デジタル遺言 簡便で安全性の高い仕組みに
自分の死後に財産を誰にどう残すか。
遺産相続は多くの人が直面する問題だろう。遺言のデジタル化にあたっては万全の安全策を講じ、円滑な相続につなげてほしい。
パソコンやスマートフォンで作成する「デジタル遺言」を認める民法改正案が閣議決定された。今後、国会で審議される。
現在、遺言には主に、自分で書く「自筆証書遺言」と公証人が作る「公正証書遺言」がある。
自筆証書遺言は民法の規定で、本人が全文と日付、名前を手書きし、押印しなければならない。高齢者を含めてデジタル機器を使いこなす人が増え、「時代に合わない」との声が出ていた。
改正案では、パソコンなどで作ったデジタル遺言の書面やデータを法務局で保管する「保管証書遺言」を新設する。偽造を防ぐため、保管申請の際、本人が法務局の職員に対面かウェブ上で全文を読み上げる方式をとるという。
社会の高齢化を背景に、相続を巡る争いも年々増えている。2024年に全国の家庭裁判所が受け付けた遺産分割に関する審判・調停は計約1万9500件と、約20年前の1・6倍だった。
デジタル化で遺言の利便性が高まり、自らの意思を伝える選択肢が増えれば、遺言を作成しようと思う人も増えるのではないか。
大切なのは安全性だ。改正案では、自筆証書遺言も見直し、押印を不要にする。ただし、簡便になることで、偽造や改ざん、作成の強要が続くようになったら、遺言全体の信用が失われてしまう。
デジタル遺言の運用にあたっては、なりすましを防ぐため、法務局で本人確認を徹底してほしい。本人も複数ある遺言の方式の長所や短所をよく確認し、自分や家族に合った方式を選びたい。
法改正に向けた議論では、本人が遺言を読む様子を録音・録画する方法も検討された。だが、生成AI(人工知能)を使えば偽音声や偽動画も簡単に作れるとの意見が相次ぎ、見送られた。
今後、デジタル技術はますます進化するだろう。不正の方法も高度化するに違いない。安全対策が十分に機能しているか、常にチェックする必要がある。
身寄りがない単身高齢者が増えている。死後に財産を大学や自治体などの公的な団体に寄付する「遺贈寄付」も広がり、遺言の重要性は高まっている。
財産のある人は、元気なうちに家族とよく話し合い、相続の方法を考えておいてもらいたい。
