この記事をまとめると

■日本だけでなくグローバルでクロスオーバーSUVが人気になっている

セダンの人気が圧倒的に高い中国でも内陸部ではSUVが人気となっている

■ファッションとして人気の先進国に対し、新興国では実用的な理由で人気が高まっている

全世界でSUVが人気となっている理由

 世界的にクロスオーバーSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)が新車販売の中心となっているのは、いまさら言うまでもない話。

 腰高スタイルでシートポジションも高めとなり、見晴らしの良い運転ポジションが好まれているという点は世界共通のようである。そもそも、「クロカン」と呼ぶにふさわしい、ピックアップトラックベースでラダーフレームを持つフルサイズSUVでさえ、販売される多くは2WDとなるアメリカでは、当然ながら乗用プラットフォームベースのクロスオーバーSUVでも2WDが売れ筋となっている。

 世界的にもSUVスタイルでありながら、売れ筋は一般的には2WDとなっており、以前は「SUV=4WD(4WDの必要性はそれほどないが、ないよりはあったほうがいいという国民性が影響?)」というのが定番であった日本でも、いまでは人気SUVのなかには2WDモデルが売れ筋となっているケースも少なくない。

 ハードオフローダーイメージの強い新型トヨタ・ランドクルーザーの売れ筋であるZXあたりを運転していても、静粛性も高く、路面からの振動を見事にいなすその乗り味は高級サルーンのようなイメージが強い。このような傾向は、筆者個人としては現行ジープ・グランドチェロキーも、これまでのイメージを大きく覆すかのように、新型ランドクルーザーに近いキャラクターとなっているように感じた。つまり、セダンなどの一般的な乗用車からSUVへ、ニーズはそのままに売れ筋がシフトしたようにも見え、その使い方はそれほど変わっていないのである。

 地域を限ってみると、ASEAN(東南アジア諸国連合)地域では、雨季になると道路環境が比較的良いとされる首都などの大都市でも道路冠水が珍しくなく、その点で最低地上高が高く、車両冠水リスクが低いとのことでSUVが好まれていると聞いたことがある。事実、先日タイの首都バンコクを訪れると、トヨタ・カローラクロスが大人気となっていたのだが、その理由のひとつがカローラ・アルティス(セダン)に比べ、車両冠水リスクが低いというものがあった。

セダンがステイタスの中国でもSUVが人気に

 中国はそもそもセダンの人気が圧倒的に高かった。少し余談となるが、地方の共産党幹部が会議などの所用で首都北京を訪れることがあるが、中国では共産党や政府、大企業などでは幹部だけでなく、中間管理職あたりまで広く運転手付きの専用車が用意される。しかも、聞いたところでは役職に応じて排気量や大きさで差がつけられているとのこと。

 中国では欧米ブランドの現地生産モデルや中国系メーカー車ではセダンだけでなく、SUVやミニバンでも同一車種で標準とロングホイールベースモデル(あるいは同一グローバルモデルとは異なる中国専用ロングホイールベースモデル)が用意されたりする。これは、運転は運転手に任せ、いわゆるお偉方が後席で足を組んで快適に乗ることができるようにするためのものとされている。

 そして、北京では一汽奥迪(アウディ)の地元になるので、政府関係者などは運転手付きのアウディA6やA4に乗っており、それを見た地方幹部が地元へ帰ってアウディのセダンに乗るようになったともいわれている。一方で、上海では上海大衆(大衆はフォルクスワーゲンの意味)の地元なので、大手企業や政府関係の機関では上海大衆パサートセダンが運転手付き車両で用意されることが多いようだ。

 さらに余談となるが、ミニバン(中国では高級商務車と呼ばれている)では、アルファードの人気は高いのだが、伝統的にやはり政府機関などで使われていることもあり、上海通用(通用はGMの意味)の別克(ビュイック)GL8が、ミニバンではもっともステイタスが高いとされている。

 つまり、共産党や政府、大企業幹部が運転手付きの黒塗りセダンに乗っているのを一般大衆が見て、憧れもあり(「いつかはああいうクルマに乗りたい」という気持ち)、それが、アウディやフォルクスワーゲンだけではなく、セダンが圧倒的に人気が高くなった理由のひとつではないかと筆者は考える。

 しかし、いまほど中国SUVがもてはやされる以前から、沿岸大都市の富裕層の間では、パーソナルユースで見てもメルセデス・ベンツやポルシェ、BMWなど欧州高級ブランドでもセダン系車種に乗るのが圧倒的に多かったのだが、地方都市へ行くと富裕層はレンジローバーやポルシェ・カイエンなどのSUVばかりに乗っていた。その理由のひとつは、ASEANと同じく道路冠水など道路環境の悪さがあったようだ。ただ、道路環境の悪さといっても、中国ならではのものもあったと聞く。

 沿岸都市と内陸との格差是正もあり、内陸都市でも都市開発が進み目抜き通りなどの道路整備は進むのだが、日本でいうところの区画整理が中途半端というか、道半ばというか、人目につきやすい部分のみ整備が進むことがよくあるそうだ。そのため、自宅から整備された道路へ出るまでの、ラストワンマイルといった部分が、ゴツゴツした岩も珍しくない悪路と呼んでいい未舗装路であったりするので、最低地上高の高いSUVが重宝がられているというのも理由としては大きいとのことである。

 世界的にSUVは人気が高いのだが、先進国ではファッションなど見た目で選ばれ人気が高い傾向が強いが、新興国では実用的な理由もあって人気が高まっているので、その人気の背景は微妙に異なっているようである。