ノーベル賞受賞の理論で解説…「株で損をしてしまう」根本理由

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下がり続ける株価……。株を売ったほうがいいのに、なかなか売れずに、損失がどんどん膨らんでいくのはなぜなのでしょうか。その理由は、ノーベル経済学賞受賞者による理論のなかにありました。なぜ人は株を塩漬けしてしまうのか、そしてどうすれば塩漬けせずにいられるのか、みていきましょう。※本連載では、AI技術を用いた株価予測ソフトを開発する、株式会社ソーシャルインベストメントでトレーダーとして活躍する川合一啓氏が、個人投資家が株式市場で勝ち続けていくための極意について説明していきます。

行動経済学的に、そもそも「ロスカット」は難しい

上がると思って買った株が下がり続けている場合に、みなさんはどうしますか?

じっくりと再上昇を待つのも1つの手ですが、一定の損失は諦め、どこかの時点で売却してしまう、いわゆる「ロスカット」も1つの手です。しかしロスカットに失敗した場合は、再上昇の機会を逃したり、下落し続けて損失を広げたりしてしまいます。

そんなロスカットの難しさを、まずは行動経済学から考えてみましょう。

行動経済学とは、人間が常に合理的な行動をするという前提を疑い、心理学的に観察される人間の行動を取り入れた経済学のことをいいます。そんな行動経済学を切り開いたとされる「プロスペクト理論」によれば、人間は収益よりも損失の方に敏感に反応しやすいそうです。

たとえばこの理論は、買った株が値上がりした場合、人間はそこから損をしないよう、利益確定のために早く売却しがちだといいます。一方、その株が値下がりした場合、人間はそれを取り戻すため、値が戻るのに固執しがちだといいます。結局、値上がりしたらすぐに売り、値下がりしたら「塩漬け」にしてしまう傾向が人間にはある、というのです。

これはあくまで理論であり、個人差もあれば状況次第の面もあり、人間の行動をすべて説明しきるものではありません。

しかし、「自分にもその傾向がある」「自分もそういう心理状態になる」と思う人は多いのではないでしょうか。

確かに人間は、収益よりも損失に敏感だという性質を持っているのかもしれません。そしてそれが、株式投資におけるロスカットの根本的な難しさになっているのかもしれません。

なお、プロスペクト理論は1979年にアメリカのカーネマン氏によって発表され、同氏は2002年にノーベル経済学賞を受賞しています。

株を塩漬けしている間に、大損(※画像はイメージです/PIXTA)

買う時に「ロスカットする株価」を決めておく

では、人間の性質としてロスカットがそもそも難しいのならば、どうすればよいでしょうか?

その解決策は、「自分の感情を抑制し、機械的に行動する」ことでしょう。具体的には、その株を買う時に、ロスカットする株価をあらかじめ決めておけばよいのです。

もちろん株価というのは気まぐれに上下しますので、買った後に値下がりすることは頻繁にあります。しかし、買う時に「どう想定してもこれ以下になることはない」というラインはあるでしょうから、それ以下になってしまったらそれは、「誤った想定」であり「買ったことが失敗」だったのです。

ですから、そうなったらそれを潔く認め、すぐにロスカットをして、その資金を別の用途に使うのが賢明だといえるのです。

おそらく、株式投資で一度も失敗をしない人はいないでしょう。したがって、失敗したらそれを認め、被害を最小限にし、その失敗を次に生かすことが、投資家として成長していくためには避けて通れない道なのではないでしょうか。

「おかしい…」と思ったらその銘柄を再評価

また、ロスカットする株価まで下落しなくても、「値動きがおかしい」「なぜこんなに下がっていくのか」などと疑問を感じたら、その銘柄を再評価することをおすすめします。特に短期的に考えると、株価というのは気まぐれな市場の評価であり、企業の本質的価値とは別のものであるともいえます。

確かに、基本的に良い企業には高い株価がつきますが、一方で、企業の価値とその株価にギャップが生じることは珍しくありません。そうでなければ、バブルも暴落も起きず、株式市場というのはとても安定したものになっているはずです。

ですから株価が値下がりしておかしいと思ったら、もう一度その企業の、「株価」ではなく、「価値」を見直してみることが、転ばぬ先の杖となります。

もちろん、その結果「自分の買い値は割高ではない(価値と比べて株価が高すぎるわけではない)」と確認できたならば、所有し続けてもよいでしょう。しかし、「自分の買い値は割高だった(価値以上に株価が高すぎる)」と気づいたならば、さらなる値下がりの可能性があります。ですからその場合は、その株価でのロスカットも検討したほうがよいしょう。

■まとめ

行動経済学的に、人間にはそもそもロスカットが難しい生き物なのです。ですから、買う時点でロスカットする株価をあらかじめ決めておき、その価格になったら機械的に売るのが、ロスカットのコツとなります。

また、そこまで株価が下落しなくても、おかしいと思ったらその銘柄を再評価し、所有し続けるか、その株価でロスカットするかを検討するのもよいでしょう。

そしてどちらにせよ、自分の失敗を認める勇気がロスカットには必要なのです。