強盗殺人で16歳逮捕、 SNSでは厳罰求める声…少年でも「無期刑」の可能性は? 弁護士が解説
栃木県上三川町の住宅に複数の人物が押し入り、住民の女性が殺害されるなどした事件で、警察が16歳の少年を強盗殺人の容疑で逮捕したことが報じられました。
報道によると、少年は5月14日の午前中に、複数人で住宅に侵入し、住人の69歳女性を何らかの凶器で殺害した疑いがもたれています。少年は被害者と面識がなかったということで、闇バイトの可能性も指摘されています。
ネット上では「16歳であろうが許されない犯罪」といった厳しい声も上がっています。この少年が有罪とされる場合にどうなるのかについて解説します。
●少年法が適用される
逮捕されたのは16歳の少年なので、通常の刑事手続きとは異なる点があります。
具体的には少年法が適用され、成人の刑事手続きとは異なり、少年の保護や更生を重視したルールが設けられています。
今回の少年は16歳なので、「特定少年」にもあたらず、少年法本来の保護的なルールがそのまま適用されます。
●死刑にはできない
少年法51条1項は「罪を犯すとき18歳に満たない者に対しては、死刑をもって処断すべきときは、無期拘禁刑を科する」と定めています。
犯行時18歳未満であれば、どれほど重大な事件でも死刑を科すことはできません。
●無期はありうる
今回のケースでは、少年法の適用がありますが、通常の刑事裁判の手続きにより処罰される可能性はあります。
「少年」が刑事裁判にかけられるには、まず家庭裁判所から検察官への「逆送」という手続きが必要です。
そして、少年法20条2項は、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪で、犯行時16歳以上の少年については、原則として逆送しなければならないと定めています。
強盗殺人罪(刑法240条後段)の法定刑は「死刑または無期拘禁刑」であり、本件はこれに該当するため、家庭裁判所から逆送され、通常の刑事裁判の手続きによることになるでしょう。
逆送されれば、成人と同様に刑事裁判(裁判員裁判)を受けることになります。
なお、先に書いたとおり、16歳の少年には死刑を科すことはできませんから、法定刑の上限は無期拘禁刑となります。
●実際はどうなる?有期拘禁刑や不定期刑の可能性も
ただし、無期拘禁刑になるとは限りません。少年法51条2項は、無期拘禁刑が相当の場合でも、10年以上20年以下の有期拘禁刑を科すことができると定めています。
この規定は「できる」となっているため、無期拘禁刑とすることもできます。
また少年法52条により、「拘禁刑○年以上○年以下」という形の不定期刑を言い渡すこともできます(長期は15年、短期は10年が上限)。
過去の裁判例を見ると、以下のようなものがあります。
1)16歳で無期相当だが51条2項を適用して懲役(現在の拘禁刑)10年とした例(高松高判平成16年(2004年)6月17日)
犯行時16歳の被告人が、共犯の中学生2名と万引きの発覚後の逮捕を免れるため軽四を加速させ、車にしがみついた被害者の頭部を電柱との間に挟んで即死させた事案です。
2)少年による住居侵入・強盗殺人で無期懲役(現在の無期拘禁刑)となった例(那覇地裁平成28年(2016年)1月22日)
犯行時18歳だった少年が、金品強奪目的で住居侵入、家人に発見されるや殺意をもって包丁で背部を突き刺すなどして殺害し、現金等を強奪した事案です。
3)少年で不定期刑とした例(横浜地判平成16年(2004年)1月22日)
犯行時17歳の少年A・Bによる金属バットでの強盗殺人未遂・強盗傷人について、主犯格のAには定期刑(懲役11年)、Bに対しては不定期刑(懲役5年以上10年以下)の判決が下されました。
量刑は、共犯の中での役割の重要性や、計画性、殺害行為の態様・悪質性、年齢、反省・更生の可能性など、さまざまな事情を総合して判断されます。
●「闇バイト」には絶対に関わらないこと
現時点では、少年の具体的な役割や計画性など、量刑上重要な事実はまだはっきりしません。実際にどのような刑が科されるかは、今後の捜査・公判の経緯によって大きく変わります。今後の事実解明が待たれます。
今回の事件は、闇バイトやトクリュウといった犯罪組織が関係している可能性も指摘されているようです。
軽い気持ちで犯罪に巻き込まれてしまったことも考えられますが、人の命を奪うという重大犯罪であり、法的にもこれまで説明してきたとおり、無期拘禁刑(例外的な場合をのぞいて一生刑務所から出られない)の可能性もある非常に重い罪です。
少年院に入所している少年を対象に法務省が実施した調査によると、闇バイトに関わったきっかけは先輩・友人の紹介が80%以上を占めるそうです。
しかし、強盗殺人は刑法犯の中でも最も罪が重い部類であり、「バイト」などという軽い言葉では片付けられない重大犯罪です。
少年だから軽くなる、などと安易に考えず、絶対に関わらないようにしてください。
監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)
