『YouTubeをビジネスに使う本』の著者、熊坂仁美さんが考える「今、動画に注目すべき理由」【インタビュー】
Facebookが普及しインフラ化した今、共感を得られやすいコンテンツとしての「動画」に注目が集まっている
― 熊坂さんはFacebookの先進性にいち早く注目され、日本初のFacebookビジネス書『Facebookをビジネスに使う本』がベストセラーとなったご経験をお持ちですが、今回、動画マーケティングに関する書籍を出版されたのはどういった背景があったのでしょうか?
『Facebookをビジネスに使う本』を書いたのは2010年で、当時はまだFacebookという言葉すら十分に知られていない時代でした。それから4年が経ち、今ではFacebookの浸透は進み、オンライン上での「インフラ」としての地位が確立されてきています。
出版当初は「Facebookをやりましょう」というモードだったのですが、今は日常的にFacebookを運用している企業が増えてきていますので、今度は「そこにどのようなコンテンツを上げていくのがいいのか」という問題が出てきています。
そこで私が着目したのが「動画」です。
Facebookに上げるコンテンツとしては、ブログや写真など色々と考えられますが、Facebookの浸透とともにユーザーの目はどんどん肥えてきていて、リッチなコンテンツを望むようになってきていますし、通信環境が整備されたことで、PCはもとよりスマホでも快適に動画コンテンツを視聴できるようになっています。Facebookと動画の相性がますます高まっていると感じています。

しかし、動画をコンテンツとして用意しようと思っても、「制作が難しい」「予算がかかる」「誰に頼めばいいか分からない」など、中々手が出しづらいのが現状だと思います。
そこで、様々な手法と事例をお伝えすることで、もっと多くの方に動画コンテンツを作ることを身近に感じてもらえないかと思い、今回の『YouTubeをビジネスに使う本』を執筆しました。
― Facebookのコンテンツとしての「動画」という視点ということですね?
そうですね。たまに「Facebookは古くて、次はYouTubeという見解なのか」と誤解をされるのですが、そうではありません。新しいメディアが出てきた時には、旧来のものに置き換えられるのではなく「積み重なっていく」ものだと考えています。
あくまで、「Facebookをベースに、そのためのコンテンツを作りましょう。それにはYouTubeをうまく活用することが向いていますよ」という考え方ですね。
Googleの動きにより、SNS化するYouTube

− YouTubeを運営するGoogleにはGoogle+(以下、g+)というSNSがありますが、g+についてはどのように捉えていらっしゃいますか?
g+についても、FacebookとYouTubeとの関係と同様に、相反するものではなく役割を分けて共存するものだと考えています。
YouTubeはそれまで「コンテンツの置き場」という位置づけが強かったですが、2012年頃からGoogleは「すべてのGoogleサービスをGoogle+でつなげる」という目標のもと、2013年に、いよいよg+とYouTubeを連携しました。このことで、YouTubeはSNS機能を手にしました。
例えば、動画へのコメントがg+ユーザーのみになることで、落書きのようなコメントが少なくなり、良質なコミュニケーションが徐々に生まれるようになってきました。
また、YouTubeチャンネルの購読者が一定以上いるとYouTubeの管理画面にて自分のチャンネルの「TOPファン」を確認できるようになります。

