ハリルホジッチ初陣から約1カ月…合宿前に存在感示した国内組は?

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文=戸塚啓

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督率いる日本代表が、大型連休明けの国内合宿を予定している。5月12日から13日までの二日間で、招集の対象は国内組だけだ。

 代表チームのキャンプと言えば、誰もがピッチ上での戦術確認を連想するに違いない。だが、練習の効率を考えても、ピッチに立っていられるのは2時間が限度だ。そもそもたった1日で戦術を詰め込もうなどとは、ハリルホジッチ監督も考えていないだろう。J1、J2各クラブのオフと重なる時期だけに、ピッチ上で入念なトレーニングをするとは考えにくい。

 むしろ重要なのは、オフ・ザ・ピッチの時間である。ミーティングはもちろん食事やフリータイムをともにすることで、監督と選手、監督とスタッフ、スタッフと選手、選手同士が、互いにコミュニケーションを深めていくのだ。第一声が「はじめまして」ではなく「久しぶり」になる関係を増やすことは、戦力に厚みを持たせるためにも大切である。

 招集メンバーはどうなるだろうか。

 3月のテストマッチでバックアップメンバーにリストアップされた国内組は、その後も安定したパフォーマンスを見せている。谷口彰悟と車屋紳太郎(川崎フロンターレ)、米本拓司(FC東京)らは、招集にふさわしい。

 Jリーグで存在感を示している選手もいる。

 まずは金崎夢生(鹿島アントラーズ)だ。ここまで7試合を消化した明治安田生命J1リーグで、彼はポルトガルでの日々を成長に結びつけたとの印象を与えている。サイドアタッカーやトップ下の性格が強かったかつてとは違い、ストライカーとしての資質を伸ばしている。前線のポジションなら漏れなくこなせる順応性を身に付け、球際の攻防にもひるまない。シーズン序盤にもっともアピールした選手と言っていい。

 リオ五輪出場を目ざすU−22世代にも、代表を射程とする選手はいる。

 手倉森誠監督のもとでダブルボランチを組む遠藤航(湘南ベルマーレ)と大島僚太(川崎)は、フル代表の刺激に触れてほしい選手だ。クラブでは3バックの右サイドを定位置としてきた遠藤は、今シーズンから3−4−3の2シャドーの一角でも起用されている。追いかける展開でのオプションのひとつだ。攻撃的な才能は以前から掘り起こされており、守備的なポジションから積極的に攻撃に関わることができる。ミドルシュートの精度も高い。

 大島は圧倒的な技術を持つ。オンザボールの局面で違いを生み出せる選手で、ボールを奪いにいく姿勢にも磨きがかかっている。ただ、潜在能力をすべて解放しているようには見えない。

 代表合宿の参加によって、二人に成長速度を上げてほしい。U−22世代からは、岩波拓也(ヴィッセル神戸)も招集に値するプレーを見せている。

 ベテランはどうするべきか。

 32歳の大久保嘉人(川崎)は、今シーズンも好調だ。「チャンスを作るのはチームの力で、チャンスで決めるのは彼の力」という風間八宏監督の言葉どおり、好調なチームのなかでしっかりと結果を残している。現時点では国内トップクラスのストライカーだ。

 大久保に決定機を提供する中村憲剛も、心身ともにコンディションはいい。自身の技術をもう一度高めることを意識してきたことで、34歳にして「成長を実感できている」と話す。ボランチも2列目も人材は豊富だが、いまだからこそ試してみたい選手だ。

 永井謙佑と川又堅碁が注目を集める名古屋グランパスでは、31歳の矢野貴章が元気だ。ディフェンダーにコンバートされたのは昨季で、守備力にはどうしても物足りなさが残る。ただ、右サイドバックやアウトサイドで豊富な活動量を見せつけ、チームの戦略において重要な役割を担っている。フィジカルコンタクトを嫌わず、タッチライン際を何度もアップダウンできる特性は、日本代表への活用を検討してもいいだろう。

 日本代表のポジションは、譲り受けるものではない。選手自身が掴むものだ。ベテランにチャンスが与えられてもいい。あらかじめ誰が選ばれるのかが予想できるような「管理された競争」ではなく、代表にふさわしい選手がしのぎを削る日々が、強い代表チームを作り上げていくはずである。