舘ひろし、30年越しの“南条弘”で『国宝』黒川想矢を共演に指名 受け継がれる石原プロの「イズム」
■舘がつい「うちのせがれ」と紹介 黒川は「うれしいけど、恥ずかしい」
インタビューカットの撮影を先に終えた舘が、黒川の撮影を近くで「いいよね、想矢は目がいいよね」と言いながらニコニコと見守る。一方、カメラが趣味の黒川は、カメラマンのレンズに興味津々。撮影が終わると、部屋の隅から自分のデジタル一眼レフカメラを持ち出した。インタビューが始まるまでの間、舘の横顔をレンズ越しにうれしそうに覗く黒川。短い時間にも、互いへの“好き”が伝わってくる。
――今年、別の取材で黒川さんにお話を伺った際に、過去に何かのパーティで舘さんが黒川さんのことを「うちのせがれ」と言い間違えて紹介されたことがあると。そのときのことを、黒川さんがすごくうれしかったとお話されていました。
舘:なんのとき?
黒川:NEIGHBORHOODとコラボしたイベントのときです。たぶん言い間違えたんです。
(昨年、舘ひろしデビュー50周年を記念して、同ブランドとコラボレーションした。)
――言い間違えるくらいのお気持ちだったのかなと思いました。
舘:そうですね。気持ちですね。でもお父さんに怒られるんじゃないかな。
黒川:すごくうれしかったです。恥ずかしいけど(笑)。
舘:孫でもいいくらいだもんね。
――昨年の舘プロの正月餅つき大会の際には、黒川さんは「また舘さんと共演したい」とお話されていました。『免許返納!?』で早くも実現ですね。
黒川:うれしすぎてやばかったです。
――舘さんから黒川さんに本作への出演をお願いされたとか。
舘:想矢は勉強が忙しくてね。想矢のマネージャーからは「スケジュールが取れない」と言われたんですよ。でも、「これだけはなんとか」とお願いして。「想矢でないとダメだ。これで成績が落ちたら僕のせいだ」って(笑)。どうしても、今回の映画に登場する来宮亮の役は、想矢でやりたかったんです。
――黒川さんのどんなところが、亮役に合うと思われたのですか?
舘:想矢は、気持ちでお芝居をするんです。そこがすごく良くて。「亮という役は、想矢でないとできない」と本当に思ったんです。こなす芝居をしないから。そこが想矢の魅力だし、いいところだと思っています。
黒川:うれしくて、頑張らないとなと思って、本当はもうちょっとちゃんとお芝居の勉強をしてからご一緒したかったんですけど。
舘:お芝居の勉強なんてする必要ないです。
■「気持ちが大事」――受け継がれていく石原プロ時代からの「イズム」
――舘さんは石原プロ時代から「芝居をするな」と言われて育ったと。
舘:そうなんですよ。小手先の芝居じゃなくて、気持ちで演じろということを言われ続けてきました。想矢を見ていると、まさにそれを感じるんですよね。気持ちをすごく大事にしている。変なテクニックに走ったりせず、気持ちを表現しようとするエネルギーがすごくあると思います。
黒川:僕は演技が“できない”っていうのがあって。(気持ちでも芝居でも)どちらもできるというのも、すごくステキだなと思うんです。けど演じようとすると、なんか自分の中で違和感というか、痒くなっていっちゃって。だから演技をしないというのは自分に合っているというか……。それしかできないんです。
舘:偉いでしょ。勉強が必要なのは僕の方ですよ。今回の現場でも、ずっと目を離さずに研究させていただきました。びっくりしてしまいますよね、本当に。学ぶことが多くて。
黒川:いやいや、怖いです(苦笑)。そんなことないですよ。
舘:偉いでしょ。天才ですよね。
黒川:天才じゃないです(笑)。
■南条弘こと舘が名曲「泣かないで」を熱唱!
――本編には、舘さん、というか南条弘がスナックで「泣かないで」を歌うシーンがあって、すごく得した気分になりました。しかもスナックのママ役の南野陽子さんとのデュエットまで。
舘:驚きました? 僕もね、歌うんだと(笑)。
黒川:あのシーンが一番心に残っています。大好き。
舘:あんなに長く撮るんだと思って、僕もびっくりしましたよ(笑)。
――もともとの台本に書かれていたのですか? 舘さんから提案を?
舘:僕から提案なんてしませんよ。恥ずかしくて。あれはプロデューサーたちが勝手に詰め込んだんです(笑)。台本ではもうちょっと短いと思っていたのに、フルで歌えと指定されて。なんであんなに長くなったのかわからないんです。
黒川:亮は、スナックで盛り上がっているみんなを見ていて、最後に「なんだこれ」と言うというお芝居でした。でも本当は、(共演の)八嶋智人さんみたいに「チャイニーズティー!」って合いの手を叫びたくて。
――あはは。
黒川:現場が本当に楽しそうで。舘さんも楽しんでやられてました。
舘:いや、恥ずかしさでいっぱいです(笑)。
――プライベートでも歌われたりされるのでしょうか。
舘:カラオケに行ったりしていましたからね。
――カラオケで「泣かないで」を歌うことも?
舘:歌うときもあります。このところは行ってないですけど。昔は結構行きましたよ。よく行くお店で、渡哲也さんと二人でずっと歌っていたなんてこともありましたね。
■舘が断言「この映画を通して伝えたいのは、愛」
――黒川さんは、いつも「舘さんみたいに優しい人になりたい」とお話されています。今回、改めて現場でご一緒して、どんなところがステキでしたか?
黒川:嘘がない方なんです。でも、やっていることはフィクションの世界での嘘なんですよね。それがすごいなと思います。それから僕が舘プロに入るきっかけになったのは、子役の頃に舘さんと時代劇(『剣樹抄〜光圀公と俺〜』2021)でご一緒したことなんですけど、そのときに本当に子役の僕に対しても、同じ目線で俳優として話してくださって。すごく感動して嬉しかったんです。今回の舘さんもそのときのままですし、さらに今回は現場でいろいろ教えていただきました。
――たとえばどんな。
舘:教えることなんて、僕にはありませんよ。
黒川:このシーンはこうやってみようとか、現場でもそうですし、こうした取材の場で、改めて言葉にしてもらうことで、いろんなことが「そういうことだったんだ」と腑に落ちる瞬間があります。僕はまだキャッチできていないことが多いんだろうなと思います。
――完成した映画をご覧になって、おふたりが感じたことはありますか?
黒川:役を好きになったり、その作品を好きになるのって、撮影が終わってからだったりということもあって。改めて亮のことが好きだったんだなって感じました。
舘:自分の役は好きじゃないとやらないと思いますよ。嫌いだったらきっとやらない。僕は。そういう役はお断りすると思います。自分の役も愛せないんじゃ、人を愛せない。
黒川:そうですね。愛を持っていたから、その役やその作品が好きになれたのかなと思います。
舘:この映画を通して伝えたいのは、やっぱり愛なんですね。いろんな愛。人への愛、車への愛、映画への愛。どんな映画もテーマは愛で、愛に満ちていればいい映画になると思っています。
(取材・文:望月ふみ 写真:上野留加)
映画『免許返納!?』は6月19日より公開。
