岩手・大槌の刺し子、40〜80代「ギャルズ」が世界へ発信…有名ブランドのスニーカーやバッグに採用
[再生の歩み 東日本大震災]
東日本大震災で被災した岩手県大槌町の伝統手芸を地域振興につなげる女性グループ「SASHIKO GALS」(サシコギャルズ)が、国内外で注目されている。
被災者ら40〜80歳代の30人ほどが職人として刺しゅうを駆使したデザインは有名ブランド品にも採用され、メンバーは「産業として根付かせたい」と張り切っている。(釜石支局 山森慶太)
「帽子の仕上がりもいい感じ」。4月中旬、アパート内に設けた作業場に、活気あふれる声が響いた。メンバーが帽子、靴にカラフルな布や糸を縫い付けて斬新な模様をつけていた。
サシコギャルズの前身となる女性グループ「大槌刺し子」が誕生したのは2011年5月。被災した女性たちの生きがい作りや生活再建に向けて、ボランティアらの音頭で避難所を拠点に活動が始まった。刺し子は、重ねた布を日用品に糸で縫い付ける東北地方の伝統技法。復興への支援や善意も重なり、ピーク時は手作りのポーチや布巾などが全国の180社近くと取引された。
震災から半年ほど後にメンバーとなった大沢美恵子さん(75)は、津波で職場の生花店が流され、自宅も全壊する絶望のなか、家族を失った女性が作業に没頭する姿に心奪われて参加を決めた。「一針ずつ縫い、点が線となっていく魅力を伝えたい」と力を込める。
活動は15年たつが、一時は継続も危ぶまれた。150人以上いたメンバーは復興に伴い、別の仕事に就くなど23年に15人ほどまで減少。コロナ禍では対面販売ができなくなった。
転機となったのは、東京のアパレル関連会社「MOONSHOT」と連携、24年にサシコギャルズとして積極的な商品展開を始めたことだ。同社代表取締役の藤原新さん(47)は「刺し子の技術は国内トップクラス。販売方法の工夫次第で可能性が広がる」と期待する。
今は多くの企業とタッグを組み、スポーツブランドの「ニューバランス」や米国のブランド「ラルフ・ローレン」のスニーカー、シャツ、バッグなども手がける。受注生産で国内外に発信し、藤原さんは「世界にない独創性が高く評価されている」と語る。
サシコギャルズの一人、佐々木加奈子さん(49)は、地元の高校生らを対象とした出前授業で刺し子の技術を指導し、後進の育成で裾野を広げる。今後、町内に常設の工房を構えて、産業として地域に根付かせることが目標だ。
震災で町内の死者・行方不明者は1286人に上った。人口は7割程度に減少し、この先も地域の活性化策が求められている。佐々木さんは「若者が働ける環境の確保と文化の担い手を育てるために刺し子を残したい」と意欲を見せる。
