なぜ富士山周辺は「麺」の激戦区なのか?富士宮やきそば、ほうとう…火山灰土壌がうんだソウルフードたち【眠れなくなるほど面白い 図解 富士山の話】
富士山周辺のソウルフードはなぜ麺類ばかりなのか?
米より麦の栽培が向いていた
「富士宮やきそば」「吉田のうどん」「ほうとう」など、富士山周辺のソウルフードには麺類が多く見られます。これは偶然ではなく、富士山麓の自然条件や、そこで営まれてきた暮らしと深く関係しています。
富士山麓は火山灰を多く含む土壌が広がり、水はけがよいため、水田に水をたたえておく必要がある米づくりは安定しにくい地域でした。水の確保が難しい土地では、夏は陸稲、冬は麦をつくる農業が行われており、とくに麦は乾燥に強く育てやすかったことから、食生活のなかで重要な位置を占めるようになります。
収穫された麦は粉に挽かれ、保存のきく食材として各家庭に蓄えられました。小麦粉は用途が幅広く、まんじゅうやすいとん、さらには麺へと加工されていきます。なかでも麺は形を整えやすく、切って煮るだけで調理が完結するため、忙しい農作業の合間でも手早くつくれる料理として重宝されました。
特に野菜と一緒に大鍋で煮込む麺料理は、少ない材料でも腹もちがよく、家族全員の食を支える存在になります。ほうとうに代表される平たい麺は、手打ちしやすく、煮込んでも崩れにくいという特徴も備えていました。こうした合理性が相まって、麺料理が「日常の主食」として定着していったと考えられます。
富士山麓は稲作に不向きだった
火山灰を多く含む富士山麓の土壌は、水はけがよすぎて米づくりが安定しませんでした。
麺文化が根づいたこれだけの理由
富士山麓特有の土壌が麦作を加速させ、麺文化が定着していったと考えられます。
栽培しやすい
水田に向かない乾燥した土地でも、麦はよく育った。
加工しやすい
まんじゅうや麺類など、幅広い料理を手軽に楽しめる。
養蚕の裏作として
養蚕が盛んだった富士山周辺では、蚕の飼育が終わった時期の畑を活用した裏作として、麦が栽培された。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 富士山の話』監修:富士学会
【監修者情報】
富士学会
富士山と、その関連地域を対象として、自然科学から芸術、歴史、宗教の人文科学までを広く網羅し、富士山にちなんだ教育や、噴火を想定した防災など、総合的な領域の研究を進めている。富士山の本質と全体像の探求、関連地域の環境保全、防災、活性化などを目的として、学術大会・討論会・講習会などの開催、会誌・図書などの出版、関連教育・文化活動への協力と支援などをおこなっている。事務局は東京の日本大学文理学部地理学教室に置かれている。

