宝塚記念に臨むエフフォーリア。トーンが低い陣営…課題は山積みも、巻き返しの可能性はゼロではない
それにしても、GI大阪杯(4月3日/阪神・芝2000m)のエフフォーリア(牡4歳)は負けすぎだろう。
昨年の年度代表馬にして、誰もが認める現役最強馬。当日の単勝が1.5倍と、他を圧倒する人気だったことも頷ける。多くのファンも、関係者も、その人気にふさわしい完勝劇を期待していた。
昨年の年度代表馬エフフォーリア。宝塚記念でその輝きをとり戻せるか
肝心のエフフォーリアはこれといった見せ場もなく、馬群に沈んだ。それまでのキャリア7戦のうち、負けたのはわずかハナ差で敗れたGI日本ダービー(東京・芝2400m)のみ。そんな馬が、なんと勝ったポタジェ(牡5歳)から3馬身以上も離されての9着に終わったのだ。
レース後、陣営が真っ先に故障を心配した、というのも無理もない。それほど、想定外の惨敗だったのである。
おかげで、さまざまな敗因が取り沙汰された。レース前から一部で指摘されていた重め残りや、初めて経験する関西への長距離輸送が影響したのではないか。さらには、スタート直前にゲートに突進して顔面を強打したことや、ゲート両脇が牝馬だったことで平常心を失ったのではないか、といった声もあった。
実際はどうだったのか。関西の競馬専門紙記者はこう分析する。
「(敗因については)いろいろと言われているようですが、とりわけ大きいのは輸送でしょう。それまでの7戦、デビュー戦の札幌を除けば、すべて関東圏の競馬で当日輸送でした。それが大阪杯で初めて、レース2日前の金曜日に関西までの長距離輸送をこなした。
陣営は当然、その分の消耗を考慮して事前に調整するわけですが、そこにほんの少しの狂いが生じて、それがいろいろなところに波及した。そういうことじゃないかと思います」
大阪杯のレース後、鞍上の横山武史騎手は「1週前の動きが重かった」とか、「今回は金曜輸送だったので、(レース前に)いつもは乗れる金、土と乗れなかった」など、敗戦の遠因と思われるようなことを漏らしている。思えばそれらはすべて、初の長距離輸送による調整の狂いを示唆していたと言ってもいい。
加えて、ゲートで顔が腫れるほどのケガを負った。簡潔に言ってしまえば、大阪杯ではエフフォーリアに"流れ"が向いていなかった、ということだ。
その一戦からおよそ2カ月半、エフフォーリアは再び、関西圏のGI宝塚記念(6月26日/阪神・芝2200m)に挑む。
はたして"悪夢"は繰り返されるのか。
大阪杯での"経験値"があることを踏まえれば、「もう同じ過ちは繰り返さないだろう」と言いたいところだ。が、いまだエフフォーリア陣営からは景気のいい話は聞こえてこない。
6月15日に行なわれた1週前追い切りに跨った横山武史騎手は、「一番よかった頃に比べると、物足りない」と辛口のコメント。管理する鹿戸雄一調教師も、「まだ1週間前だから。(本番には)これでちょうどよくなる」と前向きな姿勢を見せたものの、動きについては「少しズブい」と漏らした。
現状、エフフォーリアが万全な状態で宝塚記念を迎えられるかと言えば、決して太鼓判を押せるような状況にはない。横山武史騎手や鹿戸調教師の率直な評価を聞く限り、前走の二の舞といったことも脳裏をよぎる。
それでも、宝塚記念にはこんなデータがある。過去10年で前走1着だった馬が勝った例は1回しかない、ということ。直近の結果はあてにならないレースと言える。
しかも、名馬と称されるオルフェーヴルやゴールドシップが、前走惨敗からいずれも宝塚記念で巻き返しを図っている。宝塚記念とは、まさに名馬の"リベンジ"の舞台でもある。
前出の記者もこんな見解を示す。
「梅雨時の荒れた馬場、2200mという条件が最も合うのは、エフフォーリアです。時期は違いますが、暮れのGI有馬記念(中山・芝2500m)も荒れ馬場の非根幹距離のレース。そこで、エフフォーリアは圧勝劇を演じています。
出来自体はいい頃に戻っていないとしても、今度はこの馬のレース適性がモノを言うはず。それに、そもそものポテンシャルが他の馬とはまったく違います。劣勢を跳ね返しても何ら不思議ではありません」
中・長距離界の豪華メンバーが集った宝塚記念。難敵相手にエフフォーリアは現役最強馬としての輝きをとり戻すことができるのか。注目の一戦から目が離せない。