オーストラリアとイギリスの研究チームが、ペトリ皿の中で培養した人間の脳細胞に卓球ゲームの「PONG」の1人用モードをプレイさせることに成功したと発表しました。

In vitro neurons learn and exhibit sentience when embodied in a simulated game-world | bioRxiv

https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.12.02.471005v2

A mass of human brain cells in a petri dish has been taught to play Pong

https://medicalxpress.com/news/2021-12-mass-human-brain-cells-petri.html

Mini-brains: Clumps of human brain cells in a dish can learn to play Pong faster than an AI | New Scientist

https://www.newscientist.com/article/2301500-human-brain-cells-in-a-dish-learn-to-play-pong-faster-than-an-ai/

Human brain cells grown in a petri dish learn to play Pong faster than AI | Daily Mail Online

https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-10322247/Human-brain-cells-grown-petri-dish-learn-play-Pong-faster-AII.html

人の脳細胞を培養して作られた原始的な脳組織である「脳オルガノイド」は、脳のメカニズムに関する研究や新薬の開発に役立てられています。また、過去の研究では豆粒サイズの脳オルガノイドから胎児のような脳波が検出されているほか、光に反応する目を発生させることに成功した事例もあります。

実験室で培養した人間の「ミニ脳」に目が生えてきたとの報告、光にも反応 - GIGAZINE

by Elke Gabriel

バイオテクノロジーと工学を融合させる合成生物学の研究をしているオーストラリア・Cortical Labsの研究チームは、これまでSF小説の世界にとどまっていた生物学的人工知能(Synthetic biological intelligence:SBI)の可能性を探るべく、人の細胞を機械の中で脳に培養する研究を行いました。

研究チームはまず、ヒトのiPS細胞から作成された細胞の塊を、多数配置された微小電極の上で脳細胞として培養して脳と機械が相互作用できる「DishBrainシステム」を構築しました。

そして、この「DishBrainシステム」にPONGの1人用モードをプレイさせたところ、わずか5分で遊び方を学んだとのこと。研究チームによると、現行のAIが同じことを学ぼうとすると90分はかかるそうです。

実際に「DishBrainシステム」がPONGをプレイしている様子は以下のムービーから見ることができます。

Human brain cells in a dish learn to play Pong - YouTube

これが、今回研究チームが開発した「DishBrainシステム」です。「DishBrainシステム」に搭載された脳細胞は、他の脳細胞を刺激したり、他の脳細胞の刺激を読み取ったりできます。

「DishBrainシステム」は、PONGのボールがどこにあるかを示す電気信号を頼りにパドルを操作して、うまくボールを打ち返す方法を学習していきます。

その結果、「DishBrainシステム」は10数回のラリーでゲームの遊び方を把握したとのこと。それに比べて、AIがPONGを学習するには、ラリーを5000回繰り返す必要があるそうです。

「DishBrainシステム」について、論文の筆頭著者でCortical Labsの最高科学責任者のBrett Kagan氏は「この脳がPONGでパドルを動かす時、『彼』は自分自身をパドルだと思っていることでしょう。これはちょうど、映画『マトリックス』の仮想世界に生きているようなものです」とコメントしました。