妊婦死亡事故 重い障害を負った娘も“被害者”では?父の訴え「遺族の思いとしては甘すぎる」「加害者はしっかり罪に向き合ってほしい」

昨年5月21日、愛知県一宮市で妊娠9カ月の沙也香さんが、背後から車にはねられた。病院に搬送され、娘の日七未ちゃんは帝王切開で生まれたが、沙也香さんはその2日後、亡くなった。
沙也香さんをはねた被告は過失運転致死の罪で逮捕・起訴され、去年9月の初公判で、起訴事実を認めたが、被害者として起訴状に記されていたのは沙也香さんのみ。日七未ちゃんの名前はなかった。刑法上、胎児は人ではなく、母体の一部とみなされているためだ。
遺族は日七未ちゃんに対する過失運転致傷罪を問うよう検察に求め、署名活動を行い、およそ14万筆を名古屋地検に提出。これを受け、検察側も補充捜査を行ったが、「胎児は人ではない」とする刑法上の解釈から過失運転致傷の罪に問えないと判断、適用は見送ることに。一方、起訴状については、訴因を変更し記載されていなかった「日七未ちゃんの名前・母胎内で受けた影響」を盛り込んだ。先月22日の公判で、検察側は「被告の一方的な過失で結果は重大」などとして禁錮3年を求刑した。
胎児を人として認めることはできないのか。亡くなった沙也香さんの夫、研谷友太さんとともに『ABEMA Prime』で考えた。
■育児休暇中に付きっきりの看護、過酷な日常
妻を亡くし、娘の日七未ちゃんが重度の障害を負った研谷友太さんは、「今、育児休暇を取得しているので、基本的には娘にずっと付きっきりで育児・看護をしている」と語る。
現在の娘の状態について、「呼吸器をずっとついている状態で、常に見ていてあげないと、どこでどうなるかわからない」と語る。
加害者に対し、検察は禁錮3年を求刑したが、「被害者遺族の思いとしては、やはり甘すぎるのではないかと思っている。もっと重い求刑ができたのではないか」と訴える。
■刑法と民法の間に横たわる「命の定義」の差
なぜ、胎児が事故の直接的な被害者として認められないのか。被害者側の代理人弁護士・森亮爾氏は「刑法には胎児に対する罪として堕胎罪がある。堕胎というのは、まず母体内での胎児の殺害を含む。それから、胎児を自然の分娩時期よりも早く娩出させることを言う。これは故意犯だ。過失による堕胎というものは刑法が定めていない。過失による堕胎は処罰されない」と解説。
また、日本の刑法が採用する「一部露出説」についても、「胎児が母体から一部露出した時に直接攻撃の対象になるから、その時点から人として保護していこうというのが一部露出説だ」と説明した。
一方で、民法においては「損害賠償請求権などは、胎児の時点でも生まれた場合には、権利を取得しましょうという例外規定が設けられている」と、法律間での扱いの違いを指摘した。
■制度の「空白」に落ちた娘、父が求める法改正
研谷氏は「現状、22週以降であれば中絶は認められていない。胎児は生きることができる可能性が高い。つまり、もう人として生まれてくる前提の話で保護されている。それにも関わらず、私の妻は妊娠32週で事故に遭ったが、娘は被害者として認められない。ある意味法の欠陥、空白の部分になくなってしまうべきなんじゃないかなと思っている」。
今後の支援体制については、「誰かしらがずっと付きっきりで見ていないといけない状態。入所施設が圧倒的に少ないし、対応できる職員の方も増やしていかないとなかなか難しい。医療が進んでいる以上、救われる命がどんどん今後増えていくと思うので、医療的ケア児に対する理解やサポート体制は自治体、国すべてで考えていかないといけない」と強調した。
加害者のドライバーに対しては「しっかり罪に向き合ってほしい。今までの状況を見ると、そういう姿勢は一切見られていないので、そうなってほしい」と述べた。
(『ABEMA Prime』より)
