やル・マン24時間レースで名を馳せると、公道用モデルのチューニングへ活躍の場を移した。


ルノー8 ゴルディーニ(1964〜1966年/英国仕様)

彼が最初に手掛けたモデルは、1957年のルノー・ドーフィン。だが、現在でも語り継がれるアイコン的存在といえるのは1964年のルノーR8 ゴルディーニだろう。

リアエンジンのR8は操縦性に難があったものの、巧妙なシャシー・チューニングでマナーを改善。リア・オーバーハングより後ろにエンジンが載るという特性を活かし、優れたトラクションを発揮した。

スローイン・ファストアウトのドライビングスタイルに慣れれば、R8 ゴルディーニのリアタイヤは本領を発揮する。実際、フランス・コルシカ島で開催されたラリー、ツールド・コルスでは1964年から1966年にかけて3年連続優勝を果たしている。

ゴルディーニが得意としたのは、エンジンのパワーアップ。水冷直列4気筒1108ccユニットでは、96psを達成した。クロスフロー・シリンダーヘッドとツインチョーク・サイドドラフト・キャブレターを2基組み合わせ、ノーマルの倍近い最高出力を叶えている。

ルックスの面でもベストプレイヤー

R8 ゴルディーニは始動時からラリーカーのように荒々しい。ポン、ポン、ポンッと弾けるようにアイドリングする。アクセルペダルを傾ければ、聞き惚れる勇ましいノイズが放たれる。

直線加速はさほど速くない。高回転域を好み、3000rpm以下では線が細いものの、滑らかに回転するエンジンはスピード以上に濃厚。排気量こそ違えど、基本的にはアルピーヌA110と同じユニットで、7000rpmまでストレスなく吹け上がる。


ルノー8 ゴルディーニ(1964〜1966年/英国仕様)

ベースが四角い4ドアサルーンだから、低速域ではボディが重く感じられる。だが、通常のR8でも前後にディスクブレーキが組まれ、フランス製スポーツサルーンの源流に位置する。リクライニング・シートという、当時では新しい快適装備も採用されていた。

リアエンジンだから、フロントのボンネットを開くと荷室が広がる。ナンバープレート裏側のパネルから引き出す、スペアタイヤも特徴だろう。

改めてR8 ゴルディーニを間近で見ると、控えめながら鮮鋭なスタイリングへ惹き込まれる。ディティールにも見入ってしまう。適度に散りばめれられたクロームメッキ・トリムが、上品に華やかさをアシストしている。

中央が凹んだボンネットや個性的なドアのプレスラインなど、トリッキーな造形も好印象。フランス車として、ルックスの面でもベストプレイヤーに加えられるだろう。

イングランド:BMCミニ・クーパーS

W杯優勝:1966年

イングランド(英国)がワールドカップで優勝したのは1966年の1度。丁度その頃、自動車産業は黄金期にあった。偶然かもしれないが、国内に勢いがあったことは間違いない。その頃を象徴するモデルといえば、BMCミニ・クーパーS以外にないだろう。

オリジナルのミニ・クーパーSが、ショールームから姿を消したのは1970年。それまでにモンテカルロ・ラリーで活躍し、映画「ミニミニ大作戦」では銀幕デビューを果たしていた。コンパクトカーで、世界の頂点にいたといっても過言ではない。


ホワイトのBMCミニ・クーパーSとブルーのルノー8 ゴルディーニ

英国レース界のレジェンド、ジョン・クーパー氏によって、ダイヤの原石から磨き出されたクルマ界のトップ選手。ベースを生み出したのは才能豊かな技術者、アレック・イシゴニス氏だった。

ミニ・クーパーが誕生したのは1961年。その後1963年に1071ccのクーパーSが誕生。さらにクーパーSは1964年に1275ccへバトンタッチし、スポーツ・ミニのイメージを強く焼き付けた。

弱者が強者へ挑むという姿勢に、英国人は弱い。そんな嗜好にも、ミニはうまく合致した。果敢に挑むサッカーチームにも重なるように思う。バランスに優れたシャシーに、チューニング・エンジンを組み合わせた、元祖ジャイアントキラーだ。

ハットトリックを決めたジェフ・ハースト氏なきあと、サッカー代表チーム「スリーライオンズ」の勢いには少し陰りがあるようだが、ミニは今でも威勢がイイ。小さなアクセルペダルを傾ける度に、前方へ鋭くダッシュする。

元祖ホットハッチと呼んでもいい

何より楽しいのがステアリング。ダイレクトでリニアで、感触が素晴らしい。操舵感は軽めでレシオはクイック。軽いボディに硬いサスペンション、低い重心位置という優れた体幹で、他を寄せ付けない敏捷な身のこなしを実現している。

乗り心地は、ご存知のように少々跳ねる。路面のツギハギや大きな窪みなどを避けながら走りたいところだが、コンパクトなサイズも相まって、ミニなら朝飯前でこなす。


BMCミニ・クーパーS(1969〜1971年/英国仕様)

小さなボディの後ろ寄りに座るドライビングポジションには、一癖ある。ステアリングホイールは、バスのように寝ている。とはいえ、数分も運転すれば馴染める。扱いやすい操作系に質感の良いロードマナーで、すぐにクルマと一体になれる。

前輪駆動は後輪駆動ほど楽しくないというマニアもいるとは思うが、ミニのリアタイヤは想像以上に身軽。リアへ掛かる重量がそもそも小さく、アクセルペダルの加減でリフトオフ・オーバーステアへ持ち込むことも簡単。直感的に手足を動かし、自在に操れる。

ファミリー・ハッチバックとして誕生したミニへチューニングを施し、スポーツカーのような走りを叶えたことを考えると、元祖ホットハッチと呼んでもいいだろう。リアハッチが付いていないけれど。

今でもミニ・クーパーSの輝きはまったく霞んでいない。われわれに最も身近な場所にある、モータースポーツへの入口でもある。世界の舞台で戦ったスタープレイヤーだ。

ルノー8 ゴルディーニとBMCミニ・クーパーSのスペック

ルノー8 ゴルディーニ(1964〜1966年/英国仕様)

英国価格:983ポンド(新車時)/5万ポンド(約830万円)以下(現在)
販売台数:2626台
最高速度:170km/h
0-97km/h加速:12.0秒
燃費:10.6km/L
CO2排出量:−
車両重量:795kg
パワートレイン:直列4気筒1108cc自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:96ps/6500rpm
最大トルク:9.9kg-m/4000-6000rpm
ギアボックス:4速マニュアル

BMCミニ・クーパーS(1969〜1971年/英国仕様)

英国価格:942ポンド(新車時)/3万ポンド(約498万円)以下(現在)
販売台数:1万9511台
最高速度:154km/h
0-97km/h加速:11.2秒
燃費:12.4km/L
CO2排出量:−
車両重量:629kg
パワートレイン:直列4気筒1275cc自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:77ps/5800rpm
最大トルク:10.9kg-m/3000rpm
ギアボックス:4速マニュアル


ルノー8 ゴルディーニ(1964〜1966年/英国仕様)

この続きは(2)にて。