意外と知らない、インフラ老朽化という大問題…自然大国ニッポンが経験してきたこと
日本はこのまま崩れ去ってしまうのか? 道路、鉄道、水道、インフラ、橋……なぜ全国各地で次々に事故が起きるのか? お金も人も足りない……打つ手はあるのか?
注目の新刊『日本のインフラ危機』では、私たちの暮らしを揺るがす「大問題の正体」を豊富なデータと事例から解き明かす。
(本記事は、岩城一郎『日本のインフラ危機』の一部を抜粋・編集しています)
インフラの保全と防災
『日本のインフラ危機』では今あるインフラを長持ちさせる方法、インフラの老朽化問題について考えてきました。つまり、インフラも人と同じように病気になり、だんだんとその性能が低下し、要求性能を下回ってしまった時点で寿命を迎えるという問題です。これは「インフラの保全」というテーマであると捉えることができます。
一方、インフラの寿命を終えるもう一つの問題として、地震や豪雨といった災害が挙げられます。これは人でいうところの自動車事故(アクシデント)のようなもので、その結果大ケガを負ったり、時に命を失ってしまうことになります。
インフラを長持ちさせる(長生きさせる)ためには単に病気を治すためにメンテナンスをおこなうだけではなく、耐震補強など、事故が起こっても壊れない身体にすることが重要なのです。
日本は世界有数の地震国で、これまでにもたびたび大きな地震に見舞われてきました。ここ30年くらいに絞ると、地震被害として、1995年の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)、2004年新潟県中越地震、2011年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)、2016年熊本地震、そして2024年1月1日に発生した能登半島地震などが挙げられます。
また、2014年の平成26年8月豪雨(広島市を中心に被害)、2018年の平成30年7月豪雨(西日本豪雨)、2019年の令和元年東日本台風、2020年の令和2年7月豪雨(熊本県を中心に被害)など、この10年で気候変動に伴う線状降水帯や大型台風による激甚災害も頻発しています。2025年も熊本県北中部を中心に豪雨災害に見舞われ大きな被害が出ました。
私はインフラの防災・減災の専門家ではありませんが、こうした大きな災害からインフラを長持ちさせるためにはどうしたら良いかを考えるため、先に記したほとんどの災害の現場に立ち会ってきました。
このうち、東日本大震災と令和元年東日本台風では自らも被災しました。ここではこれらの災害を通し、私自身が感じたことを述べていきます。
阪神・淡路大震災と中越地震
1995年の阪神・淡路大震災はこの国の地震に対する安全神話が崩壊した災害でした。それまで、日本の構造物は世界トップの耐震技術を誇っていると自負しており、実際この前年にロサンゼルス近郊で起きたノースリッジ地震により橋梁が倒壊した現場に対し、日本ではこんなことは起きないと胸を張っていたのです。
しかし、その安全神話がもろくも崩れ去ったのです。鉄筋コンクリート製の橋脚が横倒しとなった姿を当時アメリカに留学していた私はテレビの映像を通して信じられない思いで見ていました。その原因として、当時の橋脚は曲げる力(曲げモーメント)に対しては十分な鉄筋が配置されていましたが、ずらそうとする力(せん断力)に対しては圧倒的に鉄筋量が少なく抵抗できなかったためであることがわかりました。
2004年の中越地震では構造物の被害は多くなかったものの、山の斜面が崩壊し、人命が失われるとともに、道路などが寸断され、復旧・復興に時間を要しました。阪神・淡路大震災が都市型の災害だったのに対し、中越地震は山間部で被害を受けたことにより、まったく異なる被害の様相を呈したのです。
さらに、「日本はこのまま崩れ去ってしまうのか…意外と気づかない「インフラ危機」本当の実態」」では、いま大問題として迫っているインフラ老朽化問題をひきつづき見ていく。
