「ビタミンD欠乏症」は“落とし穴”?なりやすい人の『症状』と効果【医師監修】
ビタミンD欠乏症は、骨の健康だけでなく、免疫機能や精神的な安定にも影響をおよぼす栄養不足の状態です。倦怠感や骨の痛みといった症状は、ほかの不調と重なりやすく、気づかれにくい面があります。現代の生活スタイルや日光不足が欠乏を招く背景についても、あわせて解説します。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
ビタミンD欠乏症とは何か|身体に起きることを知る
ビタミンD欠乏症は、身体の中でビタミンDが不足した状態を指します。単に「栄養が足りていない」という問題にとどまらず、骨・筋肉・免疫・ホルモンバランスなど、身体の多くの機能に影響をおよぼすことが知られています。このセクションでは、ビタミンD欠乏症の基本的な仕組みと、身体に起きる変化について解説します。
ビタミンDの役割とそのメカニズム
ビタミンDは、脂溶性のビタミン(油に溶けるタイプのビタミン)の一種です。食事から摂取するほか、皮膚が太陽の紫外線を受けることによっても合成されます。体内に入ったビタミンDは、肝臓と腎臓で段階的に変換され、最終的に「活性型ビタミンD」という形になってはじめて機能します。
活性型ビタミンDの主な役割は、腸からカルシウムとリンを吸収しやすくすることです。骨はカルシウムを主な材料として作られるため、ビタミンDが不足するとカルシウムの吸収が低下し、骨が弱くなります。また、ビタミンDは免疫細胞に働きかけ、感染症への抵抗力を維持する役割も担っています。さらに、神経伝達やホルモン分泌にも関与しており、精神的な安定にも影響を与えると考えられています。
欠乏するとどのような症状が現れるか
ビタミンD欠乏症の症状は、初期のうちは自覚しにくいことがあります。倦怠感(けんたいかん)、筋肉のだるさ、骨や関節の痛みなどが代表的な症状です。これらの症状は他の疾患とも重なりやすいため、見過ごされることも少なくありません。
重度になると、子どもでは骨の変形をともなう「くる病(骨格の発達障害)」、成人では「骨軟化症(こつなんかしょう)」と呼ばれる骨が柔らかくなる状態が現れることがあります。また、骨密度が低下することで骨粗しょう症のリスクが高まるとされています。免疫機能の変化により、呼吸器感染症などにかかりやすくなる可能性があることも報告されています。
ビタミンD欠乏症が広がりやすい背景
現代の生活スタイルは、ビタミンD欠乏症が生じやすい環境になっています。日差しを避ける文化や屋内での長時間作業、日焼け止めの習慣的な使用などが、皮膚でのビタミンD合成を妨げる要因となっています。食事では、ビタミンDを多く含む魚類や卵などを摂る機会が減っている方も少なくありません。
高齢になると皮膚でのビタミンD合成能力が低下するため、年齢を重ねるほど欠乏リスクが高まります。また、肥満の方では脂肪組織にビタミンDが蓄積されやすく、血中濃度が上がりにくいとされています。このように、現代人を取り巻く環境は、ビタミンDが不足しやすい条件が重なっているといえます。
まとめ
ビタミンD欠乏症は、食生活や日照不足などの身近な要因から生じる栄養の問題です。骨・免疫・精神的な安定に深く関わるビタミンDを適切に取るためには、食事・日光浴・サプリメントを組み合わせることが大切です。特に女性は、妊娠・閉経などのライフステージに応じてリスクが変化するため、定期的に自身の状態を把握することが重要といえます。疲れやすさや骨の痛みが続く場合は、まず医療機関で血液検査を受けることを検討してみてください。
参考文献
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
医薬基盤・健康・栄養研究所「ビタミンD」
厚生労働省 e-ヘルスネット「ビタミン」
厚生労働省eJIM「ビタミンD」
日本骨代謝学会「ビタミンD不足・欠乏の判定指針」
