「ハッキリ言います。私は無罪です」…Netflix『地面師たち』綾野剛のモデルが獄中から送ってきた“衝撃の手紙”
2024年4月、ノンフィクション作家・森功のもとに一通の手紙が届いた。差出人は、積水ハウス55億円詐欺事件の主犯格として逮捕され、Netflixドラマ『地面師たち』で綾野剛が演じた辻本拓海のモデルとなった人物だ。
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「ハッキリ言います。私は無罪です」--獄中からの告白で明かされた、事件の知られざる真相とは。『地面師vs.地面師 詐欺師たちの騙し合い』(講談社)より抜粋して紹介する。(全4回の1回目)

写真はイメージ ©asu0703/イメージマート
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被害額55億5000万円…史上最大の地面師詐欺事件
〈前略 森功殿
私はセキスイ地面師事件で主犯格にされたカミンスカスです〉
2024年4月25日消印の手紙は、そう始まっていた。信州の長野刑務所から講談社に届き、私のもとへ転送されたものだ。改めて念を押すまでもない。差出人のカミンスカスは旧姓を小山という。カミンスカス操である。
日本屈指の不動産デベロッパー「積水ハウス」が騙されたあの地面師詐欺事件で逮捕された。2017年6月、東京・五反田にあった老舗旅館「海喜館」を舞台に、詐欺を引き起こした人物である。それまで小山操と名乗っていたが、事件当時はカミンスカス操に変わっており、その外国人姓も話題を呼んだ。
捜査した警視庁捜査二課や東京地検は事件から1年半を経た2019年1月、フィリピンに逃亡していたカミンスカスを地面師グループの親玉と踏んで逮捕、その後起訴した。
被害額は実に55億5000万円に上る。史上空前の地面師詐欺として人口に膾炙した。
当人は東京地裁、東京高裁、最高裁と検察と争った末に懲役11年という刑期が確定し、目下、長い刑務所暮らしを送っている。
〈ハッキリ言います。私は無罪です〉
地面師といえば、奇しくも手紙が届いたこの年の7月、ネットフリックスのドラマが一味の犯行を描いて大ヒットした。ドラマのタイトルは『地面師たち』だ。犯行グループを率いたハリソン山中役の豊川悦司をはじめ、ハリソンの右腕として登場する辻本拓海役の綾野剛ら、真に迫る俳優陣の演技が評判を呼んだ。わけても元司法書士の後藤義雄を演じたピエール瀧が相手の不動産デベロッパーを騙す場面で何度も言ったセリフ「もうええでしょう」は、この年の流行語にもなった。以来、地面師という名称が広く世間に知られている。
積水ハウス事件は、このネットフリックスドラマの下敷きになっている。ハリソン山中のモデルが、主犯格として逮捕、起訴された内田マイク、そして辻本拓海のモデルがカミンスカス操だろう。ドラマでは詐欺の舞台が都心の古い寺院に変わっているが、現実の事件は五反田に存在した老舗旅館の海喜館である。
そんな本物の地面師詐欺グループの“頭目”が、なぜ今頃になって私に手紙を寄こしたのか。理由は、私自身が事件摘発直後に『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』(講談社)を出版したからだろうか、とも小考した。手紙は次のように書いている。
〈森さんはこの事件に関してかなり詳しい人だと思います。事件になって直に“地面師”を出版されました。全て実名でノンフィクションだと聞いています〉
ご丁寧に〈聞いています〉という理由についても説明付きだった。
〈実は私も購入したのですが、(刑務所に)領置されてしまって読んでいません。森さんは私をどう思っていますか? 何故私にインタビューに来なかったのですか?〉
もとより本を書くにあたり、カミンスカスへの取材は何度も試みてきたが、実現しなかった。単なる恨み節だろうか、とも感じたが、読み進めると、どうやらそうではない。
真っ先に次の言葉が目に留まった。
〈ハッキリ言います。私は無罪です〉
そこから地面師の“頭目”との長い文通が始まった。
〈警察も検察も解明できなかった「55億5000万円の行方」…Netflix『地面師たち』のモデルが獄中から明かした“カネの真相”〉へ続く
(森 功)
