横断歩道で車が止まってくれたらお礼…する?しない?歩行者がありがとうは変なのか
先日車を走らせていると、信号のない横断歩道で小学生くらいの子どもが道を渡ろうと立っていたので、一時停止をし横断をしてもらうと、その後にしっかりとお辞儀をしてお礼を返してきました。
「しっかりした子だなぁ」と感心し、このことを知人に話したのですが、「交通ルールとして横断歩道の歩行者には道を譲ることが決まっているのだから、お礼をするのはおかしいのではないか」と言われました。
双方の考え方のポイントがズレていることを感じた私は「横断歩道で車が止まってくれた際に、お礼をする・しない」についてちょっと考えてみることにしました。
道交法では「横断歩道での停車」は当たりまえ
そもそも、信号機のない横断歩道にて歩行者の通行を妨げないよう一時停止するというのは、道交法で定められているルールです。
これを無視している車の数の統計をJAFが全国的に調べた「信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査」の結果が、都道府県別のランキング形式で発表され、しばしば話題となることがあります。
道路交通法では、「第38条 横断歩道に近づく場合、横断しようとする歩行者がないことが明らかな場合を除き、横断歩道の直前(停止線がある場合は停止線の直前)で停止することができるような速度で進行しなければならない。
横断者がいる場合、横断しようとしている歩行者がいる場合は、直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない」とあります。
なお、これに違反した場合、3か月以下の懲役、または5万円以下の罰金、違反点2点が課せられます(普通車での反則金は9,000円)。
つまり法律上は「横断歩道を渡ろうとしている人がいる場合は止まる」。だからこそそれを守っていない車の数を調べるようになったというわけです。
ちなみに、2021年の調査結果では、信号機のない横断歩道における車の一時停止率が最も高いのは長野県(85.2%)で、最も低いのは岡山県(10.3%)でした。50%を超えている=2台に1台が止まってくれる県は5県で、全国平均は30.6%となっています。
(運転をしていると、後続車が迫っているために横断歩道で停車するタイミングというのが掴み難いと感じることもあります。これは車間距離の問題となってくるので別の機会に議題としたいと思います)
お礼は強要されるものではないが、道路では譲り合いの気持ちが大切
では、そんな当たり前とも言えることに対してお礼をしろと指導するのはどうなのか、という話なのですが、年代や地域によっては、小学校に警察官が訪問して行う交通指導などで、「道を譲ってもらったら、お礼をするように」と教えられた人もいるようです。
私の編集担当をされている方も、小学生のころに学校でそのように教わったとのことですが、現在小学3年生の私の息子は、学校の先生からも定期的に交通指導に来校する警官からも、そのような教えを受けたことはないと返答されました。
なお、警察署では「交通指導要綱には無いものの、担当者レベルではそのように教えたことがあったかもしれない」という返事をもらいました。
お礼は誰かに強要されるものではないでしょうが、私自身、横断歩道で待っているところを、通行中の車が停車し渡らせてくれた場合には、相手に対して“ありがとう”のサインを自然と出しています。
そもそも交通ルールというのは、自動車、オートバイ、自転車、歩行者、バス、トラックなど、そこを使うものすべてを考えて作られているもの。
その中で“歩行者が優先なのだから良い”としたり、“ルールを守っているのだから、その中での話にとやかく言われる筋はない”などと考えること自体がナンセンスなのかもしれません。
周囲の状況を見渡したうえで、相手のことを考え、相手の気持ちになって行動する。道路では譲り合いの気持ちを持つことが最も大切だと私は思います。