優勝のチャンスはまだある! 川崎MF中村憲剛「とにかく鹿島を叩く」

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 勝ち点3を積み上げていれば――。悔やんでも悔やみきれない結果だった。主将のMF中村憲剛は、「結果自体はあっちゃいけないこと。月並みですけど、本当に悔しいです」と大逆転負けを喫した試合を静かに振り返った。

 つかみかけた年間首位の座はスルリとこぼれ落ちた。川崎フロンターレは3日、明治安田生命J1リーグ・セカンドステージ第17節でガンバ大阪と対戦。6分にFW長谷川竜也、18分にMF三好康児の得点でリードを広げ、前半は試合を優勢に進める。このまま勝利で終えることができれば、横浜F・マリノスに引き分けた首位・浦和レッズに勝ち点で上回り、逆転で年間首位に立てるはずだった。

 それが、わずか1分間で狂ってしまう。65分、DF藤春廣輝に1点を返されると、さらにその1分後、MF井手口陽介に追加点を許した。「3点目がなかなか入らないんだったら、しっかり締めるところは締めないといけなかった」。嫌なムードを振り払うように、スタンドのサポーターが声で選手たちを鼓舞する。誰もが、今季幾度となく絶望を歓喜に変えた“等々力劇場”を期待したことだろう。しかし、その後はゴールネットを揺らすことができず、終わってみれば2−3の逆転負け。試合終了を告げる主審のホイッスルが虚しく響いた。

 中村が「楽な試合は一つもなかった」と語るように、川崎はシーズンを通してケガ人に悩まされ、台所事情が苦しい中での戦いを強いられた。自身も負傷で何度かチームを離脱したが、チームメイトと「タイトルへの欲をパワーに変えて」戦い、9ゴールを記録。総合力で積み重ねた勝ち点「72」は、J1としてクラブ史上最多となった。それでも、年間首位にはあと一歩及ばなかった。

「勝って、進む。それだけ」

 まるで自分に言い聞かせるように、中村は力を込めた。そう、これで戦いが終わったわけではない。12日に天皇杯ベスト16の浦和戦、23日にはチャンピオンシップ(CS)準決勝の鹿島アントラーズ戦が待っている。ともにホーム開催というアドバンテージはあるものの、一発勝負だ。中村は「これからは別物の戦いになってくる」と気を引き締め、CS準決勝については「とにかくホームで鹿島を叩く」と息巻く。「こういうチャンスはなかなかないと思っている。来年はまた1シーズン制に戻る。本当だったら2位で終わりだけど、優勝できるチャンスが転がっている。最後までやり切りたい」。悲願の初タイトルに向け、最後の力を振り絞る。

取材・文=高尾太恵子