口にくわえた筆で作品を仕上げる田中さん(広島県府中町で)

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 何らかの理由で手の自由を失い、口や足を使って絵を描く芸術家たちの作品展が、広島県府中町の「イオンモール広島府中」で開かれている。

 12日には、交通事故で首から下が動かなくなった芸術家の田中潤也さん(27)が口を使って絵を仕上げる実演も行われた。来場者からは、「元気をもらった」「力強さを感じた」といった声が上がっていた。(村上慶太朗)

 同モールで14日まで開催中の「絵画展 口と足で表現する世界の芸術家たち」の会場には、世界13か国の芸術家による40点以上の作品が展示されている。「三菱電機ビルソリューションズ」(東京)が主催。同社が「口と足で描く芸術家協会」の活動に賛同し、1992年から全国各地で開いている。

 実演では、田中さんは口に筆をくわえ、首や唇を小刻みに動かして絵を描いていった。テーマは、サッカー・ワールドカップ(W杯)。4年に1度の特別な祭典を表現しつつ、たった一度の出会いについて感謝の思いを込めた。

 愛媛県で生まれ育った田中さんは、小学2年生のとき、近所の海に釣りに行こうとして軽自動車にはねられた。駆けつけた父・啓雅さん(53)が心臓マッサージを行って一命は取り留めたが、首から下が動かなくなった。

 小学4年生の頃、習字大会で先生から「何か書いてみて」と筆を渡された。「汚いと思われるかも」と思ったが、口にくわえた筆で苦労しながら「友」という字を書き上げ、友達に「すごいやん」と驚かれた。字も書けるなら絵も描けるはずだとして、表現する喜びに没頭していった。

 田中さんは「生でしか伝えられないことがある」と、実演には積極的な姿勢を示す。会場を訪れた広島市の男性(79)は、「口で描く力強さが伝わり、感動した」と話した。

 「広島で自分の絵を見てもらいたいとずっと思っていた」という田中さん。「絵は世界共通の言葉。僕の描いた絵を見て、しんどいときも頑張ろうと思ってくれたら」と語った。