「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今日の漢字は「楠(クスノキ)」。

高さが三十メートルほどに成長することもある堂々とした常緑樹です。



「楠」という漢字は「木へん」に「南」と書きます。

同じ樹木を、中国では「木へん」に「第一章、第二章」の「章」と書くのですが、平安時代の辞書『和妙類聚抄』で、「木へん」に「南」を使う字に「くすのき」という訓を与えたため、こちらを広く使うようになったといいます。

「南」という字をあてたのは、比較的暖かい地方、本州中南部から四国、九州、沖縄といった南方に生える木であることから。

また「南」という字は「柔らかい」というイメージをもち、加工しやすく、刃が通りやすい木材であることとも関連性がありそうです。

実際「クスノキ」はしなやかな材質で害虫に強く、耐水性もあることから、仏像などの彫刻のほか、家の柱や土台、家具にも使われてきました。

なお、「楠」の語源は「奇妙」の「奇」に「し」と書いて「くすし」と読む古語が由来。

人知を超えるほどすばらしいこと、類まれなことを意味する言葉です。

そんな「奇木(くすしきき)」が変化して「クスノキ」になったという説があります。

また、防虫剤として使う樟脳や、カンフル剤・鎮痛剤などにも利用されることから、「薬の木」で「クスノキ」という説もあるようです。

夏の森の中を歩く、いにしえの旅人。

湧き水が見つからないまま進み続け、照りつける太陽に体力を奪われていきます。

先を急ぐ一心で、歩き続けるうち、ふと、どこからか漂ってきた強い香りに意識を覚まされます。

見上げた先に立つのは、つややかな緑の葉をゆらす堂々とした大木。

強い日差しをさえぎる木の下に腰をおろしたその人は、独特の涼やかな香りに包まれながら、大きくゆったり、深呼吸。何度かそれを繰り返すうち、歩きだす力がよみがえってきます。

「感じて・・・、漢字の世界」。

今日の漢字は「楠」。四国や九州など、暖かい地方に多く自生していたため、

木へんに「南」と書くようになったといわれています。

ではここで、もう一度「楠」という字を感じてみてください。

「クスノキ」はかなりの大木になるのですが、実は、若木の時分はゆっくり成長するといわれます。そこから、歩みは遅くても堅実に成長を遂げて大成する学問を、「楠学問」と呼ぶのだそうです。

今年も早や半分が過ぎ、いよいよ折り返し。

思い通りの成果を出せていないと、気持ちばかりが焦ります。

でも、そんなときは、森の奥で静かにたたずむ楠の姿を思い浮かべてください。

苦しみもがいて過ごすことも、時間をかけてじっくり物事にとりくむことも、立ち止まって休むことも、あなたの成長にとって必要な時間。

すべてがあなたの人生です。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。

その想いを受けとって、感じてみたら・・・

ほら、今日一日が違って見えるはず。

* 参考文献 『花の日本語』(山下景子/幻冬舎文庫)

     『なぜ「烏」という漢字は「鳥」より一本足りないの?』(蓮実香佑/主婦の友社)

7月13日(土)の放送では「石」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。



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聴取期限 2019年7月14日(日) AM 4:59 まで

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<番組概要>

番組名:感じて、漢字の世界

放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット

放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜8:20〜8:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)

パーソナリティ:山根基世

番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/