「INZONE H6 Air」

ソニーのゲーミングブランド「INZONE」から4月末に登場した背面開放型ゲーミングヘッドセット「INZONE H6 Air」。シリーズ初の背面開放型で、長時間のゲームプレイにも最適だが、音楽用のモニターヘッドフォン「MDR-MV1」をベースとしていることから、音楽ファンからの注目度も高い。今回、そんなH6 Airを2週間試用。さらにMDR-MV1とも音質を比較してみた。

H6 Airは4月24日に発売されたゲーミングヘッドセットで、空間再現や音場の広がりに強い背面開放型を採用したのが特長。これによりRPGなど、“世界観に浸る”ゲームとの親和性が高いとしており、コジマプロダクションの「DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH」、カプコンの「PRAGMATA」の各サウンドチームの検証を経て、「推奨音質」を取得している。直販価格は27,500円。

右がベースとなったモニターヘッドフォン「MDR-MV1」

ドライバーは、背面開放型のモニターヘッドフォン「MDR-MV1」に採用されているものをH6 Air用に最適化して搭載している。

「グラデーショナルホールデザイン」を採用したイヤーカップ

特長である背面開放型のイヤーカップには、アルミハウジングの表面に孔を規則的に配置した「グラデーショナルホールデザイン」を採用。ハウジングの形に成型する前に孔を開け、細部の見え方が崩れやすい部分まで、成型後に綺麗な孔の形状、配置になるようにこだわったという。

付属のオーディオボックス

マイクも着脱式

マイクを装着したところ

ヘッドセットとしては3.5mmプラグの有線接続モデルで、付属のオーディオボックスを組み合わせることで、PCソフト「INZONE Hub」と連携できる。ブームマイクも着脱式で、マイク・ケーブルを除いた重さは約199gと超軽量を実現している。

なお、ソニーによれば、同社が実施したアンケートでMDR-MV1購入者のうち4人に1人がゲームで使うことを購入目的としていたとのことで、この結果からゲーム向けに最適化したH6 Airの開発がスタートしたという。

PS5でバイオ&プラグマタをプレイ

実際にH6 Airを手にしてみると、やはりその軽さに驚かされる。筆者はふだんゲーミング用ヘッドセットとしてはJBL Quantumの最上位モデル「JBL Quantum 950」を使っているが、こちらはワイヤレス対応、アクティブノイズキャンセリング(ANC)対応、バッテリー交換対応と“機能てんこ盛り”なこともあり、重さは398g。H6 Airはちょうどその半分の重さなので、より軽さに衝撃を受けた。

軽いヘッドセット/ヘッドフォンと聞くと、すぐに頭からズレてしまいそうなイメージを持つかもしれないが、H6 Airは十分な側圧があり、頭をしっかりとホールドしてくれる。2週間試用している間に、H6 Airが頭からズレてしまうといったことは一切なかった。

ただし、筆者の場合、慣れるまでの間は側圧がやや強めに感じられ、1時間程度で耳の下側の付け根部分、顎の関節あたりが痛くなってくることがあった。2~3日程度で慣れてきたが、このあたりは好みが分かれるポイントかもしれない。

ベースモデルMDR-MV1は、ケーブルを含まず重さ約223gとH6 Airと比べると重めだが、それでも十分軽量なヘッドフォンと言える。装着してみると、スエード調のイヤーパッドが耳周りを柔らかく、適度なホールド感で包み込んでくれる。側圧はH6 Airよりも弱めで、耳の付け根に痛みを感じることはまったくなかったが、H6 Airと比べると、少し頭からは動きやすい印象だった。

サウンドはPS5との組み合わせでチェック。それぞれ付属の3.5mmケーブルをPS5のコントローラー・DualSense Edgeに直接接続して、「バイオハザード レクイエム」と「PRAGMATA」をプレイしてみた。

「バイオハザード レクイエム」では、中盤の荒廃したラクーンシティを探索するエリアをプレイ。H6 Airでは、周りを徘徊するゾンビの小さな足音・うめき声などもしっかりと聴き取ることができ、「この先に敵がいるな」と音だけで判断できる。

同じ場面をMDR-MV1でプレイすると、こちらでもゾンビのうめき声などはしっかりと描かれており、緊張感のあるプレイが楽しめる。このあたりの描写力はどちらもかなり高い。

左ハウジングの背面にボリューム用ホイールを装備

上部にはマイクミュートボタン。大型で押しやすい

H6 AirとMDR-MV1で大きく違いを感じたのは銃声や主人公・レオンの足音。H6 Airの場合、室内では主人公・レオンが砂利を踏みしめる音、銃声がしっかりと周囲に反響して臨場感があるが、低音成分は少し抑えめ。足音は「トサッ、トサッ」といった印象で、銃声も「バンッ!」という重たい音ではなく「パンッ!」と乾いた音に感じられる。後述するMDR-MV1と比べると迫力はやや抑えめに感じる分、長時間でも聴き疲れせずプレイすることができた。

MDR-MV1の場合は、足音に「ドサッ!」に重みが出て、屈強な肉体のレオンの重量感が出てくる。銃声も「バンッ!」と鈍く響き、重厚な質感になるため、ゲームが持つ迫力をより引き出してくれる。

