「書類の内容が頭に入らない」はサイン?大人の発達障害の特性と見落としのリスク
大人の発達障害とは、脳の発達に関連した特性によって、日常生活や社会生活にさまざまな困難が生じる状態を指します。注意欠如・多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)など、種類もさまざまです。「意志が弱いから」「怠けているから」ではなく、神経学的な特性であることを理解することが、適切なサポートへの第一歩となります。本記事では、大人の発達障害について分かりやすく解説していきます。
監修医師:
大迫 鑑顕(医師)
千葉大学医学部卒業 。千葉大学医学部附属病院精神神経科、袖ヶ浦さつき台病院心療内科・精神科、総合病院国保旭中央病院神経精神科、国際医療福祉大学医学部精神医学教室、成田病院精神科助教、千葉大学大学院医学研究院精神医学教室特任助教(兼任)、Bellvitge University Hospital(Barcelona, Spain)。主な研究領域は 精神医学(摂食障害、せん妄)。
大人の発達障害(ADHD等)とはどのような状態なのか
このセクションでは、大人の発達障害とはどのような特性を持つ状態なのか、また一般的にどのように理解されているかについて解説します。
発達障害の基本的な特性と種類
発達障害とは、脳の発達に関連した特性によって、日常生活や社会生活にさまざまな困難が生じる状態のことです。特定の機能が苦手である一方、別の分野では高い能力を発揮するという特性が見られることもあります。代表的なものとしては、注意欠如・多動症(ADHD)、自閉スペクトラム症(ASD)、学習障害(LD)などがあり、これらが重なり合うケースも珍しくありません。
ADHDは「不注意」「多動性」「衝動性」という3つの特性が中心にあり、大人の場合は多動性よりも不注意が目立つことが多いとされています。たとえば、書類を何度も読み直しても内容が頭に入らない、整理整頓が苦手で大切なものをすぐ失くす、会話中に別のことを考えてしまうなど、日常のあらゆる場面で困難さを感じることがあります。一方、ASDは対人関係のとりにくさや特定のこだわり、感覚過敏などが特徴として挙げられます。
これらの特性は、意志の弱さや怠慢によるものではなく、脳の神経学的な違いによるものです。そのため「頑張ればできるはず」という周囲の期待や、自分自身への叱咤激励では解消されないことが多く、適切な理解と支援が欠かせません。大人になっても発達障害の特性は継続するため、正確な情報を得ることが重要です。
子どもと大人の発達障害はどう違うのか
発達障害は子どもに多いというイメージを持つ方も多いかもしれませんが、大人になっても特性は続きます。子どものころは周囲のサポートや学校生活の構造によって困難さが表面化しにくかった場合でも、就職や転職、結婚、育児といったライフイベントをきっかけに特性が顕在化することがあります。
子どもの場合は「授業中に座っていられない」「忘れ物が多い」など、比較的わかりやすい行動として現れることが多いです。一方、大人の場合は「締め切りを守れない」「会議中に別のことを考えてしまう」「職場の人間関係がうまくいかない」など、社会的な文脈での困難として現れやすい傾向があります。また、長年にわたり自分なりの対処法(コーピング)を身につけてきたことで、外見上は特性がわかりにくい場合もあります。
さらに、大人の発達障害では、長年にわたる失敗体験や自己否定によって、うつ病や不安障害などの二次的な問題を抱えている方も少なくありません。「仕事がうまくいかないのは自分がだめだから」という自己批判が積み重なり、精神的な健康が損なわれるケースも見られます。発達障害そのものだけでなく、こうした二次的な問題への対応も、大人の発達障害を考えるうえで欠かせない視点です。
まとめ
大人の発達障害(ADHD等)は、適切な理解と支援があれば、日常生活をより充実させることができます。自分や家族の特性に気づいたとき、それを「性格の問題」と片付けず、専門機関への相談を検討していただくことが大切です。発達障害の特性は生涯続くものですが、工夫や支援によって生活の質を大きく改善することが可能です。一人で悩まず、医療機関や相談機関を活用しながら、自分に合った生き方を見つけるための第一歩を踏み出してください。
参考文献
厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「発達障害」 厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「No.1 職域で問題となる大人の自閉症スペクトラム障害」厚生労働省「発達障害の理解 ~ メンタルヘルスに配慮すべき人への支援 ~ 」
内閣府「令和5年版障害者白書全文(PDF版)」