このTOPファンは自分の動画を見に来てくれる人の中でも、アクティビティを多く残してくれるなどの影響力の強い人たちのことなのですが、こういったTOPファンたちをg+でグループ化することで、エンゲージメントが高いファンたちだけに見せる動画を設定でき、ファンのコミュニティを作ることも可能になります。
さらに企業活用という点で見ても、YouTubeで企業のチャンネルを持つにはg+のアカウントが必要になりますので、企業がYouTubeマーケティングを行うためにはg+は必須になっています。
動画は自社制作か、制作会社への外注か
― 今回の書籍ではインハウス(自社制作)での動画活用事例が多数紹介されていますが、インハウスとアウトオブハウス(制作会社への外注)との関係性はどうあるべきだとお考えですか?
冒頭でお伝えしたように、私はFacebookをはじめとしたソーシャルメディアのコンテンツとして「動画」が非常に相性がよいものだと考えています。
例えば、本の中でも事例として紹介していますが、ナカムラ社が運営する「まいあめ工房」はインハウスとアウトオブハウスを上手く組み合わせています。
まいあめ工房は、2014年の年明けを機に、本格的に動画を取り入れたばかりですが、この時の動画は外注。「合格祈願の飴」のプロモーション動画を公開したところ、すぐに新聞2件、地元テレビ局1件から取材依頼があり、さらには新聞のWEB版がYahoo!ニュースに取り上げられ、Yahoo!のトップページに写真が掲載されるという大きな反響があったそうです。
▼まいあめ工房のPR動画
しっかりと魅せたい場合やクオリティを求める場合など、ここぞという場合にはやはりインハウスではなく制作会社を使ってしっかりと作ってもらったほうがいいと思います。最近はLOCUSさんのように手軽な価格で質の高い動画を作ってくれる会社も出てきていますし。
一方で、ソーシャルメディアはユーザーと継続的に接点を持ちながら、コミュニティを育てていくことが成功のポイントですから、コンテンツとして動画を活用する場合でも、1本作ってUPして終わりではなく、動画を用いて、継続的に接点を持っていく必要があります。
まいあめ工房の場合、お店のファンを作るために、今後、職人さんの日常を動画でアップしFacebookやブログなどと連動させていく取り組みをしていくようです。その中で職人さんの成功や失敗や苦労などを見せ、彼らが育っていく姿とともに視聴者をファンとして育てていこうとしているのですが、その場合は、常に動画の制作を外注していたのでは相当コストがかさんでしまいますし、タイムリーな情報発信という面でもインハウスでの制作をおすすめしています。
やはり用途や目的に応じてインハウスとアウトオブハウスを正しく使い分けることが大切なのだと思います。
海外と日本の動画マーケティングの違いとは?
― 熊坂さんは頻繁に海外にも情報収集に行かれるなど、海外のマーケティング情報についてもよくご存知だと思いますが、海外と日本での動画マーケティングの状況はどう違うと感じていますか?
やはり海外の方が動画マーケティングは全般的に先を進んでいて盛んですね。
海外のマーケティングカンファレンスにも毎年足を運んでいますが、そこでは、「SEO」「リスティング広告」「ソーシャルメディアマーケティング」などと並んで、必ず「ビデオマーケティング」のコーナーがあります。
決して特別大きなコーナーがあるわけではないのですが、当たり前のように他のカテゴリと並んでビデオマーケティングというカテゴリが存在していますね。
これは、動画マーケティングがマーケティング手法の中で独立した特別な存在なのではなく、様々なマーケティング手法の中の一つとして位置づけられていることの現れだと思います。
実際に本の中で動画マーケティングの先進・成功事例として紹介している「ModCloth」や「GoPro」も、動画マーケティングだけをやっているわけではなく、ソーシャルメディアの使い方が非常に上手いなど、デジタルマーケティング全般に非常に力を入れて頑張っている会社でもあります。
左:ModCloth 右:Go ProのYouTubeチャンネル
― では、日本での今後の動画マーケティングはどのようになっていくべきだと考えていますか?
私が今回の本を書いた理由でもありますが、「まずは動画を作ってみましょうよ」ということです。FacebookやTwitterと違って、動画の場合まずはコンテンツを作らないことには始まりません。皆さん「動画をやってみたい」という興味はあるようなのですが、作る前の段階で止まってしまっている人が非常に多いように感じます。
私自身、今回の本を出すにあたってティザー動画を作りましたが、正直なところ本のティザー動画がどれだけ効果があるのか不安でした。でも実際にUPしてみると、思っていた以上に好評で、シェアしてくださる方が多いのに驚きました。再生回数も3週間で3000回を超えています。本に限らず、これから新商品のリリースに際してプロモーション動画を作る企業が増えていくのではないでしょうか。
▼『YouTubeをビジネスに使う本』ティザー動画
やはり動画は作ってUPしてみれば、見てもらえますし、反応も返ってきます。動画のいいところは、今こうして話をしている間にも、どこかで誰かが再生して見てくれたり、シェアしてくれたりと、自分のメッセージの分身のように勝手に一人歩きをしてくれるところです。
営業活動やセミナーなどでは、その場で伝えるのが限界ですし、Facebookでもタイムラインの中で流れていってしまいます。しかし動画は、しっかりとコンテンツとして残り、関連動画として表示されたり、FacebookやTwitterでシェアされたりと、時間も場所も関係なく自分で広がっていってくれます。非常に効率のいいプロモーションツールだと思います。
― 最後にmovieTIMESの読者にメッセージをいただけますでしょうか。
これから動画の時代と言われていますし、私自身、その流れを肌で感じています。動画という優れた表現ツールを手に入れると、多くの人に共感を得られやすくなります。ぜひ本をご参考いただき、まずは、どんな形でもよいですから、最初の1本を作ってみてください。
― 本日はありがとうございました。

