黒田博樹【写真:田口有史】

今季最終登板でペティット氏に去就についての助言を求めていた黒田

 ヤンキースからフリーエージェント(FA)となっていた黒田博樹投手の広島復帰の決断に影響を与えたとされる偉大な先発左腕との会話が、改めて全米で話題になっている。MLB公式サイトが黒田の日本球界復帰を特集し、ヤンキースでの最後の登板となった9月25日のオリオールズ戦(ヤンキースタジアム)での一幕を紹介している。

 今季限りで現役引退したデレク・ジーター内野手にとっても本拠地最終戦となったこの試合で、黒田は8回3安打2失点無四球という素晴らしいピッチングを披露。勝利投手の権利を手にマウンドを降りたが、後続が打ち込まれて勝敗はつかなかった。

 ヤンキースでは打線の援護に恵まれず、見殺しにされることが多かった黒田にとっては、ニューヨークでのキャリアを象徴するような不運な幕切れだった。だが、この試合前に去就決断に大きな影響を与えたとみられている偉大な先達との会話があったという。

 かつての先輩で、ヤンキースでは5度のワールドシリーズ制覇に貢献したメジャー通算256勝の大投手、アンディ・ペティット氏に対し、黒田はロッカールームで去就について助言を求めたことを明かしていた。

「昨日の試合前にアンディと去年のヒューストンでの彼の最後のピッチングについて語り合いました」

 黒田よりも2歳年上のペティットは、2010年限りで1度は現役を引退しながら、2012年シーズンに復帰。そして、2013年9月28日に迎えた“正真正銘”の現役最後のマウンドは見事だった。

黒田と同じように余力を残しながらメジャーを去ったペティット氏

 2004〜06年に在籍したアストロズとの敵地での一戦は、9回5安打1失点と圧巻のピッチングを見せ、2−1で完投勝利。長年、ヤンキースの先発ローテーションを支えた左腕の有終の美は、黒田の目にも焼きついていた。

 黒田自身も常々「お手本」と語っていたペティット氏は去就に迷う後輩にアドバイスを送り、自らの引き際に関しては「完全に満足している」と言い切ったという。

 現役時代にはジーター、マリアノ・リベラ、ホルヘ・ポサダとともに「コア4」と呼ばれ、黄金時代を支えたペティット氏。すでに伝説的存在となりつつあるが、キャリア最終年も11勝11敗、防御率3.74と活躍し、その数字は黒田の今季成績と酷似している。

「一つ言えることは、けがをせずにシーズンを通じてローテーションを守れたことが、唯一満足できたと言えること」

 ヤンキース最後のシーズンをこう総括した黒田は、今季32試合に先発し、11勝9敗、防御率3.71。故障者続出のヤンキース先発で唯一、ローテーションを守り続けた。来季もピンストライプの名門で大黒柱となれる実力を維持しており、他球団からのオファーも伝えられるほどだった。

 余力を残しながらメジャーから去った先輩の「完全に満足している」という一言に近い心境に、7年間のメジャー人生を過ごした黒田もたどり着けたのだろうか。それとも、「完全に満足している」という気持ちを今後、プロのキャリアをスタートさせた広島で感じたいのだろうか。ペティット氏のアドバイスが、日米を驚かせた黒田の決断に何らかの影響を与えていたことは間違いないだろう。