パチンコ店が次々と「クレーンゲーム専門店」に。元営業マンも驚く“リピート率8割”の衝撃と、Z世代・家族を狙う収益の柱
パチンコホールの店舗数が減少傾向にある一方で、アミューズメント業界ではプライズゲームが存在感を強めている。日本アミューズメント産業協会によれば、2023年度のプライズゲーム売上は3643億円で、業界売上全体の68%を占める。
業界大手のマルハン東日本カンパニーが都内で運営する、アミューズメントブランド「ME TOKYO」もその先行事例だ。マルハン東日本カンパニー営業部部長の高原安未氏は、「クレーンゲーム事業はもともとゲームセンター部門の延長にありましたが、近年は明確な経営戦略のもとで拡張が加速しています」と話す。
景品を獲得して持ち帰るというわかりやすい顧客体験が、若年層や女性客にも広がる理由のひとつになっており、なかでも「ME TOKYO」は、ターゲットを18〜24歳のZ世代女性に絞り込み、来店客の8割以上を占める。「来ること自体がイベントになる空間」を目指し、若いスタッフの感性を活かした内装設計、非常階段を鏡で加工したフォトスポットなど、SNSでの自然な拡散を誘発する仕掛けが随所に施されており、ハロウィンには開店前に200人が列をなした。
地方でも、こうした事例に触発されるように、パチンコ業界の各社もクレーンゲームへの参入を加速させている。その一つが宮城県を拠点に宿泊・飲食・不動産など多角的な事業展開を進めるアムズグループだ。2026年5月、台湾最大手クレーンゲームブランド「熊嗨星樂園(スターベアリー)」と合同で株式会社べライズを設立し、宮城県富谷市にクレーンゲーム専門店「スターベアリー富谷」を開業した。
◆台湾発ブランドが宮城に上陸
クレーンゲームへの参入を決断したのは約半年前、台湾で偶然見かけたスターベアリーとの出会いだった。同社の清水博文社長は「あまりの売上に『嘘でしょう』と思った」と振り返る。その後、複数のマーケティングデータと台湾側のデータを照合し、その信憑性を確認してから決断に踏み切った。
参入を後押しした最大の根拠は、家族向けであることと投資効率の高さだ。初期投資はパチンコ店と比べて抑えやすく、郊外型店舗としての収益性にも期待できるという。
同社のマーケティング担当の分析によれば、一般的な大手クレーンゲームチェーンの原価率は売上の35%前後、獲得率は約5%(20回に1個)程度とされる。一方、近年台頭している最新の専門店では、原価率55%、獲得率9%(11回に1個)まで引き上げることで集客を強めるモデルが主流だ。
しかし、スターベアリーは最新専門店の水準をさらに上回る、極めて高い還元率を想定しているのだという。
1店舗目の成功でビジネスモデルの検証が終われば、その後の展開は「かなりスピード感を持っていける」と見立てている。実際、プレオープン期間(5/1〜5/10)の来客数は、なんと累計約22万人に上った。その盛況ぶりは「景品の補充が追いつかないほどだった」(担当者)といい、すでに2店舗目・3店舗目の物件探しも始まっているとか。
◆ファミリー層を呼ぶ高還元戦略
景品も5割が食品で、残りの2.5割が洗剤、トイレットペーパーいった生活必需品でファミリー層に特化している。年齢制限も緩やかなためファミリー層を丸ごと取り込め、リピート率もパチンコの5〜6割に対して7〜8割が期待できる。郊外の立地にある富谷店はフロア700坪を活用し、来客の6〜7割をファミリー層として想定して展開する。