ただ、主人公の足音といった微細なものも含め、すべての音が“濃く”描かれるので、長時間プレイしていると段々と耳が疲れてくるようなイメージも。シングルプレイのゲームは気がつくと長時間プレイになっていることも多いので、そういった点では、ゲーミング用に最適化されているH6 Airのバランスの高さを感じられた。

月にある施設を舞台としたアクションゲーム「PRAGMATA」では、主人公・ヒューの足音が建物内に反響する様子がしっかりと聴き取れ、「人がいない施設をアンドロイド・ディアナとふたりで探索している」という世界観を耳からも味わえる。またヒューは宇宙服を着た状態で喋るため、セリフが少しくぐもって聞こえるのだが、H6 Airでは、話し声は明瞭に聴こえつつ、宇宙服を通して声がくぐもる様子がしっかりと描かれる。

こちらもMDR-MV1でプレイしてみると、銃撃やハッキング成功時の効果音など、全体的な迫力はMDR-MV1に軍配が上がるが、やはりすべての音がパワフルなので、長時間は少し聴き疲れるような印象。ヒューのセリフも低音の響きが少し強く、シーンによっては少し聞きづらいようなイメージもあった。

H6 Airは音楽リスニングにも使える?

先ほどから度々紹介しているように、H6 AirはモニターヘッドフォンのMDR-MV1をベースに開発されており、ドライバーユニットもゲーム向けの最適化こそ行なわれているが、基本的には同じ40mm径のものを搭載している。

そこで気になるのは、「H6 Airは音楽リスニング用途にも活用できるのか」というところ。今回はAstell&Kernの携帯音楽プレーヤー「A&ultima SP2000T」と組み合わせ、H6 AirとMDR-MV1を音楽リスニングでも比べてみた

結論から言ってしまうと、こちらもゲームの時と同じように「ややあっさりしたサウンドのH6 Air」と「十分な迫力で濃密なMDR-MV1」という構図は変わらない。ただ、聴くコンテンツがゲームから音楽に変わったことで、低域が抜けてしまうH6 Airではドラムやベースの迫力が不足気味に感じられ、物足りなさを感じるように。この点はMDR-MV1のほうが音楽の持ち味をしっかりと表現してくれる。

例えば「Mrs. GREEN APPLE/僕のこと(Orchestra ver.)」。H6 Airでは、音場がややコンパクトだが、窮屈な印象はなく、感想のギターリフやピアノ、ブラス隊の音色の違いも鮮明。大森元貴のボーカルにもしっかりとしたクリアさが感じられた。

しかしMDR-MV1に切り替えると、ボーカルのクリアさがさらに1段アップ。慌ててもう一度H6 Airで聴いてみると、クリアだと思っていたボーカルにベールが2~3枚かかっていたことに気付かされる。

音場もMDR-MV1のほうが広く感じられるため、大森の伸びやかな特徴的なボーカルがスッーと広い空間に響いていく様子がしっかりと聞き取れる。

そして明確に違いがわかるのがドラム・ベースのパワフルさ。「米津玄師/IRIS OUT」をH6 Airで聴いても、ドンッ!としっかりと芯のある音が響くが、MDR-MV1になると、さらに重みと深みが増した低音になり、一音目から楽曲の世界に引き込まれる。

ゲームプレイ時では濃厚すぎて聴き疲れしやすい印象だったMDR-MV1だが、音楽になると一転、その濃厚さ・パワフルさで音楽の魅力をしっかりと引き出してくれる。同じドライバーを使いつつ、ここまでキャラクターの違う音に仕上がるのかと、チューニングの奥深さを改めて感じさせられた。

軽い装着感と世界に入り込める音質。長時間没頭プレイに最適

ゲーミングPCと組み合わせて「エスケープ フロム ダッコフ」などもプレイしてみた

音楽モニター用のMDR-MV1をベースとしつつ、しっかりとゲームに特化したチューニングが施されたH6 Air。筆者は休日になると5~6時間はゲームに没頭することもあるのだが、約199gという軽さと、背面開放型から来る装着感の良さにより、H6 Airではそんな長時間プレイもストレスフリーで楽しむことができた。

筆者がふだん使っている「JBL Quantum 950」

ちなみに普段使っているJBL Quantum 950は、サウンドの傾向はH6 AirとMDR-MV1のちょうど中間という印象。「バイオハザード レクイエム」では銃声やレオンの足音に適度な重み・迫力がありつつ、MDR-MV1ほどの“濃さ”ではないので長時間でも聴き疲れはしにくい。

ただ、JBL Quantum 950はノイズキャンセリングやヘッドトラッキング、バッテリー内蔵など、H6 Air/MDR-MV1よりも機能が豊富な分、重量があるので長時間着けていると首や肩が凝ってくるような感覚があるが、H6 Airではそういったことも感じなかった。

H6 Airは有線接続のみに対応する点も最初は「ケーブルさばきが面倒そう」と感じたのだが、ケーブル長が約2mと十分な長さがあることもあり、2週間使ってみても特に不満を感じることはなかった。

音質面では、周囲の環境音や敵の小さな足音もしっかりと聴き取れるため、ゲームの世界に没入しながらプレイできる。筆者のようにシングルプレイゲームを黙々と遊びたい人には最適なモデルだろう。