プロ育成を標榜する相生学院高が女子サッカー部を創設。実績十分の熊田監督は「早いタイミングで結果が出る」と展望
通信制の相生学院高校男子サッカー部は、3年前に神村学園淡路島学習センターとしてスタート。サポート校では全国高校選手権に出場できない制度上の問題が発覚したため、相生学院に全部員が転校する形でプロジェクトを継続させて現在に至っている。
天然芝5面や屋内外の人工芝の練習場が使用可能で理想の環境を整えた相生学院は、基本的に午前中にトレーニングを済ませ、午後は人間教育に力点を置きセミナーや地域活動などを積極的に実践している。
監督にはアーセナルで15年間の指導歴を持つ元アイルランド代表GKのジェリー・ペイトン氏、コーチにも清水エスパルスで天皇杯制覇の経験を持つゼムノビッチ・ズドラブコ氏を擁し、さらに選手主体のボトムアップ理論を導入して広島観音高校時代に全国制覇を達成している畑喜美夫氏がGMとして加わるなど、ハード、ソフト両面でプロを凌駕するような内容が特徴で、豪華スタッフはそのまま女子部もサポートしていく。
プロジェクトを発案し実現した上船利徳総監督が、女子部創設の狙いを語る。
「もちろん男子と同じくWEリーグに輩出していきたいと考えていますが、それ以上に世界基準でリーダーシップを発揮し活躍できる女性の育成を目ざしたいと考えています。そのためにも学生ミーティングや地域貢献活動を増やし、全員が活発に意見を言い合える主体性の高い文化を築いていきたいですね」
卒業後は米国の大学進学をサポートする「With you」との提携も決まり、英会話などのカリキュラムも充実させていく予定だ。
そして初代女子監督には、ミャンマー代表を率いてU-19ワールドカップのアジア予選を勝ち抜きASEAN最優秀監督の受賞歴を持つ熊田喜則氏を招聘。同監督は10年以上も女子の指導歴を重ねており、独自に研究し編み出したコンディショニングや強化方法を駆使して新しい挑戦に乗り出す。
「最初に日本で女子の指導をしたのがINAC神戸でした。その時、多くの選手たちがベタ足で、小刻みにステップを踏まないとターンができないことが不思議でした。後に明治国際医療大学(京都)で学び、女性は骨盤が後傾しているからどうしても踵が地面についてベタ足になることを教えられます。ただし反面上体を前傾させようとすると、関節が緩い女子選手は膝が内側に入ってしまい前十字靭帯が切れ易くなることも知りました」
こうして熊田氏は、周囲の関係者たちの協力を得て日本の女子選手のベタ足矯正への道を模索していく。
「まず準備運動でピラティスを導入し、骨盤の位置を強制していくエクササイズを作りました。次にコーディネーションとアジリティのトレーニングで膝、足首、骨盤を補強しブレない体幹を作りあげ、さらにパワーポジションの作り方を教えていきました」
結局、明治国際医療大学で指導した3年間で、前十字靭帯を断裂する選手はひとりも出なかった。また同時に女性特有のコンディション調整法も検証してきた。
「チームを生理のタイミングで3つのグループに分けます。最も生理から遠い選手がA、整理が近づいてきている選手がB、生理に入っている選手がC。Cはトレーニングの強度を完全に抑えてしまい、次戦はAとBで臨む。こうしていくと総体的に良いコンディションを保つことができました。結局サッカーは最低でも15人以上良い選手を揃えないと勝てません。こうした繊細な気遣いが必要になってくると思います」
